blank page   作:瀧音静

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お待たせしました。

もう少しだけ作者の妄想にお付き合いください


EX ゲーマー少女は寄り道をするそうです
分岐点(エンドスタート)


 空達が帆楼との勝負を終えて幾ばくかの日にちが経った頃。

 具体的に言うとようやくカイがプラムを見ても赤面して鼻息を荒くしなくなった頃。

 挨拶も顔合わせも、何なら互いの自己紹介も終えて皆が皆思い思いの行動を取っている時である。

 989(くうはく)Pなる存在に『  (くうはく)』が転身し行動に移す少し前というタイミングで、カイは初めて自分から帆楼へと話しかけた。

 

「ねぇ、帆楼ちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど……」

「? 帆楼にお願い? 厄介事であると仮定されるが、汝、何用であるか。自称・カイ」

「厄介では無いはずだよ? 神霊種(オールドデウス)だったら造作も無いことだと思う」

「帆楼ならば、という前提を持って造作も無いと言う時点で、厄介事であるという結論になるのは必然では無いか?」

 

 いきなりのお願いというのは流石にハードルが高すぎたか、即座に厄介事であると仮定され、その誤解を払拭するために取り繕えば、今度は確定だと判断された。

 まだ内容を一言ですら言っていないのに、である。

 城に居る他の種族――主にプラム辺りが聞いていれば飛びつきもしただろうが、全てを疑う狐疑の神故にお願いの先にある事までもを疑って、話を聞いてすらくれなかった帆楼へとカイは尚も声をかける。

 

「そんな事言わないでさ~。お願い聞いてくれたら帆楼ちゃんが知りたいこと教えてあげるからさ~」

「帆楼が知りたいこと? 何でもであるか?」

 

 この世界に居るのなら、誰しもに例外なく旨味のある情報。

 その情報を持つ唯一の源であるカイに対して解を求めると言うことは、狐疑の神に取っては当然で。

 言葉の端から感じ取れる自信の表れは、寸分狂わずに帆楼の要求に応えられることを意味していて。

 けれども、自信があると言うことはすなわち――絶対に渡さないという覚悟に満ちた必然だった。

 

「もちろん、私と勝負して勝てたらだけどね」

 

 いつの間にか、お願いする立場であったはずのカイは、情報(エサ)を持つが故に有利へと昇り。

 挑まれる側だった筈の帆楼は、情報を前にお預けを食らっている犬の立場で。

 全てを疑う『狐疑(こぎ)』の神にして、希望を請う『請希(こぎ)』の神である『誇戯(おもいかね)』の神は、自身の糧となり続ける目の前の少女からの想いと望みの重さを受け止めながら。

 

「【仮定】より【暫定】へ。汝、帆楼相手に勝てるつもりであるか?」

 

 純粋な疑問を、しかしにわかには信じられぬその前提を思わず口にした帆楼に対して、笑顔で返したカイの言葉は僅かに震えていた。

 

「それはやってみてからのお楽しみ……ってね?」

 

 たった一度、不意打ちに搦め手、嵌め手を駆使して依代(よりしろ)である巫女を打ち破った事は、内より確認していたが、今から行う勝負に対して既に帆楼の知らない部分で策を巡らされていれば、いかに相手が人類種(イマニティ)、位階序列最下位で、魔法の検知すら出来ない種族であろうと痛い目を見るのはその身をもって体験済み。

 であるが故に、帆楼は一つ、勝負に乗る前に提案をした。

 

「では勝負の内容を明確にせよ。でなければ判断出来ぬと推測するのじゃ」

 

 どんなイカサマが、(はかりごと)が、策が、そして、協力者が暗躍できるような勝負か晒せ。と。

 現在の帆楼は人類種(イマニティ)に対して、過大でも、過小でもない評価をしているだけに、カイ一人で帆楼を負かすことなど不可能であると確信している。

 つまり、勝負の内容にどこかしらの穴が、例え蟻どころか風が抜ける以外叶わぬような穴であってもあるはずなのだ。

 そうで無ければ、人類種(イマニティ)神霊種(オールドデウス)に勝つなど、およそ逆立ちをしていても無理なのだから。

 帆楼が知らない、かつて続いた(いにしえ)の大戦の終着がそうだったように。

 帆楼と同じ神霊種(オールドデウス)を一柱倒すために、多大な犠牲を払ったように。

 

「んーそうだなー。じゃあ勝負の内容だけ言うね? 要求はまだ言わないよ?」

 

 帆楼としては、ここで渋るようならば勝負を受けないつもりだったが、思いのほかあっさりと内容を公開する申し出を許諾され若干の肩透かしを食らう。

 そして、気を取り直すと同時に確信する。

 既に策は張られた後で、その策を見破られぬ自信があるからこそ、こうして帆楼の要求に応じたことに。

 

「勝負の内容はね――」

 

 そうカイが言葉を発した瞬間、それまでゲームをしていた「  (くうはく)」が。日に当たらぬように隠れていたプラムが。一心不乱にご飯を掻き込んでいたいづなが。いづなにご飯をよそっていたステフが。そして、帆楼とのやりとりに聞き耳を立てていた巫女が。

 帆楼も含めた同じ空間に居るカイ以外の全ての存在が、次にカイの口から発せられる勝負の内容に全神経を集中させていた。

 

「私は、ただ帆楼ちゃんが知らないこと、知りたいことを説明するの。それを、誰かに妨害されたら私の勝ち。逆に、誰からの妨害もさせずに最後まで私の話を聞くことが出来たら帆楼ちゃんの勝ち。……どう?」

 

 そう説明したカイの手が、僅かに力が込められ握られていて。

 あまつさえ微かに震えている事に気が付いたのは、空と巫女だけであった。




というわけで最後に戦うキャラは帆楼でした。
予想が当たった方はどれくらい居るでしょうか。

ある程度本文に沿って書いている事もあり結構数が正解してそうで怖いですが…………。

残りも少なくなってきましたが今後もよろしくお願いします。

帆楼の口調おかしくねーか?等があれば指摘していただけると幸いです。

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