blank page   作:瀧音静

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出会い方(かなえかた)

 すでに陽も落ち、窓の外から入ってくるのは淡い星明り。

勉強中のこの部屋こそジブリールの魔法で明るくして貰ってはいるが部屋の外は既に夜が広がりつつある。

 

 質問をぶつけられたカイは体ごとステフに向き直り、じっと目を見つめて真剣な眼差しで語る。

 

「私ね、好きな子が居るの」

「は、はい?」

 

 突然の告白。いきなり目を見つめられ言われたステフは自分の顔の体温が急上昇するのを感じ、急いで目を逸らす。

 

「その子に会いたい一心でゲームを極めて、テトちゃんに見つけて貰って、この世界に来たの」

「え、えぇ」

 

 目を逸らされても構わずステフを見つめ続けるカイに、ステフはどう反応すればいいか分からずただただ戸惑っており、返事が雑になってくるのだが、カイはそれを気にもしない。

 

「私が何しに来たか。という質問にはこう答えるわ。その子とイチャイチャしに来たの!」

 

 ガッツポーズをかまし、これが全て! とばかりに主張するカイに困惑するステフであったが、

 

「それで!? そのあなたの想い人は一体誰なんですの!?」

 

 未だにはっきりと明言されないその存在は誰か。と尋ねれば。

 

「名前言っちゃうと逃げられるかも? とか思っちゃって口に出さないようにしてたんだよねー」

 

 と言いながらジリジリとステフににじり寄るカイ。

生唾を飲み下し、瞼を閉じて若干震えながらも覚悟を決めたステフの耳に――、

 

「みぎゃぁぁっ!? ぼ、僕ですぅ!?」

 

 少年の悲鳴と焦った声が届いて。

目を開けてみれば何やら虚空に抱きついているカイが視界に飛び込んできた。

 

「ちょ!? プラムさん? いつからそこに居ましたの!?」

「何事だ!? ステフ!?」

「女性の居る部屋からの悲鳴とあらば助けに行かぬわけには参りませんなぁ!!」

 

 ステフが驚きの声をあげたタイミングで、どう考えても扉のすぐ近くに居たとしか思えない速度で突入してくる『  (くうはく)』といの。

 

「えぇと、……見つかっちゃいましたぁ」

 

 遅れて部屋に入って来たジブリールの姿を見て観念したのか、カイに抱きつかれたままの吸血種(ダンピール)の王子様は、困り顔で頬を掻きながら。「どうすればいいですぅ?」と空へ目線だけで助けを求めた。

 

 

 流石にいかにステフと言えど、女の子の部屋にいる居心地の悪さに耐えかねた空の提案で、一度王の寝室へと舞台を移したそれぞれ各々は、思い思いの場所に腰を下ろす。

 

「どうしたステフ? 立ちっぱじゃ辛くなる程長話になるかもしれんぞ?」

「いえ、どうせお茶の用意だったりもありますし、わたくしの事は気になされなくて結構ですわ」

「皆さんが当たり前のようにツッコんでくれなくて僕は優しさに涙が流れそうなのですがぁ、僕、どうして膝に抱かれているんですぅ?」

「絶対に、離さないから」

 

 たった1つの存在だけは自分の思いを無視された箇所に座らされていた。

プラムだけは、カイの膝の上に抱きしめられ、逃げられない様に。

 

「それがカイがこの世界に来た望みだ。男なら黙って女性の夢叶えてやれよ」

「空様がそれ言いますぅ? 女性経験皆無のはずですのにぃ」

「先日……どこかの……頭悪い人魚……堕とした。にぃは……皆無じゃ……無い」

「そもそもどうしてカイ殿はプラム殿の居場所が分かったのですかな? およそ人類種(イマニティ)に感知出来たとは思えませぬが」

「? そんなに不思議? 情報知ってれば簡単だったよ?」

「割とショックなんですけどねぇ。僕、人類種(イマニティ)に見つけられたのなんて初体験ですぅ」

 

 頭を撫でられ、うなじの匂いを嗅がれながら、げんなりした顔でふてくされたプラムは、今の所カイにやられたい放題であった。

 

「情報、ですか」

「そ。古今東西最強で、最も優れた武器。それが情報。だからプラムきゅんは、私に張り付いて『  (くうはく)』の情報を探ろうとしてたんだよね?」

「き、気付いてたんですぅ?」

「まさかー。気付けるわけないじゃない。魔法も感知できない人類種(イマニティ)だよ? けど、そう動いてるんだろうなーとは予想してた」

「だからステフと二人きりで勉強なんて言い出したんだろ? こんな広い空間じゃなく、ステフの部屋っつー限られた空間。しかも勉強するのに大きな声は出さないだろうから声を聞くためには近づく必要がある」

「条件を……限定していって……最後は、盟約を利用……居場所を……特定」

「あらゆる殺傷行為の禁止、でございますね。何もない空間に攻撃を行おうとして、行動がキャンセルされればそこに”何かいる”という事でしょうか」

 

 好きだからこそ、どこまでも妄想した。好きだからこそ、いかなる状況でも居場所を探れるように考えた。

カイがこの世界に来て、いつも考えていた愛しの子(プラム・ストーカー)を抱きしめるまでの過程。

その全てがうまくいったからこその今の状況。

 

「どうやって僕の事をそんなに知り得たんですぅ? この世界に来て一日すら経っていない筈ですのにぃ」

「プラム、残念だがカイは」

「私達の事……上の次元から読んでる。……この先のストーリー……も」

「はい?」

「どういう事ですかな?」

「メンドクサイから大雑把に説明すっぞ? カイと俺等は居た世界ってのは同じだ。だが俺らは2次元でカイは3次元から来た。カイの世界だと俺らは本の中。……これで理解できるか?」

「つまりこの世界で表すなら干渉が出来ず、傍観に努めているテト殿。それがカイ殿と言う解釈でよろしいですかな?」

「俺等の心理描写すら本には書いてあるから、何を、どんな時、どんな風に思ったか。すらカイには筒抜け」

「それでどうして僕の情報が知られてるんですぅ?」

「だから俺らの物語が本なの。俺らがこの世界に来る物語」

「あー、理解しましたぁ。――カイ様ぁ♪ 僕、個人的に聞きたい事があるので二人っきりでお話しませんかぁ?」

「いいよー。行こ行こー」

 

 理解した途端に自らの立場を利用し、カイを(たぶらか)かして情報を引き出そうと企てたプラムと。

あっさりその誘惑に乗るカイを説得し思いとどまらせるまでに、ステフとジブリール、いのが疲れ切るのを尻目に、空と白は爆笑しているのであった。

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