blank page   作:瀧音静

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提案者(プロポーネント)

「ふふ、さてーー彼らとは出会ったけど、ここからどうなるのかな? 楽しみだね。ーーそうだ、暇潰しにエルキアに行ってみるのもいいかもしれないね」

 

 ディスボードにそびえ立つチェスの駒を()した塔。その上に座り地上を見つめながら、唯一神テトはそれまで(つづ)っていた物語とは別の物語を記す為、筆ペンを走らせる。

 

 まっさらな(b)(l)(a)(n)(k)( )(p)(a)(g)(e)、そこにどんな展開が記されることになるのか、とテトは一人心を踊らせる。

 

 この後、人類種(イマニティ)の姿となり、エルキアに(おもむ)いたテトが、力尽きて初瀬いづなに発見されるのは、もうしばらく後の話である。

 

 

「ん。えぇと……?」

 

 『  (くうはく)』達がそんなやり取りを行っていると――ようやくテーブルの上に横たわった女性が上体を起こす。

 

 一気に警戒を強める三人をよそに、その女性は辺りを見回してーー

 

「あ、ここジブリールのところか」

 

 と一人納得したーー瞬間である。

音も無く、風すら発生させず、目にもとまらぬ速度でその女性へ接近したジブリールは、かつての大戦以来となる出番を虚空より取り出した鎌に与えた。

 

 脅しの為に、どうせ盟約により殺傷行為が出来無い故に、かなりの勢いで彼女の首へと鎌を沿わせる。

 

 しかしーージブリールの予想を裏切り、手に伝わるのは首の皮を切り裂く僅かな感触で。慌てて鎌を引けばうっすらと刃に赤い色が広がっていく。

 

 首の皮を切り裂かれ、血を流しながらもまるで動じない女性へ向けて空が声を掛ける。

 

「大丈夫か? 悪いね、うちの従者が傷付けちゃって」

 

 悪気が有るならもう少し慌てるのであろうが、そもそも血を流しているということは一度受け入れた、ということで。

あのまま殺されることすら構わなかったと覚悟を決めた証であり、

 

(何者だよ、こいつ)

 

 それらを踏まえて空の思考の中で、かなりの要注意人物へと位置付けられた。

 

「ジブリール……止血……する……の」

 

 怪我をさせた相手そっちのけで思考に意識を落とす兄に代わり、白がジブリールに手当てを命じて、

 

「かしこまりました」

 

 恐る恐る女性の首筋に指を()わせ、傷を塞いでいくと。

 

「んぅ……」

 

 と何やら(つや)のある吐息が漏れて、

 

「そういえば、先程触らせていただきました時は首筋の反応がよろしゅうございましたね」

 

 とのジブリールの言葉を聞いて、空は思考を放り出して女性を凝視する。

 

「兄……その反応……童貞臭い……」

「そりゃ童貞だからな! つか女性のあんな声聞いたら童貞だろうが非童貞だろうが男なら反応するわ!!」

「きゃー、の◯たさんのエッチー」

「んな棒読みで言われても……。ーーんで? あんた誰?」

「私? 皆夢って言うの。カイって呼んで、空と白」

 

 何気無い、ただ知っているから呼んだ二人の名前。

しかし、自己紹介どころか面識すら正真正銘今日が初めての顔合わせ。

当然警戒は更に強まる訳でーー。

 

「さっきからさ、俺らの事知ってるみたいだが? どこで知ったよ? そら俺らは全権代理者で有名だろうがーーこの図書館がジブリールのものってのはどこ情報だ?」

「ついでに……ドラ◯もんネタ……、本当に……異世界人……?」

 

 兄妹二人からの質問に、カイは、んー。と唇に人差し指を押し付け首を傾げてーー

 

「ゲームをしよう。って言ったら……怒る?」

「内容によるな。後は賭けるものにもよる」

「だよねー。私が勝ったらーー私の説明を信頼を持って信じて欲しい」

 

 今ここで仮に自分の状況を説明したとして、この『  (くうはく)』は自分の事を他国のスパイだと疑っているに違いない。

それを解くには、盟約に頼るのが一番だ、とカイは判断した。

 

「んならこっちが勝ったら、俺らの質問に答えてくれ」

 

 あっさりカイの要求を飲んだ空が相手に突きつけた要求。

それは、

 

「空得意の含みすぎた要求ね。質問の数、質問する場所や時間、果ては内容全てに触れずに質問に答えろ、か」

 

 今まで散々使ってきた空の常套手段であった。

それを踏まえて、

 

「了解、お互いの要求はそれでいいわ」

 

とカイは了承した。

 

 (本気で何考えてんだこいつーー、敗け無い自信の現れか? それとも……)

 

 既に勝負は始まっている、と思考を巡らせる空の代わりに、白がカイへと質問する。

 

「勝負内容……決めて……無い。……何で……勝負する?」

「内容はこっちが決めていい? ……ですか?」

「何で急に敬語になるよ?」

「そういえば二人は国王と女王だったのを思いだしまして……ご無礼をお許しください」

「いいよタメ語で。つか俺らより年上っしょ? 俺らは身分が高い。カイは年齢が上、お互いタメ語の無礼講って事で」

「うん、知ってた。そんな反応してくれるって」

「知られてる、ってのは滅茶苦茶やりにくいな……。ま、いいか」

 

 少しニヤケながら頭を掻く空。

 

「好きな勝負ぶつけて来いよ。知ってるだろうが『  (くうはく)』に敗北の二文字はねーぜ?」

「ねー……ぜ」

 

 そして、空と並んで仲良く親指を立てて手を突きだした白。

その二人を微笑ましく思い、こちらも思わずニヤケたカイは、

 

「変則ブラックジャック、なんていかが?」

 

 と、イカサマを仕込んでなおそのイカサマを利用されてステフが負けたゲームを。

特殊なルールに変えて提案したのだった。

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