blank page   作:瀧音静

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これ以降しばらくはゲームは出ないと思われます。

ゲームを考えるの難しいっす。


渡航者(トラベラー)

 最初は何の変哲も無いチェスで。

お互い何の滞りも無く進めていた盤上は、やはり、と言うべきか。遊技の神の有利によって展開は進んでいく。

 

 かつて、チェスのコンピュータプログラムを相手に20連勝をした『  (くうはく)』の白ですら、彼の引っ掛けや戦術といったプレイングに絡めとられたように。

彼女程の頭脳ですら、相棒の空を必要としたように。それほどまでに遊技の神は圧倒的だった。

 

 そんな圧倒的な存在の一手は、散々逃げ回ったナイトを打ち取る為に進めたポーンは、()()()()()()()()()()()()()

 

 そんな展開を予め分かっていた『blank(くうはく)』は、間髪入れずに次の手を指す。

今度はビショップを動かす為の布石となる一手。

相手へ手番を移しても、これまで通りのノータイムというわけにはいかず、しばらく考えて――ようやく次の一手を指すが……。急に攻め気を無くし、守りの為の布石としたその一手を見て、『blank(くうはく)』はほくそ笑む。

 

 まだ、遊技の神はルールを把握しきれていない様だ。少なくとも、()()()()()()()()()()()をすべて把握するには至っていない様で。

 

 今の内に荒せるだけ荒そう、と敵陣のど真ん中にナイトを動かす。

先程と同じく遊技の神はポーンで打ち取ろうとする。が、結果は変わらず、逆にナイトに打ち取られる始末。

 

 彼女と同じ盤面を見ている遊技の神、その二人の画面の上にアナウンスが表示される。

 

{黄金の鉄の塊で出来た騎士(ナイト)が、皮装備の歩兵(ポーン)に遅れを取るはずがない}

 

 と。

 

 一瞬ずっこけそうになった遊技の神は、一瞬で落ち着きを取り戻し理解する。

ナイトは、ポーンでは打ち取れぬ。と。

一度だけ返り討ちにする特殊能力かと思い2度、ポーンで取ろうとしたが、どうやら読み違えたようだ。

 

 彼女の設定した能力を、まるで見ずに魔法を編んで設定したこのチェスは、遊技の神にしては珍しい初見のゲームであり――、同時に心躍るゲームであった。

 

 知らないゲームを、ゲーム中に理解し、そのゲームに精通した者を打ち倒す瞬間は何物にも勝る瞬間だと彼は考える。と、同時に他の駒の能力にも思考を巡らせる。

 

 ナイト、つまり騎士があの能力ならば――、僧正(ビショップ)は? (ルーク)は? 女王(クイーン)は? そして――歩兵(ポーン)の能力は……。

 

 想像を巡らせながら遊技の神は、先程の守りの一手を自ら崩す。完全な攻めの一手へ転じ、相手の出方を、そして駒の能力を伺う為の大胆な一手。ビショップのただ捨て、である。

 

「――っ!?」

 

 思わず爪を噛み、やられた。と思う『blank(くうはく)』であったがこのビショップを取らないわけにもいかず、相手の思惑の中と知ってもなお、取るしかない一手を指した。

ここから、再度遊技の神に盤上は支配される事となる。元々ポーンでナイトが取れないという普段と違う展開のせいで狂った歯車なだけに、別段駒の動きに変化が無くなれば元に戻るのは道理であった。

 

 じりじりと押され始めた展開からすでに20数手、盤面の有利は明らかに相手、ここからひっくり返すのは中々に至難の業のはずなのだが……。『blank(くうはく)』はゆっくりビショップをタップして――、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 瞬間、ビショップの移動可能範囲を塞いでいた遊技の神のポーンとナイトは、()()()()()()()()()()()

 

{この素晴らしい盤面に爆炎を☆}

 

 画面上に現れたアナウンス、そして相手は駒を動かしていないのにこちらに手番が回って来た事を踏まえて。そして同じくビショップを元居たマスに置き直しても同じことが発動しなかったことで遊技の神はビショップの能力を把握する。

 

 すなわち、一定の手数動かさない事で行動可能のマス上に居る相手の駒を打ち取れる能力。

この為に彼女は最初から中々ビショップを動かさなかったわけだ。

と一人感心して頷く遊技の神は、ならば、ともう一方の動かしてないビショップの行動可能マスに入らないよう注意を払いながら進めていく。

 

 未だに盤面は遊技の神有利ではあるが、情報優位性(アドバンテージ)はどう考えても『blank(くうはく)』にあった。

その情報アドを発揮させないよう、一気に勝負を決めようと王手(チェック)をかけた。……かけた筈だった。

 

