blank page   作:瀧音静

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仕込み(シークレットプラン)

「先手後手はどうやって決めるのかしら?」

「好きな方選んでいいよ? 空の知識あるなら分かるでしょ? オセロには明確な『完全手(ひっしょうほう)』があるよ?」

「だから後手の方が裏切りの使用可能回数が多いんでしょ? ……フィー、どうする?」

「クラミーに任せるのですよ~。ソラさんの記憶を持っているのはクラミーですしぃ、たとえそれが無くとも私はぁ、クラミーを信じるのですよ~」

 

 周りを気にせずにクラミーにまとわりついてくるフィールに、僅かに笑みを向けて。

 

「先手は貰うわ。構わないわね?」

「はぁい、お好きにどうぞぉ。どうせ計算通りですぅ」

 

 クラミーの先手取りの宣言に、プラムはそうとだけ言ってカイと顔を合わせて笑う。

その行動に思わず「読み切られていたか?」と内心で動揺するクラミーへ、

 

「気にしなくていいのですよ~。どうせ小賢しい蚊の虚言(ブラフ)なのですよ~。裏切り含めて読み切るなんて~、いかにオセロと言えども~、まず不可能なのですよ~」

 

 頼りになるフィールが落ち着くようにと(たしな)める。

 

「勝負前から気弱になるとこだったわ。ありがとう、フィー」

「クラミーはぁ、その弱い所がかわいいのですよ~。この勝負はぁ、二人で戦う物なのですよ~。補助はぁ、任せるのですよ~」

「これ見よがしにイチャついてくるね。プラムきゅん、私達もイチャつく?」

「そこに対抗意識を燃やされる理由が分からないですぅ。それにぃ、膝の上に座らされているこの状況はぁ、イチャついてる部類に入らないんですぅ?」

 

 もはや定位置となりつつあるカイの膝の上。そこに大人しく収まっているプラムが少しだけ不機嫌そうに呟く。

 

「先手は貰うわね。じゃあ、正々堂々、裏切りましょう」

 

 フフン。と鼻を鳴らして、そう宣言して黒石を盤上に置くクラミーに。

 

「クラミー? その決めセリフっぽいのは擁護不能なのですよ~」

 

 とパートナーであるフィールからツッコミが飛ぶ。

 

「な、……き、気にしないで!!」

 

 顔を真っ赤にしながらそう叫ぶしかないクラミーから、羞恥の波を引かせたのはカイの一打。

別段不思議でも無い平凡な手。

 

(オセロの完全手は証明されていると知ってる筈よね? じゃあ、どこで変化をつけてくるのかしら?)

 

 そんな思考の中で、ふと、思い当たった疑問。何故、ゲーム開始前に質問しなかったかを悔やむべき内容のソレを、仕方なく確認する為にクラミーは口を開く。

 

「ねぇ。この裏切りの魔法って、()()()()()()()()()()?」

「? どうやってって、普通に魔法で?」

「ふざけないで! 私達人類種(イマニティ)が魔法を使えるわけ無いじゃない!」

「だから、『二人一組』ってわざわざルールに組み込んでるじゃん。フィールさんが魔法使えるでしょ?」

「なっ!?」

 

 問いかけに返って来た答えはクラミーの考えと同じもの。

しかし、限りなく手が限定されるもので。

クラミー、及びカイの手番では裏切りが仕込めないという回答で。

裏切りの魔法以外の使用が出来ないというルール上、隠蔽した会話(まほう)すら使えない。

 

 結果、クラミーが何らかのアクションを起こしフィールに裏切りの使用を求めたとして。

相手には筒抜けとなってしまう。

 

(これ、向こうが(あらかじ)めどう動くかを決めてたら、本当にあの吸血鬼が言った通りになりかねないじゃない!)

 

 オセロ、という”あの二人”にいい様にやられた勝負内容で警戒はしていた筈だ。

であるのに、少なくとも空の知識を持っている筈なのに、何故自分は。と思わず自己嫌悪するクラミーに、

 

「大丈夫なのですよ~。クラミーの事でぇ、分からない事は無いのですよ~」

 

 と優しく響くのはフィールの声。

クラミーと入れ替わり、石を打つ彼女は。

 

「だからぁ、クラミーはもっと信じるのですよ~。私の事も~、自分の事も~」

 

 あのオセロで、あの二人が行った立証不可能の不正。

すなわち、互いへの異常とも言える信頼。

それを、やってしまえばいい。と、フィールは静かに宣言したのだ。

 

「やってやろうじゃない。……こんな所で負けてられないのよ!」

 

 プラムの打った石すら平凡な手。それを確認し、クラミーは確信する。

この勝負、相手が裏切りを仕込むのは石だけではない。と。

 

(大体、ルールに明言されてないじゃない。裏切りを付与出来るのは石()()なんて)

 

 二人で交互に打つ。というルール上、普通のオセロとは違い考える事が一つ増える。

相手の考え、そして相方の考え。それに裏切りの事も合わせて3つ。

その並行思考をさせる事で注意を逸らそうとした。そう考えたクラミーは、

 

「あなた、すでに裏切りを仕込んでるわね?」

 

例え下手くそな三味線(ゆさぶり)でも、間を取る為に躊躇い無く発した。

 

「どうだろねー。あなたはどう思うの?」

 

 当たり障りも無く、特に動揺も何も感じられないその返答を聞いて、クラミーはため息をつく。

石で盤をコツコツと小さく叩いて思考する()()をして。

後ろにいる信頼しているパートナーへ、意思よ伝われ、と心の中で願う。

 

(なるほどなのですよ~。相手さんはぁ、盤上を反転させるつもりなのですよ~。それならば~、そこに裏切りを仕込んでおくのですよ~)

 

 自分から焚きつけておいて、伝わりませんでした。じゃ話にならない。と、思考していたフィールは。

しっかりとクラミーの思いを受け取っていて。先手番が使える2回の内の1回目の裏切りを、盤そのものへと仕込んだ。

 

 盤上有利を続けているクラミー側は、別段定石外しをする必要ない。と、完全手のままに進めていく。

そのまま特に動きがあるわけでも無く、盤上は既に半分までが互いの石で埋まって行った。

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