blank page   作:瀧音静

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千里眼(インサイト)

「秘めました? 何にゃ? それ」

「ありゃ、知ってるもんだと思ったけど、ひょっとして知らない系?」

 

 カイの提案したゲーム、『秘めました』を聞いて、アズリールは首を捻った。

 そんなゲーム知らねー、と。

 

「聞いた事も無いにゃ。どんなゲームにゃ?」

「えっと、連想ゲームの類なんだけど……まず親が答えを思い浮かべるの。そんで、その答えが何なのかを探る為に子がいくつか質問する。質問の内容は『はい』か『いいえ』で応えられるものに限られて、親は必ず質問に答える」

 

 これからするゲームの説明を始めたカイの言葉を、一字一句聞き漏らすまい、とそれまでのだらしない姿勢を正し、無意識に姿勢を良くしたアズリールは、密かに胸を高鳴らせていた。

 それは慢心でも、見下しでも無く、純粋な好奇心。

 ゲーマーの性とも言える、知らないゲームに遭遇した高揚感。

 そんな期待の眼差しを受けながら説明するカイの内心もまた、アズリールと同じように胸を高鳴らせていた。

 もうすぐだ。

 もうすぐ、プラムの活躍した場面が肉眼で見れる、と。

 

「そんで、親の思い描いた『答え』に辿り着いたら、『あなたが思い描いたのは~~ですね?』って聞く。それが当たっていれば子の勝ちで、外れていれば親の勝ち」

「一応質問にゃ。子の質問に虚偽の答えを返したらどうなるにゃ?」

 

 ルールをひとしきり聞いてから、アズリールは真っ先に頭に浮かんだことを質問する。

 つまり、親が答えを隠蔽出来やしないか? と。

 嘘の解答で、答えに辿り着けなく出来るのではないか? と。

 しかし、カイから返ってきたのは、

 

「虚偽の解答をして、原理的に勝てないゲームにならなければいいんじゃない? そうなったらイカサマに当たって、バレたら即敗北だし」

 

 という、盟約に照らし合わされたものであり。

 

「なるほどにゃ。……これ、一回試しにやってみていいかにゃ?」

 

 即座に納得し、すぐに実践を行おうとするアズリールは流石と言うべきか。

 

「いいよー。どっちが親やる?」

「交互に回して一回ずつにゃ! まずはうちが親をやるにゃ!」

 

 当然! といった感じで話を進めたアズリールは。

 

「そういえばこれ、どうやってゲームを始めるのにゃ?」

 

 と、何がゲーム開始のキーになるか分からずに固まった。

 

「そこで秘めました、だよ。『秘めました』が開始の合図であり、準備完了と同義なの」

「ふむふむ、じゃあ『秘めました』にゃ。けどこれはきっとあんたには分かんないかにゃ~?」

 

 自信満々に言い放ったアズリールは、カイからの最初の質問に――、

 

「それは、「天翼種(フリューゲル)」ですか?」

「いいえ、にゃ」

 

 最初の質問には予想通り、と背を逸らして答えたアズリールだったが。

 次の質問には戦慄した。

 

「じゃあ、『龍精種(ドラゴニア)』ですか?」

「にゃっ!!?」

 

 その事を知る者など、限られている筈で。

 そもそも、何故その繋がりに至ったかすら、目の前の人類種(イマニティ)からは読み取れない。

 

「アズにゃん? ハイ? それともイエス?」

 

 もはや確信を持っての質問だったか、そう聞いて来たカイに対して、アズリールに出来る事といえば……。

 

「う、――イエス、にゃ」

「やっぱり? だから私には分からないって言ったのかな?」

 

 思いっきり図星を突かれ、けれどもアズリールは思い返す。

 まだ、龍精種(ドラゴニア)としか特定されていない筈で、どの個体か等は――。

 

「アズにゃんが思い描いたのは、『リーヒェンゲルテ』だね?」

 

 あっさりと――、そして驚く事に正解を言われてしまい、

 

「何でにゃ!? 何で分かるにゃ!? というか何で知ってるにゃ!!」

 

 逆切れチックにそう喚くアズリールに対して。

 

「だって、アズにゃんが想う事なんて、ジブリールの事かアルトシュの事でしょ? じゃあまずは天翼種(フリューゲル)かどうか確認して、んでもって私には分からないって発言から安直な答えじゃない事が分かるから、アルトシュってのも除外」

 

 淡々と説明していくカイに、アズリールは何を思うのか。

 

「ジブリールは否定されたから、じゃあジブリール関係で何かあったっけ? って考えて。そう言えば龍精種(ドラゴニア)と戦って倒してたなーって思ったからさっきの質問で」

 

 そもそもなぜ、最近この世界に来たはずのこの人間は、大戦時のジブリールの動きを知っていたのか。

 あのジブリールが、――いや、()()ジブリールならばいざ知らず。

 今の、あの人類種(イマニティ)に主従を誓った今のジブリールが自分からそんな事を言うとは思えず。

 だからこそ、言い表せない不快感がアズリールの背中に張り付く。

 

龍精種(ドラゴニア)を思い描いてる確認が取れたから、じゃあジブリールが討伐した個体なんだろうって決め打ちでリーヒェンゲルテって解答したってわけ」

 

 前提として、そんな記録が残っている可能性など無い。

 いや、有るにはあるだろうが、それは人類種(イマニティ)が読める文献には無いはずであり、通常ならば知っている筈が無い情報なのだ。

 ましてや【王】を冠した三体でも無く、ピンポイントでその内の一体の従龍(フォロワー)を思い浮かべるというのは……。

 

「なるほどにゃ。色々知ってるみたいだにゃ」

 

 口ぶりから、説明してくれた思考から、どうやら大戦の事を知っているらしい目の前のカイに僅かに興味が出て来たアズリールは。

 

「じゃあ次はあんたが親にゃ。さぁさぁ早くするにゃ!」

 

 急かしながら、盟約により何を要求するかに思考を巡らせるのだった。




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