blank page   作:瀧音静

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少し短くなってしまいましたがキリがいいので……。
これで許してつかぁさい。


三歩必殺(ファーストムーブ)

「提案意図が不明。帆楼は勝負を受けるだけで情報が手に入ると申すか?」

「私が話す内容は、ね。帆楼ちゃんが勝てばそれ以外の情報も手に入るよ?」

「……いくつもの前提が分からぬ。勝負の場所は? 環境は? 状況はどうなのじゃ?」

 

 怪訝(けげん)な顔を覗かせた帆楼は不明瞭な勝負の部分をカイへと問いただす。

 それに答えるカイは――。

 

「そこは帆楼ちゃんが決めていいよ? あ、でも、最低でも私が一時間は生きていられる場所って前提がいいかなー」

 

 へらへらと笑いながら、その長さになる内容を説明することを暗に示し、最低限の環境だけは確保しようとした。

 

「構わぬ。――なれば、この城の一室、帆楼とカイの二人のみの空間で行うものとするのじゃ」

 

 別に命を奪おうなどとは帆楼は思っておらず、勝負の場所も何の変哲も無い城の一室で行うことに決めた。

 もちろん、勝負が始まった途端に帆楼の手によって変哲有りまくりの空間に変わるだろうが。

 

「次いで一つ。汝の言う「妨害」とは何か? 明確にするのじゃ」

 

 どんな曲解で、難癖で、屁理屈で。

 勝ちを宣言されてはたまらない、とカイの勝つ手段を浮き彫りにせんと説明を求めた帆楼は……。

 

「無いとは思うが、汝の死を持って勝ち。などは認めぬ。勝者は条件を満たして自らの勝利を高らかに宣言せねば勝利とならぬ、という条件を付け加える」

 

 一方的にルールの追加をするが、カイは笑って受け入れて。

 

「じゃあ私は妨害を受けたら勝ちを宣言すればいいのね? あ、妨害って言うのは「私が説明を継続することが不可能になったら」かな。ひっくるめて言うと」

 

 日陰に歩いて向かい、おもむろにプラムの耳たぶを弄りだしたカイは、満面の笑みで続ける。

 

「私の声が出なくなる。帆楼ちゃんの耳が聞こえなくなる。私の説明の内容が間違って帆楼ちゃんに伝わる。……考えられるのはこのくらいかな?」

 

 プラムの耳を甘噛みし、僅かに震えたプラムの反応を心から楽しみ、他に何かある? と帆楼へと問いかけるカイに、帆楼は黙って首を振る。

 よもや、勝敗の付け方が、相手にイカサマされるか、そのイカサマを防止できるか、という十の盟約をあざ笑うようなこの勝負になろうとは。

 先日まで行っていた、ランダム性を有利に転がした双六ゲームの支配人は、最初からイカサマを宣言する一人の人間を、これまでとは違う感情で見ていた。

 本人が気が付いていない、先が読めない相手に覚えるワクワクするという感情。

 

「では、汝の要求は何か。明確にせよ」

 

 胸の奥の感情に帆楼が気が付かぬまま、僅かに上がった声の張りに気付くのは空のみ。

 頭の中ではどう対策するかを考えながら帆楼はカイに尋ねたが、カイの口から出てきた要求は思わず驚いてしまうもので。

 

「私が勝ったら、テトちゃんの所まで連れて行って欲しいな」

 

 その程度のことを? と思わず不審に思ってしまうものであり。

 

「そ、そのようなこと、適当に呟けば叶うであろ!!?」

 

 わざわざ神霊種(オールドデウス)に頼むようなことでは無かった。

 が、一人だけカイの思惑に気が付いた空は、まさかな。という考えを彼女の行動を観察したパズルのピースとして頭の中で組み立て始める。

 今まで勝ってきた相手を……。

 そして、これから倒す相手を。

 要求を、条件を、全てをピースとしたカイというパズルの全貌として、空が見た結論は果たして……。

 

「私の要求はそれ以外に無いの。さ、帆楼ちゃんの番だよ? 要求をどうぞ~」

「む、むう。……帆楼からの要求は可能な限り帆楼の質問に今後答える事じゃ。何でも答えると(のたま)った自称・空が中々質問に答えてくれぬのじゃ」

 

 空の思考など露知らず、いつも通りの雰囲気で帆楼とやりとりを交わしたカイは、自らの爪で自身の首の血管を僅かに傷つける。

 普段傷つける指の血管とは明らかに違う、太い太い血管であるためにいつも以上の勢いで血が出てくるが、そうした目的などもはや説明不要。

 間髪入れずに首筋に吸い付いたプラムを抱きしめ、頭を撫でながら――。

 

「じゃあ、帆楼ちゃん。移動して、盟約に誓って、勝負といこうか」

 

 名残惜しそうにプラムを離し、振り返ったカイは、ほんの少しだけ。

 いつもより弱々しく、僅かに震えた声で帆楼へと声をかけるのだった。




ツイッターでかみやちゃんせんせーが「プラムの人気が結構あってびびる」的なことを呟いてましたが、ここにこうしてプラムといちゃつく(筈だった)二次創作書いてる阿呆が居る時点でプラムきゅんは魅力で溢れている事は確定的に明らか。

もうすぐ終わりと思うと作者としても思うところがありますが、とりあえずは読者の皆様方に楽しんでいただけるように頑張って行きますのでもう少しだけお付き合いください。

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