空が次の質問を決めあぐねている時である。
不意に、小さな空気の移動する音が辺りに響いた。
「お腹……すいた」
「む? 確かにそうだな。一旦城に戻ってステフに飯作って貰うか。ジブリール、送ってくれ」
「かしこまりました。――マスター? この方もご一緒でよろしいので?」
「ああ。大事なお客さんだ。一緒に城に頼むわ」
了解しました。とジブリールは言って、空間を跳躍する準備に入り。
カイは、初めての体験となる空間跳躍に胸を躍らせながら、白を抱えて空の元へと歩み寄った。
▽
エルキア王国、エルキア王城。
山のように積まれた書類とそれを捌いていく2人の姿。
1人は『
空達が投げ出した王政を恐るべき手腕でこなす――、こなす事を強要されている悲しき存在。
もう一人は『
彼らの全権代理者である巫女から、「エルキアの
手だけは機敏に動いてはいるが、表情や後ろ姿は悲しいかな
それだけ気が滅入るくらいには仕事を続けているらしかった。
隣に居るのに会話すらなく。もはや修行や苦行の類に近いソレをこなしている時に。不意に。
「お~す。ステフやってっか~?」
「お腹……すいたから……ご飯、作って」
2人をこの地獄へと叩き落した人類最強のゲーマーが二人の背後に現れた。
「てめぇ! このハゲザル!! のこのこ手伝いもせずにどこかに行きくさりやがって!! 戻ってきて開口一番腹減っただぁっ!? 飢え死にでもしときやがれぇ!!」
先に怒鳴ったのはいのの方。
『
が。いのの予想とは裏腹に、彼の目に入ったのは見知らぬ女性。
「じーさん。初対面の女性にハゲザルだの飢え死にしとけだの。男としてどうかと思うぞ?」
「口……悪いの……自業……自得」
その女性の背後から、笑いを堪え、声を僅かに震わせながら、いのを煽る『
「いのさん初めましてー。カイって呼んでくださーい。どうせこの二人が内政しないから苦労してるんでしょ? 私は気にしないから頑張ってくださいねー」
「おぉ、本当に申し訳ありませんな。あのハゲザル共と同じ扱いにしようとしてしまいそうになった事、心から謝罪致しますぞ」
「ちょ、空!? いきなりどこかに行ったと思ったらどなたですのこの方?」
遅れながらステフが振り向いてカイを確認し、当然の疑問を空にぶつける。
「図書館に落ちて来たカイだ。どうせテトの仕業だろ? 俺らがゲームに勝って、質問権は得てる。何か聞きたい事あれば聞くぞ?」
「というわけで紹介に預かりましたカイでーす。一応テトは倒したけど、不意打ちも甚だしい勝ちだったから次は絶対に勝てないと断言しときまーす」
「さらりとおっしゃられておりますが、唯一神を下している時点で只者ではありませんな。外交官としてここは一つ、身体検査を要求しますぞ」
「じいさん寝てない身体で大変だろ? 俺も手伝うぞ」
ゆらりと立ち上がってカイに寄って行くいの。
しかし、
「じぃじ、何しようとしてやがる。です」
可愛い孫娘の声を聞いて、その動きが止まる。
「いづな。――どうしましたかな?」
「腹減ったから城うろついてたら、空達の匂いした、です。だから来たらじぃじが女ににじり寄ってた、です」
プンスカと頬を膨らませ、いのの前に立ち塞がるいづな。
そのいづなを神速の速さで空達はもふっているのだが……当のいづなは顔だけを破顔させて体勢は変えずに続けて言う。
「オーシェンドの時、じぃじ、大変な目にあった、です。その女癖、いい加減改めろや、です」
先の件でいのの身を誰よりも案じたいづなだからこそ、いのにそう告げた。
もっと節度をもって行動しろ、と。
「とりあえずステフ、飯。マジで飯。俺ら空腹過ぎて風で飛ばされそうだわ」
「40秒で……支度、しな」
「随分と身勝手ですわね! 何様ですの!? って王様でしたわね!」
分かりましたわよ! と空に怒鳴り声を浴びせ、厨房へと向かうステフを見送った一同は、ご飯が出来上がるまで、しばし待機することになった。
▽
「ふぃ~美味かった。ごっそさん」
「美味し……かった。ステフ……褒めて……つかわす」
「お粗末さまでしたわ。それで? このカイさんは一体何しに来られたんですの?」
「ステ公、いづなのメシはまだ終了してねー、です」
「あ、はいおかわりですわね。……まさかテト様がまた『
「それは無いかなー。私そこまで強くないし」
そうカイが行った時、ふとステフの頭にある考えがよぎる。
「ではカイさん? わたくしと勝負していただけません?」
「そっちの要求は内政を手伝えって所かな? いいよ『
口にしてすぐ、ステフの意図を呼んだカイはあっさりと盟約に誓った。
「勝負方法は
「構いませんわ。『
ステフも盟約に誓い、いざ! と言う時に空がため息をついた。
「なぁ、ステフ。お前いつになったら人を疑う事を覚えんの?」
「にぃ、今のは……カイの……運び方が……上手かった」
「な、何の事ですの?」
「お前さ、自分の要求だけしか宣言されてないのに言われなきゃ気付けないの?」
「ステフは……腐っても……ステフ」
「腐っていませんわよ失礼ですわね! って、そう言えば相手からの要求を聞いてない……」
ステフ本人とカイ以外の全員がため息をついて、悲しそうな目でステフを見る。
「ち、違いますわ!こ、これは――そ、そう! 寝てない事と内政の疲労で注意力が散漫になっただけで――」
「んなら次から貴族たちはこんな風にお前が弱ったタイミングで勝負を挑む事だろうよ」
「まぁまぁ、あんまりステフちゃんをイジメないでよ。期待の表われなのは分かるけどさ」
「そ、それで!? 貴方の要求は何ですの!?」
「私が勝ったらー、『