{俺は悪くねぇっ! だって! ヴァン先生がっ!!}

 

 キングに隣接したルークの能力として映し出されたアナウンスは……ルークはルークでも違う赤毛(ルーク)のセリフであった。

思わず眉を(ひそ)めた遊技の神は、王手(チェック)のかかっていない今の状況を静かに、冷静に分析する。

 

 つまりは城。ルークに隣接したキングは籠城(ろうじょう)している、と捉えるべきか。

先に城を退かすか、あるいはルークとの隣接から解除しなければ王手(チェック)すらかけられない。

中々に厄介だね。と思わず小さく(こぼ)した遊技の神は心底楽しそうに微笑んだ。

 

 そこからは異様とも言えるような展開だった。

キングをルークに守らせ、王手(チェック)がかからない事をいい事に、相手の駒を次々取っていく『blank(くうはく)』と、何としても王を守る城を落とそうと、多少の犠牲覚悟で攻め込んでくる遊技の神と。

 

 ようやく両の城を落とした遊技の神は、今度こそ、と王手(チェック)をかける。キングに逃げ場は無く、周りにあるのはたった一つのポーンのみ。『blank(くうはく)』に残された駒は遠く離れたクイーンしか無く、事実上の詰み(チェックメイト)。しかし、これで終わるとは遊技の神は全く思っていなかった。

 

 そして、それは大当たりであった。

 

{私が死んでも、代わりは居るもの}

 

 ()()()()()()()()()キングへの王手(チェック)を防ぎ、今度は遊技の神が逆に追い詰められる。

元々無茶気味の攻めであり、これまで2桁回数は王手(チェック)(かわ)されたが故に、すでに盤面はボロボロな無残な状態で。

 

 それでも遊技の神は攻め手を休めない。最早最後まで、詰み(チェックメイト)まで読み切っているからで、それは『blank(くうはく)』も同じ事。

最後まで読み切ったが故に指す手に躊躇いは無く、二人の思考はここだけ重なる。

 

(勝った)

 

と。

 

 最早何度目か分からない今度こそ、それこそうんざりする一歩手前まで行きついた王手(チェック)、そして詰み(チェックメイト)へと続く手は。今度こそキングを確実に打ち取った。

思わず天を見上げて、ようやく終わった、と()()()をした遊技の神の目には、画面上部に映るアナウンスの文字が飛び込んできた。

 

{今日から私の国は女王(クイーン)を中心とした国家へ生まれ変わります}

 

 それは、遊技の神の敗北を決定付けるアナウンス。

 

 絶対に勝ちを確信した、紙一重の勝利を手繰り寄せた遊技の神は、最後の最後、クイーンの能力によって紙一重ですら、ましてや勝利ですら無くなった。

 

 すでに遊技の神のクイーンは打ち取られ、ルークも、ポーンもキングの隣接マスに無く、詰み(チェックメイト)を突き付けられた遊技の神は、思い切り歯噛みしながら。

 

【You are Winner】

 

 の一文を『blank(くうはく)』へと送り付けるのだった。

 

―――――――………………

 

【まさか本当に負けるとは思わなかったよ。でも楽しかった。それじゃあ君の願いを聞こうかな】

【私の願いは、『  (くうはく)』達の近くに飛ばして欲しい。これだけ】

【おや、謙虚と言うかなんというか。もっとトンデモナイ事を言われるかと思ったよ】

【私がディスボードへ行きたい理由は一つだから】

【ふーん。ま、楽しく見物させて貰うとするよ。……名前を聞いてもいいかな?】

皆夢(かいむ)。あんまり好きじゃないからカイ、とでも呼んでくれるかしら】

【カイ、ね。君がどんな物語を作り出すか、あの二人と共に楽しませて貰うよ。もう知ってると思うけど、僕はテト。ディスボードの唯一神、テトだよ】

星杯(スーニアスター)を手に入れた、全知全能の存在】

【そこまで知ってるんだ。ふふ、いいねぇ、いいねぇ。それじゃあカイ、君の望みが叶うよう、応援しているよ?】

【私も、あなたの望みが叶うよう、あの二人が、あなたの希望の通りに動くよう、願っているわ】

【それじゃあ】

 

「ようこそ! 盤上の世界、ディスボードへ!!」

 

■■■

 

 その日、一人のゲームプレイヤーがひっそりと姿を消した。

無課金で、無敗で、とあるアプリで頂点を取ったその存在は、やっぱり、プレイヤーアカウント名はくうはく、であったという。




連日投稿とかかましましたけど、以後話の展開を考えながらなので気長にお待ちください。
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