何かがおかしい。
そう感じたのはフィール。
ルール上、序盤に裏切りを仕込んでも旨味が無いというのは分かる。
が、しかし。盤上の石はすでに折り返しを迎えていて。
ここまで動きが無いというのは想定外。
(何を企んでいるのですよぉ~? クラミーが教えてくれた~、盤自体に仕込んだ裏切りと~。――後の2つはどこに仕込んだのですよ~?)
つい癖で魔法の痕跡を探そうとしたが、裏切り以外の魔法は封じられている。
その事を思い出し、わずかにイラつきながらクラミーと二人で打った過去のオセロを思い出す。
同じタイミングで、やはり”あの二人”と打ったオセロを思い出していたクラミーは。
(ここまで動かないなんて。本当に何を考えているのかしら。……
完全手を理解していないフィーでも、クラミーという完全手のガイドに沿えば、その手は自然と寄って行く。
依然として優位はクラミー側。それは、カイ達が何かアクションを起こすまで当然続くわけで。
四角のひとつを取る為にフィールが辺へ打った石は。
僅かな数のカイ側の石を裏返して。――
それは当然カイ側が仕込んだ裏切りが発動したという事で。
初めて明確にカイ側が動いたという事で。
何よりその石を打ったのはカイだったという事実にクラミーとフィールは息を飲む。
プラムが打った石が周りに無いから、とフィールもその一打を打ったのだ。
それが、当たり前のように裏切り付与された石だった。
つまり……
(向こうは予め、裏切り付与するタイミングを示す合図を決めていた。と言う事かしら)
やはり相手の準備は万端だった、という事か。
内心唇を噛みながらクラミーは思案する。
間者をだしに挑まされた勝負。どうせこちらが不利だと理解はしていたが。
あの東部連合に『
自分も覆して見せる。と実は意気込んでいたクラミーだったが、読めない相手の手にはただただ困惑するばかり。
(落ち着きなさい。盤に裏切りを仕込んでいるのは読んだじゃない。今ので裏切り二つ目。あと一つはどこに仕込むのかしら……)
そう考えて。一つの気付き。
(? わざわざ石の数を優位にしてきた? 裏切りで最後に盤上を裏返すのに? ……いや、勝つ姿勢を見せないと企みがばれるからよね?)
過去の自身ならそう考えるであろう思考を、この時のクラミーは振り払う。
(何て甘い考え、
そこに至るまでの長考を経て、クラミーの出した結論は。
「へぇ。なるほどなるほど」
思わずカイが感心する一手で。
「随分と思い切った一打ですぅ。……そんなに怖いですぅ?」
プラムが煽る一手で。
言ってしまえば悪手も悪手。相手に角を譲る一手。
しかしそれは、クラミーの打った読み切る為の布石。
角を取れば相手が盤上勝ちを拾うという意思表示になり、逆に取らなければ相手は盤上負けでなければならない、という確認。
そんな状況まで進行したオセロでこの大悪手はもちろん痛い。が、それをしなければ読み切ることは不可能とクラミーは判断した。
それを受けてプラムは、
「わざわざ差し出してくれるというのはありがたいですぅ。こんなの、ノータイムで角取りですぅ」
とカイへ目配せすらせず、角を取った事でクラミーは思考の方向を定めた。
つまりは、盤上勝ちでそのまま勝てる様に仕込んでるという事で。
(じゃあ、やる事は一つじゃない。フィー……気付いて!)
石を打つ前に、僅かに盤に触れさせて打つ事で、相手の裏切りを打ち消す裏切りを仕込んだ盤へ、さらに裏切りを仕込む事を
(? また盤に裏切り? ……つまり相手は盤に仕込んでいないという事か。 とと、思わず熱くなってしまったのですよ~。クラミーがすーぐ熱くなる分、私は冷静でないとダメなのですよ~)
と考えつつも、
悪手を打った意味を。その後の角取りを見てまた盤に裏切りを仕込む意味を。
そして、この後どう動けば勝てるのかを、巡らせて。
そこから、最後の一打になるまではいつも通りのオセロとなる。
もちろん最終盤。お互いが打つ度にお互いの石が目まぐるしく反転していく。
その中に裏切りによって反転する石は無く、最後の一打、プラムの手を残すのみ。
盤上は現状カイ側が不利。
が、この一打でそれも逆転する。
そして、打つ瞬間に盤上に仕掛けられた
それがクラミー達の出した結論で、決着の予想。
クラミーとフィールが盤上を凝視する中、二人に気付かれないように笑ったカイは。
勝利を確信し、プラムの一打を見守る。
パチン。と石を打つ音。
そしてその直前に聞こえた一斉に石が反転する音。
が、
クラミー達の敗北が決定した。