「な、なんだ。そんな事ならお安い御用ですわよ」
空としたじゃんけんの時のように、突拍子も無い要求をされる事を覚悟していたステフは、ホっと胸を撫で下ろす。
「さぁ、それでは勝負ですわ。――空? どうして肩を震わせていますの?」
「だってwステフがww気が付いてないんだものwww」
「ステフ……マジ……お疲れ? この後……すぐ……寝る?」
何とか笑いをこらえようとする空と、本気でステフの体の心配をする白の考えが分からないステフは、そのモヤモヤをカイへとぶつける。
「あなた!? まさか何か罠を張っていますわね!?」
「罠? んー、まぁ罠っちゃ罠だけど」
「そんなの不正行為ですわ! 盟約その8、ゲーム中の不正発覚は敗北ですわよ! 知らないとは言わせませんわ!」
「ドーラ公、お気を確かに。ゲームはまだ始まっておりませぬ。それに、恐らくはカイ殿の言う罠とは彼女の要求の事ですぞ」
「へ? 要求……?」
キョトン。といのからなだめられ、一度落ち着いたステフはカイの要求を頭の中で2度3度復唱するが――。
「どこに罠がございますの? ただ読み書きを教えて欲しいと言っているだけでは……」
「んじゃステフ。お前の要求は?」
「働かない王様と女王様のせいで、死ぬ気で捌いてる内政のお仕事をこなす人手が欲しいからと、お仕事のお手伝いですわ」
「そ。んじゃそのお手伝いってさ。
「へ?」
「カイの……要求。つまり……今は……読み書き……出来ない事を……表す」
「そんな状態のカイが手伝える仕事ってなんだ?」
「あ、あれ?」
ようやく頭の中が整理出来たのか困惑し始めるステフをよそに、『
「そんな足手まといにしかならないやつまで仕事を手伝わせるか? どう考えても無駄だよなぁ?」
「そして……もし……ステフが……勝っても、カイは……読み書き教わるの……拒む」
「自分の勝利した報酬に定めてんだ。負けたのに報酬を受け取るなんざ、俺等からしたら屈辱さ」
「その報酬を……相手に負けて貰う……材料に……する。……カイ、にぃに似て……少し……ウザイ」
「ウザイは酷いなー。弱者が勝つ為に知恵は、思考は必須。例え何をどう悪用しようが、十の盟約の範囲内だから勘弁して欲しいかなー」
「その通りだ妹よ。決められたルールの
口を尖らせながら言うカイと、何を言うか。とカイに乗っかり白へと言う空。
この場に居た『
この世界、ディスボードの大前提。十の盟約すらも「悪用」すると言ってのけた序列最下位の種族の全権代理者達。何故彼らが今まで負けて来なかったか、僅かに理解した気がしたのだ。
「にしても、なるほどな。要求で相手の勝ちを縛るのか。鮮やかに決まるのを見ると大したもんだ。どうやって思いついた?」
「自然に? コン〇イ語とか習得してるとその辺強くなるんだよねー」
「あれ理不尽過ぎる難解言語だぞ!? しかもその都度その都度公式が意見変えやがるし! あれ習得してるとかどんだけやべーんだよ!」
「空、コ〇マイ語ってなんだ、です」
「
すでに終わった勝負に興味を無くした空は、今度はカイの思考を掘り下げる方に力を入れる。
ほとんど皆が興味を無くした中で、負けるしかないステフはひっそり涙を流しながら、最初のゲームで全BETし、21を超えるまでヒットを繰り返し、清々しいまでの八百長で敗北した。
*
「つまりこの文字からこの文字までを先に読んで、その後ここに戻ってくるんですわ」
「なるほど。……こっちの文字は?」
「それは数字ですわ。数字の場合は――」
ステフの部屋。
そこでマンツーマンでカイに
「もしかして、これわたくしの休憩も兼ねてますの?」
「ん? あー、そう思っちゃう?」
「あれ? 違いました?」
「まー、こんを詰め過ぎないように。というか息抜きしないとまずいんじゃないかなーと思ったりはしたねー」
「主に空達のせいですけどね」
軽口を叩きながら、2人ほんわかとした空気を醸し出しつつカイは『
本一冊を使った読みの勉強と、ステフに手を握って動かして貰い、宙に文字を書いていく書きの勉強。
およそ二時間をかけ、これだけ読み書き出来れば大丈夫ですわ。と太鼓判を貰ったカイは大きく背伸びをする。
そんなカイに、ステフは
「ところで、カイさんのこの世界に来た目的ってなんですの?」
とずっと気になっていた疑問をぶつけるのだった。