「はい、じゃあ、『秘めました』」
「それは生き物かにゃ?」
親を交代して始まった『秘めました』。
初めての子でありながら、アズリールのした質問は、経験者のそれと同じだと、カイを感心させた。
先ほどのカイの様に、相手の事をよく知っていて、ある程度の予想が立つのであればもっと絞り込んだ質問からでもいいのだろうが、基本、この『秘めました』という遊びは、いかに相手の虚をつく答えにするか、という駆け引きである。
その為、最初の質問も、広い範囲をカバー出来るものにするのが定石であり、質問回数を縛られていないのであればなおさらである。
「はい。その通り、生き物だよ」
「なら、
食う者か、食われる物か。
その様な意味を、暗に含んだ質問に、カイは僅かに眉を動かして――、
「それもYES。まぁ、当然だよね」
嘘を付けるわけでも無い為にそう答えるが、それ以上の情報を表情や態度から引き出せないのは流石といったところなのだろう。
てんでこのカイという存在を知らないアズリールは、そこからどの種族に絞るかを思案する。
アズリールの思考は徐々に次に来るであろう『秘めました』本番の為の、カイという存在を掘り下げる方向へと
その時のアズリールにはちっぽけであるはずの、本来は気にも留めない存在であったはずの彼女がどう映っていたのか。
「……そいつの存在は、この世界の全員が知っているかにゃ?」
悩んだ末に投げかけた問いは、苦し紛れにしては中々の質問であったであろう。
限定的な、それこそどこかの種族の一個体になれば、下手をするとアズリールには解答不能になり得るし、何より、僅かな文献にのみ、具体的にはジブリールが見せてくれない彼女の秘蔵の書にでも書かれているならばお手上げである。
「答えはYES。そろそろ絞れて来たかな?」
その言葉を聞いて、先ほどまで部屋を動き回っていたアズリールは、足を止めて本気で思考に没入する。
一体誰だ? と。
けれど、思いつくのはたった一つの存在で。
今度は、何故その存在を答えに持って来たのかを軸に、頭を回す。
いくつかの小さな心当たりと。
たった一つの揺るがない大きな、分かりきった、思い当たる節。
時間にしては僅かに数瞬。
しかし、アズリールの思考の速度は、恐ろしく早く、
「思い描いたのは『唯一神テト』にゃ! これでどうにゃ!」
回答を口にする時には、カイがその答えにした理由も大体察していた。
「正解。まぁ、最後の質問が決め手だよね」
「一応聞かせるにゃ。何で
察してはいても、それが正しいのかは本人に聞いてみなければ分からない事である為、当然のように理由を聞くアズリールに。
「? だってみんな知ってるでしょ?」
と、それ以外に何かあるのか? と首を傾げながら聞き返すカイ。
思っていた通りの理由にやはり、と満足し、そして、同時に苦い思いを覚えるアズリール。
今回のこの模擬戦とも言うべきゲームで、何一つ、カイの勝負に対する情報を手に入れる事が出来なかったからだ。
「そ、それだけかにゃ!? もっと他にないにゃ!?」
理解はしていても、納得はしていないアズリールは、例え無駄になろうとも、ダメ元で、と言い寄るが。
「相手が知らない答えにして、何が楽しいの? だって、ゲームだよ?」
あっけらかんと。
当然でしょ、と。
お互いが楽しめなければつまらないよ? と。
勝ち負けよりも楽しむ事、ただそれだけに重きを置いたカイの選択を、アズリールはどう捉えたか。
「よ~っく分かったにゃ……。それで? どんな勝負で、どんなルールでやるのにゃ?」
「それよりさ、まずはお互いが何を賭けるか。それを決めない?」
「? 別に構わないにゃ。けど、なんでにゃ?」
一時の思案を終えて、勝負に入ろうと提案したアズリールに返って来たのは、カイからの提案で。
露骨なまでの話題転換にもちろん引っ掛かったアズリールだったが、ここで下手に突っ込んで勝負が立ち消えとなってしまっては、欲しい情報が手に入らない、とグッと堪える。
「もちろん、勝負が普通じゃ無いから。で納得してくれない? それでアズにゃんが不利になるようには絶対にしないから!」
「そ、そこまで言うならいいにゃ。……けど、その分うちが多めに要求させてもらうにゃ」
「どうぞどうぞ。と言っても情報の開示くらいしか私には出来ないけど?」
取り繕うようなカイの発言に、間髪入れずに付け込んだアズリールは、言ったはいいものの、情報以外に特に要求する内容が思い浮かばなかった為に。
「じゃあ、情報と――ジブにゃんがうちの事をずっとお姉ちゃんと呼んでくれるように手を貸すにゃ!!」
いくら何でも……、と思えるような提案をして。
「平常運転だなぁ、アズにゃん」
と、カイを苦笑させるのだった。