くそ!くそ!くそ!何がどうなってるんだ!聞いてた話と違うぞ!この国の人間は全員平和ボケした能天気な連中だって話だったじゃねぇか!
最初はその通りだと思ったよ。この国に紛れ込んだ時は俺達の事を疑いもしてないってアホ面を晒してたの見た時は内心この国を馬鹿にしてた。……まさか、俺達は騙されてたのか⁉ 外面は人のいい風を装って内心で警戒してたのか⁉ 畜生、やられた! 最初っから俺達はカモだったのかよ……クソッたれ!
先行して進んでいた俺は、この訳の分からない状況に苛立ち冷静さを欠いたまま進行を続けていた。
だからこそ気付けなかった。敵の凶弾が俺の機体の頭部を狙っていた事に。
「はっ! くそっ頭をやられた!」
完全に視界が消え目の前には完全に何も映されない、もとはと言えばあの間者からの報告がすべての発端だ。あいつもグルだったんじゃねぇのか⁉ そうだよ、だからあいつ落ち合う日に落合場所に現れなかったんだ! あの野郎……!
「同じだ……。」
「はぁ⁉」
一番後方に居た仲間が何かをほざいてやがる。何が同じだってんだよあぁ!
「一回目も二回目もさっきだて見通しのいい開けた場所に出たら狙われた!」
「……何言ってんだよ……。こんな隠れる場所もない場所でどう襲撃するってんだよ?有り得ねぇだろ……。」
これは俺達の常識だ。襲撃は木の生い茂った影になる遮蔽物の多い場所で行うのが一般的だし、第一ここにそんな隠れられそうな場所があるわけ……いや、待てよ? そもそも奴らは近くから狙ってるのか? もし距離が離れてても攻撃を当てられる武器があったら……!
「……なるほどねぇ、奴らはこちらの範疇にはいないって事かい……。厄介だねぇ。」
「団長……。」
「お前達、兎に角頭部は守るんだよ! 自分たちの蒔いた種で自分たちが苦しめられるとは思わなかったが目をやられちゃおしまいだ。開けた場所に出たら頭部だけは守るんだ!」
「「へい……!」」
やれやれ、厄介な国来ちまったぜ……貧乏くじ引いちまったかな。
その後も開けた場所に出たが、今度は襲撃を受けず諦めたのかと思いそのまま通り過ぎ、いよいよオービニエ山脈に近い森の入り口まで来ることが出来た。やっとこの国から出られると思って安堵していた時だ、前から幻晶騎士の移動音が聞こえたのは。
「団長、前から来たのは一体誰ですかい? 俺のは目視ができねぇ。」
「如何やら、学生さんらしいねぇ。散々邪魔された挙句にここに来て鉢合わせるとは運が無い……。」
何度も足を止められてたからなぁ、思ったより時間を食わされてたらしい。多分俺達の機体の状態を見れば嫌疑を向けてくるだろう。……くっそ、やるしかねぇ。じゃないと目標を達せられない!
投降することは論外だ。俺達は腐ってもジャロウデク王国の銅牙騎士団だ! 魔獣番なんぞに尻尾を振って首を垂れる訳にはいかねぇだよ!
視界は見えないが音測でだいたいの位置は分かる。そちらに向けてやけくそ気味に
「行かせるか!」
「こっちのセリフだよ!」
声のする方に向かって近づき、闇雲に剣を振るう。
「くっ!こいつ、頭部が無いのに……!」
「ディートリヒ!」
如何やらうまく引き付けられたらしいな。へへ……ワリーが付き合ってもらうぜ学生さん!
クルス視点
奴らの幻晶騎士との戦闘の後、急いで街道の脇に戻った俺達は道に残った足跡を頼りに追跡してやっとのことで追いついた。
しかし随分混戦してるな、俺達がここに来るまでに一体何が起きたんだ?
頭部に無い新型に組み付かれてたのは改修されたグゥエール? 奥でもアールカンバーと半分顔の潰れた新型が戦ってるし…ってあれは…なんで幻晶甲冑が新型と戦ってるんだよ⁉ つか危なっかしいな!
「あの二人……エルネスティ先輩の取り巻きの……。」
「アーキッドとアーデルトルトだ……たっく見てらんねぇぞ!」
「加勢……しますか?」
「あぁ、しゃーねぇだろ!」
「了解です。」
俺達は、幻晶甲冑で戦う二人の援護をする為にまた横道にそれる。あの二人もゆくゆくはこの国を守る騎操士になるんだ。こんな場所では死なせられない!
「あの二人、凄いですね……動かしにくい幻晶甲冑をあんな風に自在に操るなんて。」
「あぁ、卒業するころには即戦力級のエースだろうな。だからあんな無茶な戦い方が出来る……でもな、それで調子に乗ってるとあぶねぇんだよ。」
「はぁ……。」
「見ろ、明らかに相手さんはイライラしてる。あの状態でちょっとでも刺激を受けたらドカンと爆発するぞ。」
「……あの、二人とも刺激する気満々ですけど……。」
「うん……だから実際物凄く危険なんだ……。」
縦横無尽に飛び回り翻弄し続ける二人は、執拗に威力の足りない武器で攻撃を仕掛けている。
あぁもう……だから、不用意に刺激するな! あの間合いなら、あいつの周りを動き回ってかき乱せば十分だろ!
