銀の鳳の影に潜む者   作:マガガマオウ

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作戦は前途多難、初の実戦は苦戦が当たり前です。


突きつけられた現実~強奪阻止失敗中編~

可笑しいねぇ、最初は楽な仕事だと思ったのに……。

蓋を開けてみれば何だい? 新型機は扱いづらいし砦ででは砦付きの守護騎士団の囮で二機も残して、やっとこさ三機持ちだせたのに今度は何処から狙われてるか分からない襲撃者から奇襲に怯えてる何て踏んだり蹴ったりだよ!

魔獣番のくせにやってくれじゃないか。あぁ不愉快だねぇ……まぁ、文句を言っても仕方ないさ。

どういう訳か、さっきから攻撃の気配が無いのが不気味だが動くんなら今の内か……。

 

「アンタたち、移動するよ……。」

「「へい!」」

 

部下に指示を出して歩み出したは良いがねぇ。

オービニエ山脈へ続く街道はこの一本道だけ、順調に進めているがさっきの襲撃者の事が気になる。

奴らは一体どこから攻撃してくるんだい。あの小型機は一体何なだろねぇ……。

おや?図分見晴らしがいい場所に出たねぇ。ここなら奴も仕掛けては来れないだろう。

今のうちに、コイツの慣らし運転でもやっておこうかね……ッ!

 

「団長⁉」

「今何が起きた!」

 

一瞬殺気を感じて反射的に機体を動かしたが、視界が半分掠れてる。

どうなってるんだい! 周りには隠れられそうな場所なんて無いじゃないかい!

自分の常識に当てはまらない不可解すぎる攻撃が、思考を濁らせ混乱させる。

と、兎に角死角を潰さなないと!

 

「団長、ご無事ですか⁉」

「あぁ、視界は半分やられたがねぇそれより……。」

「何だ!腕が!」

 

密集するように指示を出そうとした時、別の機体にも姿の見えない敵からの攻撃が当たった。

 

「集まるんだよ!お前達!」

「「へ、へい!」」

 

それから、立て続けに遠方から礫の様な物が飛んできた、訳が分からないあんな小さな小石みたいな物に幻晶騎士が押されてる⁉

この国は一体どうなってるんだい!

 

「はぁはぁ……終わった?」

「……みたいだねぇ……お前達、新型は無事かい?」

「えぇ、多少傷はつきましたが。」

「そうかい……攻撃が止んだ今の内に、ちょっとでも進んでおくよ。」

 

視界が半分やられたがそれ以外はまだ健全だ。視界が完全に潰される前に早く山脈を超えないとねぇ!

 

 

ウェイン視点

漸く第二の狙撃ポイントに辿り着き、隠してあった魔導ライフルを組み立て狙撃準備を整えた時には、敵機は射線上に入る前の寸前の位置に居た。

本当にギリギリで間に合ったらしい、急いで弾丸を装填してスコープ越しに敵を狙う。

 

「発射!」

「命中!……背面武装(バックウェポン)に被弾!」

「くっ!次弾装填!」

 

急いで構えた為に狙いが逸れたらしい、本来の狙いの個所を外れてサブアームに当たった。

 

「発射!……不発かよ!チッ次弾追装填!」

 

ここで不発弾かよ!……ここに置いてあった弾薬は最初の迎撃で使った弾丸の前に作ったやつだったな。出来上がり次第配備していったから精度に差がでてる……。

くっそ! ここに来て弾丸にまで、準備不足の影響が出て来やがった!

 

「発射!」

「命中確認できず!」

 

次はちゃんと撃てたが当たらなかった、いや避けられた?

射線が読まれ始めてる? なんてこった……こんな早い段階で対策され始めるなんて最悪だ……。

 

「purple1?」

「……移動する。」

「え!でもまだ弾は!」

「……敵がこちらの狙いに気付き始めたかもしれない、それに弾丸も精製の精度にばらつき出始めてる、ここは温存して次で使う。」

「……了解。」

 

事態は思ったよりも悪い方に流れていた。自分たちの力を過信したつもりはないがそれでも何処か驕っていた部分があったのだろう。こっちはアマチュアであっちはプロだって事の本質を理解していなかった。

残った弾丸を持って次の迎撃ポイントに向かう俺の心中には、焦燥感が渦巻いてい冷静さを失いつつあった。

 

 

銅牙騎士団モブ視点

焦りと不安を綯い交ぜにした緊張感は、俺達の精神をゆっくり薄皮一枚ずつ剥がして次がいつ来るか分からない姿に見えない襲撃者に怯えている。

奪った三機の内、団長の機体は目を半分潰され、別の一機は腕が上がらない、今の所無事なのは俺だけだが追撃がいつどこから来るかなんて予測できない。

戦々恐々としながら、周囲に注意を向けているとまた見晴らしのいい場所に出て来た。そう言えばさっきもこんな感じの場所での襲撃だったな。そう思っていると俺の機体の後方で破裂音が聞こえた。

 

「な!まさか……!」

 

その音が周りの機体の脚を止めさせ、俺も慌てて機体の状況を確認した。

 

「バ、背面武装(バックウェポン)が……!」

 

サブアームが一本吹き飛ばされていた。これで俺の機体にも軽度ではあれダメージを負った事になる。

今度は合図が無くとも集合した。敵の狙いは俺達をこの国から出さない事だと分かっている。だが俺達も引き下がれない。

この新型を持ち帰らないと、俺達は明日が無いのだから……。

俺達は、元々貧民の出身だった幼い頃は町のゴロツキにいびられ時には殴られて、銅牙に入ったのは食い扶持が目的だった。そこでなら満足な食事にありつけると聞いたから、でも現実は違った。厳しい訓練に僅かな食事、一緒に入った連中は毎日何かしら理由で死んで数を減らし、その度に俺達の食い分が増えて最後に残った俺達も割に合わない任務に就かされ明日が命日とも知れない日々を送ってきた。それが今回の任務を期に終わるかもしれない……。

だから、俺達は何としてもこの新型を本国に届けなければならない!

