blank page   作:瀧音静

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こんなに間隔短く投稿したのは久しぶりな気がする……。
ま、エタるよりはいいから多少はね?


一寸先闇(トリプルスコア)

「空! 自称・空よ!」

 

 先ほどカイと共に「盟約に誓った賭け」を行うために部屋を出た帆楼は、空の名を呼びながら城の廊下を走っていた。

 勝負の最中にカイが消え、どこを探しても見つからない、とひとしきり城を駆け回った後に同じ人類種(イマニティ)ならば、と空の元へと向かったのだ。

 

「ん? どったの?」

「帆楼が……慌てて、る?」

 

 二人の勝負の行方など興味も無い、と一つのゲーム機を二人でプレイしていた『  (くうはく)』は、まず先に勝負の結果では無く帆楼が慌てている事実を指摘する。

 

「帆楼との勝負の最中にあやつが居なくなったのじゃ! 勝利条件すら達成せずに! 忽然(こつぜん)と! 心当たりは無いか!?」

 

 初めて勝負最中に放置されたという事実に、瞳を潤ませながらそう『  (くうはく)』へと問うた帆楼に返って来たのは、目の前の空と白からでは無く脇にいたステフからの返答。

 

「そもそも……誰と戦って居たのですの?」

 

 嘘でもからかいでも無い様子で首を捻る彼女に猛然と反論をしようとした時に、言いようのない感情が胸の中に蠢いて――。

 

「帆楼は……、帆楼は――()()()()()()()のじゃ!?」

 

 

 帆楼が愕然とする少し前。

 この世界の唯一神(テト)に思惑通りに呼び出されていたカイは、そのテトからの勝負を受けた。

 

「勝負の方法はただのチェス。これだけが条件」

「この前みたいに特殊なチェスじゃ無くていいのかい?」

 

 淡々と言ったカイに対して、誘うように笑いながら問いかけるテトはチェスの駒、黒のキングを(もてあそ)びながら言葉を紡ぐ。

 

「まさか、ただのチェスなら僕に勝てると?」

 

 表面はとても楽しそうに、内面は心底つまらなさそうに。

 二つの顔を均等に隠し、故に両方の表情が見て取れるテトは、普段らしからぬ態度を未だ続けるカイに不信感を抱き始めていた。

 静かすぎる――、そして何より、弱気すぎる。

 テトと勝負をする時はもちろんのこと、この世界に来てからも彼女が勝負をする場でこれほどまでに黙っていたことがあったであろうか。

 不信は疑念へ。疑念からそして――恐怖へ。

 

「テトちゃんは、さ」

 

 唐突に自分へ向けて語り出したカイの顔を反射的に見ると――。

 そこにはまるで、精一杯に取り繕って笑顔を作っているような女性が……居た。

 

「実は私のこと、ずっと警戒してたんでしょ?」

 

 今更何を言うのか。

 自身の敵となる可能性のある相手に、警戒などしない方がおかしい。

 

「けど、無害そうだから泳がせてた」

 

 例えどんなに彼女が餌としてこの世界の情報を吊しても。

 この世界で、彼女の知識を以てすれば勝てない相手などごく僅か。

 そう思って監視するだけに留めておいた存在は――しかし。

 

「けど、テトちゃんの予想に反して、私は大きな情報を無償で与えようとした」

 

 先の帆楼と呼ばれている神霊種(オールドデウス)との戦いは、確かにテトの予想の範疇(はんちゅう)を超えた。

 

「しかもそれが、テトちゃんの……引いては今のこの『ディスボード』という世界そのものに関する情報だった」

 

 誰にも語られない物語。

 テトがそう前置きして語ったのは、一人の獣人種(ワービースト)の少女に対してのみ。

 では果たして、このカイという少女が語ろうとした内容は、そもそもそれと同じ内容なのだろうか。

 テトが意図的に曲げた、伝えなかった部分を、彼女が知らないという保証は?

 それ以上に、この世界のことを「読んだ」と言った彼女は、果たして本当にこの世界に影響をもたらさない存在なのか。

 遙か空から観察し、自問自答を繰り返した唯一神は、たった今、その答えを出した。

 

「結果、私はこの世界に、やはり来るべきでは無かった存在として認識され、これから送り返される……違う?」

 

 見れば腕は震え、顔はもはや笑顔の形を保っては居ない。

 泣き顔になってない点を上げるとすれば、それは涙を流しているか否か。という部分のみだろう。

 

「この勝負は最終選択。勝てば生き残り、負ければ強制送還……でしょ?」

 

 そうなる筈だった……そう要求させるはずだった勝負は、たった今崩れ去った。

 何故ならテトは知っているからだ。

 目の前の泣き顔寸前の彼女がこうして問いかける時は、決まって何かを否定する時で。

 その否定の矛先がどう考えても彼女の要求する内容に向いている事を。

 

「そうだね。そのつもりだったよ。――じゃあ、カイ。聞かせてくれるかい? 君の要求とやらを」

 

 その一言を待っていたと言わんばかりに、大きな雫を瞳から垂らした少女は――。

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()!!」

 

 要求を口にして、盟約に誓った勝負を受けた。

 

■■■

 

 日差しは厚手のカーテンに遮られ、すでに日は高いというのに暗い部屋の中で、布団にくるまり何やらモゾモゾと動く影が一つ。

 耳元で震えるマナーモードのスマフォを布団から顔も出さずに手探りで探し、見つければすぐさま布団の中へと引き釣り込む。

 どうやら友人からの連絡だったようで、布団の中で何やら通話を始めた。

 

「すっごいネタなんだって! ……あ~、信じてないなぁ? よぅし、絶対に面白いって言わせてやるんだから!」

 

 通話故に片方の音声しか聞こえないが、どうやら何かのネタで友人を唸らせる腹づもりらしい。

 直後、布団から跳ね起きてボサボサの頭を掻きながらパソコンに向かった少女は、ふと、姿見の前で立ち止まり、着ていた寝間着を少しはだけて首筋を確認する。

 首の血管に重なるように、僅かなキスマークを確認し、鼻歌交じりにパソコンに向かう少女――「皆夢(かいむ)」は、とりあえず記録として、そのキスマークを自撮りでスマフォのデータに保存するのだった。

 




さぁ、と言うわけであからさまに終わりが近い雰囲気を醸し出していますが、残すはエピローグのみでございます。

特に自分から言うことは無く、ただただここまでお付き合い頂いた感謝以外の言葉はありません。

積もる話があるかは分かりませんが、それは次話のエピローグの後書きに取っておくことにいたしまして、この場は閉じさせて頂きます。

ここまで来たのでエピローグも近いうちに必ず投稿するので、どうか最後までお付き合い下さいませ。
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