「そんな風に育っちゃったから。――かなぁ。不器用な人間だったからねー」
「不器用な人間があんな綺麗にトランプ並べたり出来んのかよ。若者の人間離れってか?」
「私より若いし人間離れしてるの空達の方でしょ。不器用だよ? 頼まれても断れないんだから。何度もやってればそりゃあ手慣れてくるよ」
空の質問に対し、ふざける風でも、かと言ってシリアスにするわけでも無く、まさしく受け入れた様に解答するカイは、ポツリポツリと自分の事を話し始めた。
「昔々と言う程には遠くない程度に昔。一人の女の子が居ました」
そんな語り出しで始まったのは割とよくあるような話。
親から、人の役に立つ事をしなさい。と教えられて育ったその女の子は、小学生の時に委員長に立候補した。
そんなになりたいと思っていなかったし、勉強も出来る部類には入らない、至って平凡な成績であったが、誰もやりたがらない委員長という
それは、小学生の間中続く事となった。一度やったから、経験者だからと周りに推薦され、それがみんなの為になるなら。と半ば押しつけに近かったが、女の子は受け入れた。
各クラスから一人、生徒会のメンバーの立候補を立てなければならない場面でも当然のように彼女になったし、そんな彼女を見て、先生たちすら彼女をそういう存在であると認識していた。
中学に上がっても変わらない。委員長で生徒会役員、これにいくつかの部活の掛け持ちが加わった。
高校に上がると部活の掛け持ちは無くなったが、あらゆる行事で仕事の有る役員を任されたし、彼女も当然のように受け入れた。
大学に入ってからは忙しさに拍車がかかった。
まず合コンの幹事を任され続ける事になったし、何より彼女に合コンがしたい。と声を掛ければ日程から面子から勝手に用意してくれるという便利さで、彼女はとても人気だった。
とある男子が無茶振りで、余興をしてくれ。と言ったのに対し、寝る間を惜しんで手品を二つほど覚えた彼女はしかし、その事で褒められることは無かった。
親に言われて育った中で、褒められたいという一心はいつの間にか、自分はどうでもよく周りの人が全て。という思考に切り替わった。
箱に入る事で周りに報いようとした彼女は、いつの間にか自分が箱になっていて。
責任が、期待が、仕事が、彼女と言う箱に次々に納められ続け。
納まらなくなった時には積み上げる事に変わって行って。
それでも、不器用な彼女はその生き方以外を思いつかなくて、そして知らなくて。
――とうとう。壊れた。
「以上、山無し、落ち無し、意味無し、のやおい話でございましたとさ」
「今の話がカイ様なんですぅ?」
話を静かに聞いていたプラムは、膝の上に座っている体勢からカイの顔を覗き込む。
そんなプラムの顔に、少しだけしょっぱい水滴が落ちて来て。
思わず本能で口に含み、一瞬声をあげようとしたが、視界に入ったカイの顔に。
プラムは自分の肩へとそっとカイの顔を優しく押し付けた。
「にぃ……泣かせた」
「いや、悪い。……踏み込み過ぎた」
「――お茶ですわ」
しんみりとした空気になるが、それを壊すほど空気の読めない存在はここにはいない。
ステフの差し出したお茶を受け取り、一気に飲み干したカイは、
「プラムきゅん。……お散歩しない?」
とくぐもった声で言うのだった。
*
「大丈夫ですぅ? ……その、さっきの事」
「んー? もう平気だよー。ありがとねー心配してくれて」
恋人よろしく手を繋いで、城の外周を散歩している二つの影。
出かける前に空から、
「何としてもフォローしてくれ」
等と頼まれてしまったプラムだったが、元よりそのつもり。
彼女が落ち込んでいては聞くものも聞けない。もっと言えば口を滑らせることに期待できない為、プラムは惚れられている事を全力で利用し、カイを元気づけようとしていた。
手を繋いだのもプラムからであるし、飛べる彼がカイに合わせて歩いている今の状況だってそう。
散歩という他にもやりたい事があるプラムからしてみればただの時間泥棒に付き合ったのすらそう。
しかし、そう考えて無いのがもちろんカイで。
そもそもこの散歩の提案はプラムの為であり、
「ねープラムきゅん。ちょっと恥ずかしいお話したいから、二人以外に声が聞こえないように出来る?」
「お安い御用ですぅ。どーせご存じなのでしょうが
紫の瞳に不規則な模様を浮かび上がらせ、えいっ☆ と可愛く呟いて、
「お待たせいたしましたぁ。今は誰にも盗聴されずにお話が出来ますぅ」
いつでもどうぞ、とカイと向かい合うように位置取ったプラムの頭を撫で、指を頬に這わせながら。
「次の勝負の日程、
プラムが固まってしまうような事を口にした。
「それも知ってたんですぅ? いや、そうじゃなきゃカイ様が知り得ませんよねぇ」
「当然。というか今まで隠密行動してたんでしょ? 人間の私が気付ける筈ないもんねー」
プラムを抱きしめ撫でくり回しながら、カイはプラムの思惑を次々と暴いていく。
「城にいる
「僕も隠し事は暴くのが好きなのですけどぉ、カイ様も相当ですよねぇ」
「大好きだからね、プラムきゅんの事」
「……その事を今言うって事はぁ、何か案があるんですぅ?」
カイを抱きしめ返し、何か自分に有利な情報でも出て来ないかと期待したプラムに届いたのは、
「わざわざ間者に伝えずに、直接クラミー達に教えに行こ? 伝言ゲームなんて思った通りに伝わらないのが当たり前だよ?」
「えぇと、僕が直接教えに行くと、どうあがいても警戒されちゃうと思うんですけどぉ?」
「だから、タダでは教えないの♪ ゲームをして、その上で勝って、相手に都合のいい記憶を植え付けちゃお?」
段々とカイの息が荒くなってきたのは興奮してきたからであろうか。
何に。や、どうして。と言った質問はこの場では厳禁。地雷でしかないと判断したプラムは確信を得てカイへと問う。
「位階序列第七位、
カイは、すでに必勝のゲームを思いついている事に。
「やっぱりクラミー達と言えば、オセロでしょ」
何がやっぱりなのか、プラムには分からなかったが、カイが言うのならばそうなのだろう。
と、ことゲームに関しては『
プラムはそのオセロのルールを静かに聞くのだった。