気を尖らせ、僅かな変化にも神経を張り詰める相手の攻撃はある程度まで耐えれば終わる! やり過ごすんだ、嵐が過ぎるまで!

 

「……来た!」

 

小さな気配を感じて避けた、そうすると礫が眼前をすり抜け後方に流れた。

頬に汗が伝う、今の一撃を避けられなけば幻晶騎士の頭部は潰れ視界は失われていた、目視が効かないままだったら俺達の撒いた呪餌を喰らった魔獣に囲まれ、国に帰ることも出来ずにこの魔獣だらけ地で魔獣の腹の中で生涯を終えていた。

 

「うぇ!」

 

最悪の未来の幻視が脳裏に浮かび、極度の不安に襲われ胃の中のものがせり上がる。

胃酸の匂いが喉から溢れ、吐き出してしまいたくなる息苦しさが迫るが如何に押し込めた。

油断していた。東側の人間は警戒心が低く、簡単に騙せるこの国で一番の脅威は魔獣だけだと高を括り直ぐに逃げられると都合よく考えていた。だがこの国にも案山子ではない人間が居た。疑いの目で周囲を見張り変な動きを見せれば実力をもって排除することが出来る人間が。死にたくない、少なくとも魔獣の餌になって死ぬのはごめんだ!

早く……早く山脈に向かわなければ!

 

 

ウェイン視点

前のポイントでの迎撃を早く切り上げたから次のポイント当然奴らより先に到着した。ここでも隠してある魔導ライフルを組み立て標準を合わせる。

弾丸の数は前のと合わせて17発。この内ちゃんと撃てるのは何発だ?

気持ちが焦燥している。ここまでの迎撃で余りいい結果を残せていないこのままでは逃げられる!

落ち着け……落ち着くんだ。俺達の目的は足止めだ時間さえ稼げれば砦付きの騎士団が来る!

焦れる心情が引き金に掛かった指にも伝わって震えてる。動揺が視線を揺らし、スコープ越しの景色を歪ませる。怯えているんだろ、失敗する事を。……分かってる。最初のミッションがここまで大事だと思わなかった。最初は個人が雇ったスパイの確保みたいな小規模な事だと思っていた。でも相手は他国の騎士団でその国は大国だったんだ。最初の敵がでかすぎた……。泣き言かもしれないが、それでも弱音の一つ吐きたくなる。

ここを凌げなければ、俺達のこれまでやってきた事が台無しになるかもしれないんだ、気を引き締めろ(ウェイン)

そして、さっきよりも格段に歩みが遅くなった敵の一団がやって来る。

その姿を見たら、震えは収まり視界が凍り付いたように静かになる。しっかり狙え。敵は怯えている……今だ!

 

「発射……!」

「命中!頭部破壊確認!」

 

一番前を進む機体の頭部を狙い放たれた弾丸が今度こそ、狙った通りに頭部を打ち壊した。

良し……ここではもう無理か、三回も襲撃すれば見当もつくか……。

 

「移動しよう……次のポイントは、弾丸だけ回収して通過する。」

「purple1、早くないですか?」

「そんな事は無いさ、見ろpurple4。」

 

俺が連中に視線を送ると、それに倣ってカインもそちらを見た。

 

「慌てた様子が無いだろう。」

「うん。何というかこちらの出方に気付いたように見えるけど……。」

「一通り怯え切って、今度は逆に冷静になり始めてるんだ。こうなっては追撃しても意味が無い。」

「成程……。」

「理解してくれたか。では行こう……。」

「了解……。」

 

俺達はまた、深追いせずに移動した。……今は一瞬の休息に気を休めていろ。直ぐに恐怖のどん底に叩き落して絶望させてやる……。逃げる気力も起きない程にな……!

 

 

幻晶軽機(シルエットライダー)

新型幻晶騎士と同じ時期に誕生したされる小型機動兵器。

本機の特徴は何と言っても小型である事と機動性の高さだろう。同様の時期に登場した幻晶甲冑に比べても遥かに優れたスピードを誇り、現在ではこの速さを競う専門の競技が誕生したほどである。

またコスト面でも優れ幻晶甲冑一機分で三機は製造できると言われている。さらにバリエーションも豊富で魔導演算機(マギウスエンジン)が搭載された騎士団使用機と、銀板に魔法術式(スクリプト)を書き込んだ物を搭載した一般使用機が存在している。

一般使用機は登場してから富裕層の間で長らく人気があり、手に入れる事が成功者の象徴とされている。

しかし、機動性に突出した分汎用性に欠ける欠点も持ち、攻撃性能は操士(ランナー)頼りとなっている事も本機が本格的な戦闘に向かない一因とされている。

その為、使用される用途は偵察が主とされ、馬より早く情報を持ち帰る事が出来る事から報道記者の間では絶対的な信頼を勝ち取り、そちらの方でも高い評価を得ている。

前述した競技の支援企業に報道系の商家が多いのはその影響だと言う声も大きい。

所で本文の中では綴らなかったが、本機が真価を発揮するのは別の機動兵器との併用した時だと言う事は騎士団関係者以外にはあまり知られていない。

 

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