blank page   作:瀧音静

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質問開始(リスタート)

 ひざの上で静かに眠る自らの片割れを起こさぬ様に、やや声のトーンを落としながら。

空は盟約によって手に入れたカイへの質問を行い始める。

 

「んじゃまずはさしあたって――、どーして俺らの事を知り得たのかなー?」

「『  (くうはく)』の事なんて有名よ? それこそ都市伝説になるくらいには」

「へぇー。そうかい。んで? 何で()()()()()()()()  (くうはく)』と理解したよ? 容姿の話はおろか日本在住以外の情報は無かった筈だ」

「それに、マスターが指摘いたしました。この図書館を私の場所だと言われた事も聞いておきませんと」

 

 横から口を挟んだジブリールだったが、その質問の内容は空が後で聞く予定だったもの。

特に(とが)めず、回答を待つように4つの目がカイを見据えるが――。

 

「そんなの、読んだから。あ、でも訂正させて? この図書館、どころかジブリールの全ては『  (くうはく)』のものになってる筈だから、この図書館も二人のものよね?」

 

 まるで軽口でも叩くように、暇そうに爪を弄りながら言うカイは、ため息を小さくついた。

 

「そんな質問じゃなくてさ。もっと直球名質問にすればいいんじゃない? 例えば……そうね。どこの種族のスパイだ? とか?」

 

 ため息をついて続けた言葉の真意が分からず、思考をフル回転させる空は。

たとえ誘導だろうが、どんな目論見があろうがその質問をせざるを得ないと分かり、

 

「んじゃ、お望み通りといこうか。あんた、いったいどこの間者よ?」

 

 と聞いた。

 

「それに対しての回答は、空や白ちゃん。『  (くうはく)』と一緒。と答えるわ」

「なーるほど♪ んじゃ、具体的に聞きたい事として――()()()ってのはどういう意味だ」

「そのまんまの意味。えぇと、次元が違うって言えばいい?」

 

 この回答を聞いたとき、空とジブリール。両者の反応はまるで違った。

両手で目を覆い、頭を振り回す空と。カイから発せられる言葉を聞き漏らさずにメモしようと涎を垂らしながら羽ペンを持つジブリール。

 

 両者共に、同じ思考に辿り着いたゆえのこの反応は。

 

「え? 何? 俺らってもしかして、カイの世界だと2次元なわけ? りありぃー?」

「ライトノベル小説、及び漫画とアニメ。あ、映画にもなってるよ?」

「マジかよ冗談だろああけど納得いったわだからみんな女の子が超絶美少女で属性もりもりで被りキャラがいないんですねそうですねて言うか何カイは2次元来れたの何それ羨ましいから俺も2次元行きたいってそうかここがすでに2次元かてことは俺はオタクの長年の夢である2次元に生きるを達成してるのかわーい」

 

 一息でそこまで噛まずにペラペラ捲くし立てた空は大きく息継ぎをして、

 

「んなわけあるかっ!!! だったら、だったら何でっ!! 俺のハーレムルートに突入しない!?」

「にぃ……そんなの、決まってる。……白達、主人公じゃ……無い……から」

「じゃあ他に誰がいやがる!! 俺らを差し置いて主人公しやがってるやつは!?」

「……唯一神(テト)様……とか?」

 

 兄のハーレムルートなる発言に目を覚ました『  (くうはく)』の小さな片割れは、嘆く兄を慰めるどころか追い討ちを仕掛け。

血の涙を流す空に対し、しかしカイは。

 

「ん? 主人公は『  (くうはく)』だったよ? それにハーレムルート? それもうはいt

「カイ、……シャラ……ップ」

 

 何かを言いかけて白にその口を押さえつけられる。

兄の膝の上に居たはずの、さっきまで頭を回転させていたはずの小さな存在は、しかし。

兄が押さえつけることすらかなわず、カイが避ける事すら適わぬ速度でそれを行った。

 

「えーっと――、白さん? 何で誰にも反応出来ない速度でそんな事してまして?」

 

 ジブリールさえもが驚愕し、目を丸くする中、白はカイにこう耳打ちする。

 

「にぃを……狙って……る?」

 

 と。心底怯えるように。自分らが2次元の存在なら、この自分の、兄、空への想いも知られているであろう存在へと問う。

 

 すなわちライバル(とも)か? 仲間(とも)か? と。

これに対し、カイもまた、耳打ちで返す。盟約により従わざるを得ない質問への回答を。

 

「安心して、白ちゃん。私の狙いは別のキャラだから♪」

 

 白に自分は味方だと認識させる言葉を、カイはさらに続ける。

 

「そして、よく聞いて。近い将来、あらゆる問題を解決して空に既成事実を迫るチャンスが来るから、絶対に逃さないで。ジブリールの妨害が必ずあるから、この場面か? と思い当たったら、とりあえずジブリールに待機命令を出しなさい」

 

 全てを聞いて、目を輝かせて満面の笑みでカイを味方だと認識し、握手を求めた白。

そんな妹の姿を見てショックを一人受ける空は、

 

「いや、待てよ。あんな対人恐怖症の白が!? ほんの一言、二言聞いただけでそんな懐くか!? 何吹き込みやがったっ!?」

「にぃの……、貞操……の……事。……にぃには……関係……無い、の」

「大有りだろうがっ! むしろ当事者だぞマイシスター! おら、カイ! 妹に何吹き込みやがったっつってんだよ! 質問に答えやがれ!!」

 

 何故か自分の事なのに除け者にされた悲しき男(そら)は、白に囁いたカイの言葉を探ろうとするが――、

 

「2人にとって大事な話♪ 焦り過ぎかなー、空。具体的内容まで指定しないとこうやって回避されちゃうよー?」

 

 どう答えても盟約違反にならない様な質問に、笑顔と適当な答えを空に送って、『blank(くうはく)』は。

瞳の奥に怪しい光を宿して、次の質問を待ちわびるのだった。

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