blank page   作:瀧音静

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等速進撃(ステイタリィ)

「なっ!? どういう事よ!?」

「どうって……見たまんまだよ? 私達の勝ち」

「ふざけないで! 盤上の石は私達の方が多いじゃない!」

 

 声を上げたクラミーの言う通り、盤上が示す勝者はクラミー側である。

がしかし、カイは自らの勝利を宣言した。

そして、

 

「クラミー? 裏切りが発動して石が裏返った音は()()しか鳴ってないのですよ~。つまり~、どこかが反転している筈なのですよ~」

 

 とフィールが気が付いた通り、最後に発動した裏切りは3つ。カイ側の裏切り1つにクラミー側が盤に付与した裏切りが2つ。

つまり、残り一つのカイ達の裏切りは()()クラミー達の目には映っていない。

いや、映ってはいるのだが裏切りが発動してからはクラミー達は確認していない。

 

 そう、つまりは。

 

「フィー! ルールが書かれた紙! あれを確認して!」

 

 クラミーが気付き、フィールが確認した通り。

 

1 基本は一般的なリバーシのルールに準拠し、盤面が全て埋め尽くされた時、盤上の石の総数の多い方の勝ちとする。

 

の一文が、

 

1 基本は一般的なリバーシのルールに準拠し、盤面が全て埋め尽くされた時、盤上の石の総数の多い方の()()とする。

 

 と反転した紙だった。

 

「だから言ったじゃないですかぁ。計算通りですぅ」

 

 腹が立つほど輝く笑顔で、それこそこぼれんばかりの笑みでクラミー達を煽るプラム。

 

「でも! わざわざ負ける為に()()()()()()仕込む!?」

「勝つ為に必要な経費じゃないの? そもそも、()()()()()()()? ローリスクハイリターンなら迷う必要ないよね?」

「な゛っ!?」

 

 読み切っていたと宣言されたクラミーと、そのクラミーを信じていたフィールが揃って驚いた。

 

「だって、空の知識有りきの思考でしょ? だったら、()()()()()()()()()()()()()()()でしょ? 忘れた? 私、先の方まで()()()()()()()? みんなの心理描写も含めてね?」

 

 そうだった、と。歯を食いしばり、けれどもそれだけでは説明できない部分をクラミー問いただす。

 

「けど、なんで! どうしてルールに仕込んだのよ! そんなの!」

「反則って言いたいの? そうだよね。だって空は、()()()()()()()()()()()()()もんね」

 

 その問いに何が問題か? と不思議そうに答えながら。

 

「でも、だからこそ仕込むんですぅ。だってぇ、僕たちは()()ですぅ。弱者は知恵を磨く者ですぅ。それを忘れた憐れな強者様はぁ、こうして喉元を食いちぎられるんですぅ」

 

 自らを弱者と謳った位階序列十二位の吸血鬼(ダンピール)の王子は。

強者と(さげす)んだ位階序列七位の森精種(エルフ)を尻目に、心底上機嫌に続ける。

 

「大体ですねぇ、よくもまぁそこまで他人の記憶でドヤれるのですぅ。理解に苦しみますぅ。あ、だからこそ負けたのは理解してますぅ?」

「アナタねッ!!」

 

 言い返そうにも、本当にその通りだったクラミーはぐうの音も出ず。

空の知識に頼りきりだった自身を今更ながら呪う。

 

 何故、石だけに裏切りを仕込むわけではないと読んだ時に。

盤に仕込むと読んだ時に。その思考を先に延ばさなかったのか。と。

 

「あ、あと言っておくけど、私、完全手なんて知らないからね?」

「はぁっ!?」

「完全手があるのは知ってたけど、どんな動きが完全手なのかっていうのは知らないよ? その時点からクラミーは読み違えてたんだよ?」

 

 そしてカイの口から明かされる根本的なクラミー達の思考の(つまづ)きは。

クラミーとフィールを絶句させるのに十分だった。

 

 読み切る前提として考えていたその条件を、そもそも満たしていない相手など読み切れるはずも無く。

そして、それゆえに届かせることが叶わなかった思考、すなわち「盤上で勝たない」という結末を。

自ら負ける為に動いてしまったというその事実を突きつけられて、クラミーは一人衣服を握りしめる。

 

 負けた。完膚なきまでに。

読まれて。誘導されて。見せつけられた。

情報の、圧倒的なアドバンテージで、殴り負けた。

 

 勝負中、目線の動き。手の動かし方。なんなら呼吸まで。どこに意識を向けているのか。

それらを、やはり空の知識頼りに探っていたクラミーだったが。

この時にようやく、それが罠だった。と理解した。

 

「本当に、完敗ね。フィー、ごめん。勝てなかったわ」

「絶対勝てると踏んだ勝負だったし、気にしなくていいよ? そもそも私はイレギュラー。ちょーっと楽しませて貰ってるだけなんだから」

「勝者がそれを言うのは~、すこーしウザったいのですよ~」

「勝ったのにドヤって何が悪いんですぅ? 勝ってないのにドヤってたどこぞの誰かよりはマシだと思いますぅ」

 

 うっすら瞳を潤ませて、相棒(フィール)へ謝罪するクラミーへかけられたのは、対戦相手であるカイからのフォローにならない慰めで。

それに突っかかってくれたフィールに返答したのは。

ウザイest(ウザさ最上級)の顔で煽り続けるプラム。

 

「んじゃ盟約に誓った通り。記憶の改ざんをさせて貰うよ? 要求は、神霊種(オールドデウス)の勝負の日程――を()()()()()()()()()()

「は?」

「そっちの要求は聞く約束だったから、間者に関する記憶の消去を受け入れて……んじゃあプラムきゅん。お二人に対神霊種(オールドデウス)戦の日時を教えてあげて~」

「は~い。ではでは~、優秀な森精種(エルフ)の間者からの情報としてぇ、忘れないよう記憶願いますぅ」

 

 こうして、神霊種(オールドデウス)戦が繰り広げられているその裏で。

同じく繰り広げられた幽体ムキムキマッチョと、本気を出した夜の王(プラム・ストーカー)の共闘の為の布石を無事に打ち終えたカイは。

 

 ご機嫌に、満足しながらプラムを抱いて。

ゆっくり、ステフに用意して貰ったベッドの上で、眠りの世界に落ちていくのだった。

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