・ディーラーは存在せず親がトランプをシャッフルし裏向きのまま上から2枚を場に置く。
・親が先に4~20までの数字を1つ宣言する。その後、子が4~21までの数字を1つ宣言する。
・お互いにポイント初期値は50とする。
・両者宣言を終えた後、伏せられたトランプを表向きにし2枚のトランプの数字の合計と宣言した数字の差分、お互いにポイントを失う。
・数字の数え方はブラックジャックと同じとする。ただし、Aに関しては11固定とする。(10~13に関しては全て10とする)
・親は一回毎に交代する。
・全ての処理は親から行うものとする。
・場に出たカードの合計が21であり、かつ子が21を宣言していた場合、親は数字の差分とは別に、その時の子が、それまでに失ったポイント分をさらに失う。
・ポイントを全て失った場合、敗北とする。また、トランプを全て使いきった場合、その時の残ポイントの多い方を勝ちとする。
以上がカイの提案した変則ブラックジャックなるゲームのルールだった。
1つ1つをタブレットにメモしながら空が尋ねる。
「これトランプ何組使うの? ベガスとかと同じ4組?」
「そんなに使うとシャッフルが大変でしょ? 1組だよ」
「1組? ……シャッフルのやり方は?」
「決めてないからお好きにどうぞ。リフル・ヒンズー・ディールお好きなのを使うといいよ」
「ーーこれ引き分け多発しね? お互いに同じ数字言い合えば引き分けっしょ?」
ルールを読みながら最初に浮かんだ疑問。しかし自己解決済みの事をあえて問うてみる空。
「分かってるくせに。全ての処理を親から行い、ポイントが無くなった時点で敗け。つまり、その時親の方が敗け。そんな博打に持っていきたいならどうぞ」
「その言い方だとこのゲームは博打じゃないとでも言いたげだな」
「あなた達が博打に
「ほんとに……よく、知られて……る」
「マスター、トランプが3組しか見当たりませんでしたが足りますでしょうか?」
空が自分の思考が間違いでは無いことを確認し終えたところで、丁度よく城にトランプを取りに行っていたジブリールが戻ってきた。
「サンキュー、ジブリール」
「褒めて……つかわす」
「あぁ、勿体なきお言葉」
ジブリールが抱いて持ってきたトランプを1組、適当に抜き出した空はそれをカイへと放り投げる。
「知ってるよな? 俺と白は2人で1人の『
「あったり前じゃーん。もとよりそのつもり」
放り投げられたトランプを受け取り、何を今更。との反応を示すカイに、
「舐め……られてる?」
「さぁな? ただ、面白そうじゃん」
一瞬不機嫌になる白を抱き抱え、椅子に座った空は、白を膝の上に座らせて待機。
トランプを受け取ったカイはそれをテーブルの上にぶちまけて、ぐちゃぐちゃに混ぜ始める。
「親はカイに譲ろうか。『
「えっ!? てっきりコイントスでもするかと思ったのに」
「おいおい、忘れてねーか? 『
「親くらい……くれてやる……の」
まだ若干不機嫌な白が空の言葉を引き継いで、面白く無さそうに言う。
「んじゃーールールの確認、賭けの内容が決まったところで」
「そういやまだだったね」
「「『
盟約に誓った勝負となった変則ブラックジャックなるゲーム。
その戦いがようやく始まった。
混ぜていたトランプを揃えたカイは、
手品師が、トランプ自体に不正が無いことを示すように、全ての数字とマークが確認できるように。
「ほー、見事なもんだ。なに? 手品師にでもなりたかったの?」
「忘年会や新年会なんかでね、よく余興を頼まれたのさ。その時に身につけた」
本来シャッフルする為に必要な手順ではないそれは、目的は明白。
カードの並びを覚えること。
しかし、当然空の膝の上の白もそれを行えるのであり、カイが再びトランプを裏返す頃には白は大きく頷いた。
その後特にカイの動きに不自然な所はなく、ごく一般的なシャッフルを丁寧に行って、上から2枚、裏向きでテーブルに置き、
「15」
と口にした。
対して空も、
「15」
と宣言し、表にすれば当然15。スペードの9とダイヤの6であった。
(さっきの並びと変わって無い? あんだけシャッフルしたのにか? ーーなるほど、つまり入れ換えないシャッフルなのか)
(なーんて、流石に気付かれてるよねー)
早々に相手の用いた手を看破した空と、看破された事を悟ったカイ。
空へとトランプの山を渡し、空がどんな行動を取るかをやや期待したカイであったが。
ごく普通にシャッフルし、ごく普通にトランプを伏せ、ごく普通に
「5」
と宣言した。
(ん? 動き無し? それは意外なんだけど……)
僅かに戸惑うも、別に親に合わせない理由は無いカイも、
「5」
と宣言。
結果はハートの2とダイヤの3で、当然の如く二人ともポイント消失無し。
それからはしばらくお互いに数字を当て続け、ポイントの変動が無いままトランプを消費していく。
変化が起きたのは、空が親の時。
「15」
との宣言を聞いたカイは、僅かに動揺し、息を飲む。
(あれ? ここは13のはずじゃあ? ーーってそんなの
コールドリーディングが得意と言っていた空が、今の自分の反応を見逃したとは思えない。また、自分の記憶していた数字から離れた今回の数字の事を踏まえて、自分が敗北に向けて走り始めていることをこの時点でカイは理解した。そう、理解しながらも、
(だからって、諦める訳にはいかんでしょうよ!)
と、目の前に居る2次元故に許されていた最強のゲーマー相手に、悪あがきと知りながらも最後までやれることをやる。と強く心に誓うのだった。