「あっ……
「こりゃプッツン来るな……。」
思った通り奴さん、やたらめったら暴れまわってるよ……。
そんな風に悠長なことを言っていたら、アーキッドが宙に投げ出された。
「頃合いか……purple3。」
「了解です。」
クリスが魔導式バズーカランチャーを顔面に向けて放つ。真っ直ぐ飛んでいた砲弾が直撃してこちらに注意が向いた。
「良し! かっ飛ばすぞ、確り掴まれ!」
俺はアクセルを目一杯ふかして、無作為に走り回る。
「魔導兵装が無いとまともな追撃も出来ねぇだろ!」
法撃が飛んでこないならこっちのもんだ。さぁついて来いよ木偶の坊!
走り回っていると気に複雑に巻き付いたワイヤーらしき物が目に入る、あれはアーキッドの奴が宙に浮いた時に打ち出されたワイヤーアンカーの……しめた! あれを使わせてもらおう!
頭に血が上ったであろう奴には足元の事は把握できていない。ならこれは上手く行くはずだ!
「鬼さんこちら、音の鳴るほうへ。」
「っ! この野郎!」
ふはははは! こんな安い挑発に乗っかるほどイラついてるとは余裕が無いねぇ。……だから、こんな単純な手にも引っかかる……。
「うぉぉぉ! 足がぁぁぁぁぁ!」
今度シャバに出たら覚えとけよ、足元にはご用心ってね!
「……これ完全に漁夫の利ですよね。」
「……それ言うなよ……。」
自分でもちょっと思ってた事をクリスに言われ、意気消沈してしまう。
何はともあれ、あれだけ派手にすっころべばコイツはもう動けないはずだ。
「凄い凄い! あんなに簡単に幻晶騎士を倒しちゃうなんて!」
「あぁ、エル以外にもこんな人が居たんだな!」
俺達とは対照的にえらく興奮した様子で近くに来る二人組……あの、やめてくれちょっと惨めな気分になるから。
「はぁ……いえいえ、もとは言えばそちらの男子が巻き付けたワイヤーが足に引っかかっただけですから。本当の功労者はあなた方ですよ。」
「そっそうだとも、ナイス判断! うん、いい作戦だった!」
俺の煤けた相貌を見たクリスは大きな溜息をひとつつくと、二人の功労を称えたので俺も乗っかる事にした。
「いや……あれは……。」
「そうだったんだ! 凄いよキッド!」
「アディ……まぁ良いか!」
「そうですよ! うふふふふ。」
「そうそう。あはははははは。」
「そうだよな! ははははははは。」
何か言いたげな表情だったアーキッド君も大人の事情って奴を汲み取ってくれたらしい……。
この日フレメヴィーラの夜空には、乾いた笑いの三重奏が上っていた……。
「あれ? そう言えば、あなた達一体誰ですか?」
ウェイン視点
前のポイントから回収した弾丸とここに置いてある弾、そして温存してきた物も合わせて36発。これだけあれば半分使えなくても残り半分はちゃんと撃てるはずだ。後の懸案事項はどうやって的を引き出すかだな…。都合よく誰かが引き付け役をやってくれればいいんだが……おい、何でいるんだよ幻晶騎士? しかもアールカンバーが……。
完全に予想の斜め上なんだが……いや、ハプニングではあるがこれは……気にしないことにしよう。
それにまぁ……ありがたい状況ではある。敵の注意を引き付けてくれる存在は今の俺達には必要不可欠な存在だからな。
魔導ライフルが組み上がり機能を呼び起こして狙いを付けた。さぁてと!第4ラウンドの始まりだ……。
弾を装填した魔導ライフルを構え、備えられたスコープで敵機の脚の関節を狙う。幸いにして僚機は無く注意も相対しているアールカンバーに向いている。ここへ来てスナイプ迎撃に置いての理想的な立ち回りが出来ている。
あれ? これって、もしかして初めっからあいつらにも情報を回しとけばもっと早期にこの対面が出来たんじゃ…?
うぅぅぅん……じゃあ、もしかしてだけどこの状況の作り出した要因の一つって俺達か?
幻晶甲冑
新型幻晶騎士と同時に生み出された小型機動兵器。
これも、これまでにない斬新で画期的な兵器である事は確かだが、初期型は扱いに難があり後に改良型が登場するまで、その認知度は高くなかった。
これが一躍有名なったのは、幻晶甲冑を纏い
またこの機体にも、
また、戦闘用にオプションを取り付ければ幻晶騎士本体は無理でも
その汎用性の高さは、登場してからも多くの
今回で三話目……長くてもあと二話で納めるようにしないと……。