blank page   作:瀧音静

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お待たせしました。

蛇足第二話、書き上がりです。


二重処断(ポッドオブデュアリティ)

 カイが帆楼を連れてまず出向いたのは、自分がそれまで寝泊まりしていた部屋。

 空や白達のようにタブレットやゲーム機等の一切を持ち込んでいないカイは、借りた部屋に置くような物は無く、しいて言うならばステフから借りた衣服くらいだろうか。

 最も、ステフほど胸部の成長は著しく無く、その部分のサイズだけが合わない為に、基本的に『ディスボード』に来た時の服装で過ごすことが多かったため、それらもほとんど無いに等しかった。

 

「ここは――自称・カイが過ごしていた部屋か?」

「そだよー。と言っても就寝する以外には特に使ってなかったから、私の持ち物とかは無いんだけどね?」

「であってもこの場所を勝負の場として使うのは却下じゃ」

 

 扉を開け、部屋の中に入らぬように中を見渡した帆楼は、そう言ってあっさりと別の部屋へ。

 例え帆楼で無くても、勝負の場所をけしかけてきた本人が過ごしてきた部屋にするのはこの世界にはもはや居ないであろう。

 カイの過ごす部屋の両隣も、どんな仕掛けがあるかは分からない。

 かといって遠くの部屋を指定すれば、それはそれで読まれてそうである。

 そう考えた帆楼が決めた勝負の場所は――。

 

「なればあそこがよい。ほれ……大浴場じゃ」

 

 およそ勝負をする場所とはほど遠い、裸の付き合いを行い親睦を深める為の場として使われていたソコに、工作の手は届いてはいない筈。

 そう考えた帆楼に従い、大浴場までやってきたカイは、最終確認、と帆楼へと声をかける。

 

「勝負の場所はここでいいんだね? 帆楼ちゃん」

「構わぬ」

 

 湯に浸かる訳では無いため、濡れないように靴下だけを脱いで浴室へと入るカイ。

 その後を、裸足の御御足(おみあし)のまま続く帆楼。

 

「勝負の内容は妨害の排除。私がこれからする説明を、最後まで聞くことが出来れば帆楼ちゃんの勝ち」

「途中で説明続行不可の状況、あるいは説明と異のある内容で帆楼に伝わることがあれば帆楼の負け」

「勝者は条件達成後に、自ら勝利宣言をしなければならない――でいいんだね?」

「左様じゃ」

 

 浴槽のすぐそばまで歩いたカイは、振り返って帆楼と向き合って。

 ゆっくりと右手を構え、帆楼に促す。

 

「じゃあ、盟約に誓って」

「うむ。盟約に誓って」

 

「「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」」

 

 二人共に納得した、盟約に誓った絶対遵守の賭け。

 帆楼にとっては種の駒を賭けていないため余興にしか過ぎず、カイにしてみればテトに会うための勝負であるが、何も帆楼に勝たずともテトに会うことなど可能な筈。

 けれどもこうして勝負として成り立つのは、やはりカイの持つ「情報」の有用性が高いためであろう。

 故に、その情報を手に入れるために、帆楼は出し惜しみせずに神霊種の力(公式チート)を振るう。

 魔法が感知出来ない人間には到底気付かれず、勝負を始めた条件である、「二人きりの空間」を維持するためのそれは、後にデタラメである筈のジブリールのプライドを砕く、空間断絶の魔法。

 ジブリールのように筒状で、前後から丸見えでは無く、箱状にこの大浴場を切り取って隔離する、文字通り周囲から断絶させる魔法。

 予備動作も、呪文も、素振りも要らず。

 人類種(イマニティ)では反応すらも出来ないような短い時間、須臾(しゅゆ)と表現される、単位にして十のマイナス十五乗という時間の内にこの行動を終えた帆楼は、そのすぐ後に口を開いたカイの言葉に、聞き漏らすまいと気を張った。

 なにせ、これから語られるのは、帆楼が知ることが出来なかった情報であるはずなのだから。

 

「これはね? ()()()()()()()()()()なの」

 

 けれども、帆楼の耳にはこれ以降の説明は入ってこなかった。

 確かに断絶はしたし、こちらの不正がばれた様子は無い。

 そもそも不正することなど向こうは容認するような条件であったし、何より勝利条件に据えた、勝利の宣言はカイの口から出てきてはいない。

 ――いや、仮に宣言していたとしてもそれは帆楼の耳に届くことは無いだろう。

 何故なら――空間断絶された筈の大浴場から、()()()()()()()消えていたのだから。

 

 

「あ、やっぱり? 思った通りだったー」

 

 姿が消えたカイが今どこにいるか。

 それはこの世界、『ディスボード』に存在するチェスの駒。

 その一つの天辺に、チェス盤を挟むようにして唯一神(テト)と向かい合っていたのだ。

 テトの手には星杯(スーニアスター)が握られており、その力を行使したことを物語っていた。

 

「君は、どういうつもりだい?」

 

 気温が下がるような威圧感を持ってそう聞いたテトは、誰がどう見ても怒っているのは明白で。

 

「どうって……。勝負に勝つために利用できるものは利用しただけだけど?」

 

 それを挑発するように、分かっている癖に、とカイは(とぼ)けた。

 もちろんそれに納得しないテトなのだが、そもそもこのカイという少女に利用された、という事実がとてつもなく悔しく。

 結果、声を荒げることも、今までの態度を崩すことも、彼女の思い通りに行動してしまったという事実を裏付けるだけだと理解して、これまで通りの態度で接する。

 

「僕が動く確証があった。と?」

「じゃないと帆楼ちゃんに勝負挑むなんてムリムリムリムリ」

「参ったね、本当に色々知られているみたいだ」

 

 困ったよ、とでも言いたげに手を広げたテトはカイに向かって一つの提案をする。

 

「僕と勝負しないかな?」

 

 と。




流石にこの展開読めてたぜヒャッハー! 何て人はいないと信じたい。
いや、居ていいんですけどそんな人は早くノゲラの二次書いて、どうぞ。

と言うことで終わりが近づいてきていますが残り少し、お付き合いくださいませ。
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