blank page   作:瀧音静

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模倣(リスペクト)

「えー、ライラちゃんと勝負? 別にいいけどどんな勝負する気~?」

「簡単簡単、私とプラムきゅんの勝負、どちらが勝つかに賭けるの」

 

 カイが勝負を挑んだのはプラムが補給用に連れてきた海棲種(セーレーン)の全権代理者で。

勝負の内容は今から始まる勝敗の予想を提案したカイに対するライラの反応は、

 

「そんなの吸血種(ダンピール)人類種(イマニティ)が勝てるわけないじゃん☆」

「じゃあライラ様はプラムきゅんの勝ちに賭けたって事で。勝った時の要求は何か希望あります?」

「ダーリン♡からもっと踏んで欲しーの」

「そ、それは私じゃどうしようもないかなー。……今義務化してるプラムきゅんへの血の提供を私に移すっていうのは?」

 

 周りが息をのむ提案をする中、提案されたライラと、自分の勝負そっちのけでそんな勝負を始めようとされているプラムは飛び上がる。

ライラは予想外の提案で、プラムはその要求を飲まれると負けが確定される事に気が付いて。

 

()()()()でいいの~? 正直いちいち血を飲ませるの面倒だし、ライラちゃんはそれでいいけどー、あなたは何を要求するの~?」

「私からの要求はそうだなー。……私が誰かと勝負するときに一緒に戦ってくれな……ません?」

「それもそんなのでいいの~? おやすい御用なの~☆」

 

 別に疑うでもなく、特に意見をするわけでもなく、当然のように挑まれた側なのに提案されたゲームを受け入れて。

あまつさえ自分の勝った場合の報酬を相手に決めさせるという先ほどのステフのミスのさらに何歩も先に行ってしまった海綿体(スポンジ)脳の残念女王は――。

盟約によって発声を禁じられ、ライラの周りを飛び跳ねる事でしか感情を表現できないプラムに、

 

「も~、邪魔なの~」

 

 と言い放ってトドメを刺す。

 

「「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」」

 

 カイと仲良く手を挙げて、盟約に誓ったライラの残念な頭と、その残念な頭に振り回され続けるプラムに対し、その場に居た当事者以外は揃ってため息をついた。

 

 無論、空と白はプラムを指差して爆笑していたわけであるが。

 

「プラムww憐れ過ぎるww戦う事無く敗北決定とかwww」

「カイ……本当に……みんなの……事、知り過ぎ。あと、にぃは……人の不幸……笑いすぎ。ぶふぉww」

「堪えきれてねぇじゃないかマイシスター。他人の不幸は蜜の味。そんなもん味わったら笑うっきゃねーだろ?ww」

 

 腹いてぇwと笑い転げる空に対し、今一つピンとこないステフが疑問を口にする。

 

「これでプラムさんが必敗ですの? ライラさんから血が飲めなくてもカイが受け継ぐのなら問題ないじゃありませんの?」

「ドラちゃんは本当にお疲れのようにございますね。本日はお休みになる事をオススメしますが?」

「人間が海棲種(セーレーン)より長生きな訳ないだろ、です。じゃあカイが死んだら誰から血を吸うんだ、です」

「ステファニー殿、いづなですら分かる事ですぞ? 最近は忙しかった故致し方ない事とは思いますが、本当にお休みになられた方がいいと思いますぞ」

 

 口にした途端皆から本当に心配され、いづなの口にした当たり前の事実を思い出して戦慄する。

もし勝ってしまったら、盟約によって守られているライラの義務はカイに移動し、カイが血を与える事となる。

では、もしカイが死んでしまったら? そもそも吸血行為自体が殺傷に当たってしまう悲しい種族の吸血種(ダンピール)は当然血を飲めなくなり、先に待つのは滅びである。

故に、カイに血を吸わせる義務が移る事はプラムは避けなければならない。

ならないのだが、思い当たる一つの疑問。

 

「一種族でも滅んだら空のいう攻略法が実行できないのではありませんの!?」

「んだよ、俺ってそんなに信用されてねーの?」

「白以外に……信用される……要素……皆無」

「マスター、私も信用しております」

「いづなは空と白の事、信用してるぞ、です。二人からは嫌な匂いしねー、です」

「空殿の悪知恵を持ってすれば可能でしょうな。一筋縄ではいかぬと思いますが」

「爺さんが俺褒めるとかキメェ。明日は槍でも降るのか?」

「皆さん何を信じてるというのですの!?」

 

 口に出した途端、今度は「お前は違うのか?」というニュアンスの言葉をぶつけられ続けるステフに説明するのは一番新しいこのお城への入場者で。

 

「私が死ぬ前に空と白が唯一神(テト)君を破るって事だけど? ステフちゃんは信じて無いのかなー?」

 

 いたずらっぽく笑いながらステフにそう言ったカイは、満面の笑みでいのの方を向き、勝負を始める。

 

「じゃあディーラーのいのさん。勝ちの確定したポーカーの始まりとしてくださーい」

「了解しましたぞ。いやはや、自分もそこのハゲザルにやられた身ではありますが、下克上というのは(はた)からみると愉快なものですな」

「つーか今回も綺麗にハメて勝利もぎ取ったな。いや、もぎ取ったっつーか差し出させたんだけどさ」

「ため息……出るほど、鮮やか。……にぃと同じ……くらい?」

 

 説明を勝手に終えられて、勝ち確の2つのゲームをようやく開始したカイをぼーっと見ていたステフは、

 

(空を……。私、まだどこか心の端で、空を信じ切れていなかったのですの?)

 

なんて考えに辿り着いてしまい、そんな筈はないと目を閉じ考えを払拭(ふっしょく)する。

 

 人類種(イマニティ)の全権代理者で。

 

「事前情報有りとはいえ、嵌め手搦め手はいい勝負出来そうだなー」

 

その嵌め手搦め手ハッタリで位階序列7位の森精種(エルフ)の助力を受けたクラミーを負かし。

 

「白達と……同じく、……二種族同時……クリア」

 

複数の種族を相手取っても一切気圧(けお)される事も無く。

 

「俺等はその時天翼種(フリューゲル)も一緒に手に入れたがな」

「流石に本家本元の『  (くうはく)』には敵わないってー」

 

デタラメとしか思えない、誰も勝てると思ってなかった存在に、相手の提案してきたゲームで二度も勝った文字通り人類種(イマニティ)の救世主のような存在を認めてないわけが無い。と。

 

*

 

 どんな役でさえ下手すると勝ってしまう事を懸念したプラムは、盟約で縛られたのが発声であることの意味を悔しくも痛感し。

カイの裏向きのままの手札をロイヤルストレートフラッシュに偽造して。

万が一、いや六十五万が一にも自分の手札がロイヤルストレートフラッシュじゃ無くするためにも偽造して。

 

海産物(ライラ)を連れて来たのは痛恨のミスですぅ。あっちで吸っておさらばしとくべきでしたぁ。……本当に異世界人と来たら、どいつもこいつも厄介な人達ばかりですぅ)

 

 声を出せない故に、空になる舌打ちをしつつ、負けを受け入れたプラムは、

 

(抱き枕になってる間、汗くらいは舐めさせていただきますぅ)

 

 とまぁ普通に考えるとド変態な事を頭の中で思い描き言われる前にカイの膝の上に収まるのだった。

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