blank page   作:瀧音静

34 / 46
新年明けましておめでとうございます。
予定だと年明ける前に完結してた筈なんですけどおかしいですねぇ……。




終着点(Q.E.D.)

 エルキア城内、客室。

 カイに充てられたその一室に居るのは当然カイ本人。

 国王が、王女が。また、連邦内の重要ポストに就いている何名かの姿が消えたこの城に残った、元から居た従者に焼き菓子とお茶を用意して貰い、ご機嫌に鼻歌を歌いながら空中に映し出される映像を眺める。

 

「ん~! 長かったよ~~!!」

 

 伸びをしてベッドに倒れ込み、寝ながら映像に希望の場面が映し出されるのを今か今かと心待ちにする彼女は、自身の手を天井に掲げ、やり遂げた。という意思表示を行う。

 アズリールとの勝負に勝ち、見事に要求全てを飲ませたカイは、獣人種(ワービースト)の全権代理者、巫女に勝った時の賭けの内容を行使し宣言通りに天翼種(フリューゲル)に魔法を仕掛けさせた。

 東部連合首都・巫雁(かんながり)の一角。鎮海探題府(ちんかいたんだいふ)の応接室に仕掛けられた魔法はなんてことは無い遠見の魔法。

 現代で言う監視カメラと同様なもので、その映像はリアルタイムでこの部屋に映し出されている。

 現在映像に映っているのは一人の獣人種(ワービースト)

 この少し後にいのの欲情を誘い、秘書に誘われる人物で。

 どこかから連絡を受けたのかどう対応するか等を指示していた。

 しばらくしてその部屋に入ってくるのは見知った二人。

 オセロにて負かし、現在「  (くうはく)」達が行っている神霊種(オールドデウス)とのゲームの情報を()()()()()入手して、今こそ好機と攻め込んできた主従関係の二人。

 クラミー・ツェルとフィール・ニルヴァレンがその場所で待つ事しばし。

 いつの間にか先ほどまでの応接室とは違う場所になっていたが、そうなる事は予習済み。

 ベッドから跳ね起きて正座をし、心待ちにしていた場面を見るために気合いを入れたカイの目に飛び込んできたのは……。

 ――霊体化した筋肉だるまだった。

 

「しまった!! これがあるの忘れてた!!!」

 

 思わず目を汚してしまった事を悔いて頭を壁にたたき込みそうになったが、映像から聞こえる声に正気に戻る。

 

『これは……誰の描いたシナリオなのだ!!?』

 

 いのに立て続けに襲いかかる裏切りと謀略。

 それを裏で糸を引かせていたのは誰だ、という誰にも向けられていない、しかし全員へと問うたその質問に答えるのは当然。

 

『ぁはい。僕が僕の為に描いたシナリオですけどぉ?』

 

 カイの中でオンリーワンにして大好き数値ナンバーワンの夜の王(プラム・ストーカー)で。

 

「きゃ~~! プラムきゅんかっこいい~~!!」

 

 見た瞬間に枕を抱え、それに顔を埋めて悶えるカイ。

 フィーとクラミーの企みを晒し、ドヤ顔で自分の企みを語るプラムの一挙手一投足に、いちいち感嘆の言葉と感動を表す動きをするカイは、ようやくこの世界に来てやりたかった事を成し遂げられたと安堵する。

 普段はあまり連発しない魔法による錯覚と嘘と妨害と。

 魂の減退という縛りが無い今だけに許された全力の吸血種(ダンピール)の姿。

 それがこの世界に来たカイの望みであり、これまでのありとあらゆる全ての行動の先にあった答え。

 推しキャラがまだアニメ化していないなら。

 アニメ化よりも前に姿を、声を、活躍する場面を見る事が出来るというのは最高の贅沢ではないか、と自分の全てを駆使してここまでこじつけた。

 

「挿絵の時点でそれはもう何度も妄想するくらいかっこよかったけど、やっぱり動いてる本物は迫力有るし、かわいいし、何より格好いいよねぇ」

 

 うっとりとした表情で、大活躍し大暗躍していたプラムの姿を堪能していたカイだったが、映像に映る応接室からは筋肉だるまと二人の裏切り者、そしてカイの中の王子様が居なくなる。

 地下に降り、空をボコボコにするゲームを行うために移動したのであろう。

 それを見届けて、今まで手を付けなかった焼き菓子を一つ口に運び、余韻を楽しむように静かにカップを傾けたカイは、先ほどまで映し出されていた映像が消えたのを合図にゆっくりと目を閉じる。

 瞳に焼き付けた光景を瞼に焼き移すように。

 目を閉じれば鮮明に思い出す事が出来るように。

 ――その後、焼き菓子を綺麗に平らげ、カップの中身を空にしたのは、昂ぶった感情を何度か沈めた後だった。

 

 

 一同が双六勝負から戻って来たその日の夜。

 もはや定位置とも言うべきカイの膝に座るプラムは投げ出されたカイの指をチロチロと舌で遊んでいた。

 

「というかぁ、カイ様は何がしたかったんですぅ? てっきり今回の騒動に乗じて何かすると思ってたんですけどぉ」

 

 まさかお気に入り(プラム)の格好いい姿が見たい。という理由だけで、様々な種族に勝負を挑んだ等と信じられないプラムは潤った眼差しでカイを見上げる。

 

「んふふ~。秘密。これは私だけの特権なの」

 

 もちろんその表情も瞼に焼き付けたカイは、安定のプラムのうなじに顔を埋めて、

 

「格好良かったよ」

 

 ぼそりと呟いた。

 

「えぇと……どこの事を言われてるんですかねぇ」

 

 結局「  (くうはく)」のいいように動かされていたプラムは皮肉かと疑うも、カイの顔は自分のうなじに押しつけられているわけで。

 表情を見る事が出来ずに真意を汲み取れなかったプラムは諦めていつも通りカイにされるがままに身を任す。

 普段より艶が出ているカイの肌に若干の疑問を抱きつつも、今日もプラムはカイに抱きしめられたまま、カイと共に床につくのだった。




という訳でお待たせいたしました。
当初予定していた書きたかった内容はこの話しまでです。
前回の後書きにあった「もうちょっとだけ続くんじゃ」部分は次回更新からになります。

次がいつ投稿。という約束は出来ず、大変申し訳ありませんが、気長にお待ちください。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。