blank page   作:瀧音静

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正攻法(じゃどう)

「あ~、笑ったわ。ほんと、カイ最高だわ」

「愉悦……だった」

「少し待て妹よ。悪趣味だからな? それ」

 

 目尻の涙を指で拭ってようやく笑う事を止めた空と。

同じく指で涙を拭って親指を立て、右手を突き出す白。

 

「はぁ……はぁ……。空は何で……そんなに余裕……ですの?」

「? 何か問題なのか?」

「だって! 空達の弱みや弱点が知られたら……」

「何を話すんだ? 俺は知っての通りただの一般人だぞ? それに弱点? んなもん()()()()()()だろ?」

「白達より……弱いの……居ない」

 

 何を当たり前のことを、ときょとんとした顔で不思議そうにステフを見る空と白。

それはそうか。と納得するステフの代わりに、今度はジブリールが言葉を発する。

 

「しかしマスター。この方がどこまで先の展開を知っているのか分からない以上、口封じは必要なのでは?」

 

 いかに『  (くうはく)』と言えど撃つ手を事前に知られ、対策を施されていればどうしようもない。

白に囁いた、既成事実を作るチャンス。

近い将来とは言ったがどこまで先の話かを明言しなかったカイに対して白の考えはこうだ。

 

「ネタバレ……は許されない。……ヒントや曖昧な……助言なら……許す」

「これもゲーマーの(さが)だよな~。つか異世界人(おれら)の事を分かって無さ過ぎ。こんな時は必ず史実っつーの? 元ある物語の通りに進めるために余計な事はしないのが当たり前なのよ」

「でも助言やヒントはいただけるんですよねぇ? それだけでも十分価値がありますぅ」

「もちろん、タダではあげないけどね♪」

 

 ゲーマー同士通じる考えを確認し、それでも些細な情報から少しでも周りを出し抜こうとプラムが考えるのは必然で。

情報の価値など、使い方で決まる。それを当然重々承知している若き吸血種(ダンピール)の王子様は、悪用可能な情報を求めてカイに勝負を挑むのも当然。

 

「カイ様ぁ♪ 僕と勝負してくれませんかぁ? 僕が勝ったらぁ、この先の僕に対するカイ様の助言を前借させていただきますぅ」

 

 どんな場面を想定しての助言なのか。その助言を行う事でカイは、自分をどう動かそうとするのか。

それらを予めイメージし、前もって対策を立てる事がどれほど旨味の有る事か。

 

 その場にいるカイを除いた全員が思わず顔を引きつらせる要求に、しかし、カイは。

 

「オッケー♪ んじゃあ私が勝ったら、私が満足するまで私の抱き枕として一緒に寝てね♪」

 

 満面の笑みで快く受け入れて。

そして欲望全開の要求をプラムへとした。

 

「わっかりましたぁ。ではでは~、ルールとしてぇ僕らの1対1である事を提案させていただきますぅ」

「そのつもりー。何?私が空や白ちゃんから手を貸して貰うとでも思っちゃった?」

「もーしわけないですぅ。すこーしだけ思っちゃいましたぁ」

「素直でかわいいから許す。んじゃ私からは『勝負中のプラムきゅんの発言禁止』を提案したいな~」

「僕の……ですかぁ?」

「元々魔法の使えない人類種(イマニティ)吸血種(ダンピール)と戦うならせめてこれくらいのハンデは欲しいかな」

「ふむぅ」

 

 別に発言しなくても魔法は使える。勝負の際にブラフや誘導として発言出来ないのは痛いが、それも魔法さえ使えれば問題ない。

そこまで考えたプラムは肝心の事に気が付く。

(どうして魔法を禁止しないんですかねぇ。……ひょっとして僕の魔法を悪用しようとしていますぅ? 情報を持っているからと、流石に舐め過ぎですぅ。いつまでも人類種(イマニティ)()()にいい様にされる僕ではないと思い知らせてあげますぅ)

 

「分かりましたぁ。その条件で構いません。あ、でもでもぉ、すこーしだけ待って貰っていいですぅ?」

 

 と告げてあっさりカイの手から逃れたプラムは一旦姿を霧散させて。

直ぐに大きな水瓶を抱えて戻ってくる。

その水瓶の中には当然

 

「は~あ~い! プラムちゃんからダーリンが呼んでるって聞いて~、文字通り()()()()来たの~☆」

()()()()()()()()()よぅ……」

 

 底抜けに元気で馬鹿みたいに明るい実際脳みそ海綿体(スポンジ)と空に言われた海棲種(セーレーン)の女王様。ステフをも凌ぐ残念筆頭のライラ・ローレライが入っていて。

何故今連れて来たのか、など明白も明白。

 

「ちょ、空!? いかにカイが情報を知っていようと、魔法が使える吸血種(ダンピール)相手に勝てると思えませんわよ!?」

 

 ステフが慌てて空に詰め寄る通り、存分にプラムが魔法を発するために呼ばれたライラは、

 

「ちょっと~、私のダーリンに近寄らないでよ~! あ、でもこれって放置プレイって事? つまりダーリンの愛情の裏返し!? あ~ん☆ダーリンのいけずぅ~!」

 

 手首をプラムに差し出しながら、妄想を爆発させ身をくねらせていた。

 

 *

 

「勝負の内容は手札交換無しのポーカー一回勝負ね。ディーラーはいのさんにお願いしようかな」

「私ですかな。……ふむ、あまり細かい動きは得意ではありませんが」

「普通にシャッフルして普通に配って大丈夫ですよー」

「では、ディーラーの件承りましたぞ。いやはや、思えばディーラーとはあまり経験がありませぬゆえ、何とも新鮮な気持ちですなぁ」

 

 勝負の内容は決まり、賭ける内容も決めてある。お互いに課したルールもあって、残すは宣言のみ。

 

 たっぷり血を吸って。

魂の減退を、少なくとも人類種(イマニティ)如きには魔法を使っても問題ない所まで回復させて。

プラムはその宣言を

 

「ではカイ様ぁ、ご唱和くださいぃ」

 

カイも合わせてしっかりハモって、

 

「「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」」

 

 ご機嫌に言い放ち、盟約に誓った勝負が始まった。

 

「カイ、……一つ()()

 

 勝負が始まり、プラムが発言出来ない状況になった事を確認し、白がカイへと言う。

 

「な~に? 白ちゃん♪」

()()()……()?」

 

 特に今の状況でカイが必勝と思えない故の正直な質問を。

 

()()()()()()()()()()()。何? 白ちゃん私の事過大評価しちゃってる系?」

 

 それに対するカイの返答は、白の考えが間違いである事を否定した。

が、しかし、

 

「妹よ、質問の内容がちーっと違う」

 

と空は何かに辿り着いているようで

 

「じゃあ……正解を……どうぞ」

「正解は、このままでちゃんと相手に負けてもらえるのか? だ」

「このままじゃ無理☆ だからねー、これから小細工するの♪」

 

 と、怪訝な顔でカイを見るプラムといのに背を向けたカイは。

ま、だろうな。とこれでもかとニヤつく空と、意味が分からず首を捻るステフに向けて一瞬笑顔を向けて。

 相も変わらずいつもの彼女独特の空気の中で、

 

「――私と勝負しない?」

 

 唐突にとある人物へ勝負を挑むのだった。

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