銀の鳳の影に潜む者   作:マガガマオウ

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影を実を得てこそ真の影~交わる陰と陽~

件の新型強奪事件、カザドシュ事変から二日が明けた。

あの日から俺の中でとある重大な決断してそのための準備を進めて来た、そしてこの場所である人物の到来を待ち続けている。

その待ち人とは、ご存知度を越した幻晶騎士狂いの奇人エルネスティ・エチェバルリアである。

そもそも今回の密会を計画するに至った理由には、今の自分達が抱える問題を解決する為の糸口を探していたことに起因している。

俺達は今回の事件に気付く前に技術的なスランプに陥っていて、そこから如何にか脱しようと引き籠り結果空回りしていた、そんな時にあの企みを知ったのだ。全てに気付いた時には自分達はかなり後手に回り決して十分ではない状態で迎撃作戦に行動を移してしまった。

結果見れば新型一機を取り逃がし砦の兵を含め、多くの犠牲と損害を出してしまったのだから始末が悪い。

しかし、事件を振り返ると悪い事ばかりでもなかった。自分たちの未熟さにも気付けたし何より決定的に足りてないものにも気が付くことが出来た。その不足分を補ってくれそうな要因がエルネスティ・エチェバルリアだと確信して今日のこの場を設けるに至った。

エルネスティが誘いに乗るか、チームのメンバーはかなり懐疑的だったが俺は絶対に乗ってくると確信している何故なら……。

 

「言われた通りに来ましたよ!」

 

エルネスティはあの時幻晶軽機(シルエットライダー)に強い興味を示したからな、てっきり興味があるのは人型だけだと思っていたが、俺の認識よりも範囲は広いらしい。

 

「失礼させてもらう。」

 

そして、同行人はエドガー先輩か無難で妥当な人選だな。

さて……俺達の未来を懸けた交渉を始めようか……。

 

「さぁ!この間のメカは何処ですか?出来る事なら、試乗させほしいですね!」

 

うん……先ずは、このマッドメカニックマニアを話の席に付かせるところから始めようか。

 

「まぁ、落ち着け……今日はよく来てくれた、先ずはその事を感謝したい。」

「いえいえ、わざわざ招いていただいてありがとうございます!それはそうと、あのメカの事を聞かせてください!隅から隅まで!」

 

逸るエルネスティを宥め、俺は自分のペースを作ろうとした。

だが件のエルネスティは挨拶を早々に切り上げて、幻晶軽機(シルエットライダー)についての情報を聞き出したいようだ。

取り付く島もないな、こうなれば予定を少し変更してみるか。

 

「分かった……持ってきてくれるか?」

「御意……。」

俺達の立場では、安易に人前で素顔を晒す訳にはいかないからな。だからこちらの立ち位置で人と会うと時は、常にフェイスマスクをつけている。

フェイスマスクのマイク越しに要件を伝えると、奥の床がせり上がり幻晶軽機(シルエットライダー)が現れた。

俺達の利用してるあの施設、何故か地下に坑道があってここに繋がってるんだよな手回し式の高昇機付きで……。

まぁ、何はともあれこれで向こうの望みの品は提示したわけだ、これで満足してもらえたら御の字なんだがな……。

 

「あぁ……やっと、やっと出会えた……はぁはぁ!」

 

おぉぅ……目に宿ちゃいけない光が宿ってるぜ、心なしか息遣いも荒いよ……。

 

「はぁはぁ……では、早速!……あれ?起動しない?」

「エルネスティ、そんな勝手に……何だって?」

 

ハンドルグリップに手をかけアクセルを吹かせようとしたらしいな、残念だがそいつにはセーフティーロックが設定されてるのさ。

 

「……なぁあんた、ちょっとこれを手に填めてグリっプを握ってみてくれ。」

「あっあぁ、分かった……起動した?」

「何と!それでは、このメカにはロック機能が備わってるのですか⁉」

 

エドガー先輩に起動キーとなるグローブを手渡し、グリップを握らせると今度はちゃんと起動する。

その様子を見ていたエルネスティが驚嘆の声を上げる。

 

「まぁな、後はコイツを被ってみてくれ。」

「今度は何だ?」

「このヘルメットにも何か特別な機能が?」

 

二人にヘルメットを手渡す、エドガー先輩は不審そうにヘルメットを眺めエルネスティは興味津々で観察している。

大した機能ではないがあれば便利な機能が積んである、その機能を何かに例えるなら幻晶騎士のコックピットのディスプレイの縮小版だろうか。

 

「これは、速度メーターにマナ残量?」

「他にも、サポートオプションも表示されてますね!」

「無線通信及び各種装備の補助も含まれている、こいつはこの間の迎撃で使った武装の一つだ。」

 

布で隠していた魔導ライフルを出して、エルネスティ達の目の前にだす。

 

「これは……実弾兵器?」

「弾倉に入ってるのは火薬じゃなくて液体だけどな。」

 

腰のバックに入れてあった不発弾を取り出して、エルネスティに見せる。

 

「これが、弾丸ですか⁉」

「あぁ、そいつは不発弾だったけどな……。」

「こんなに、小さい弾で本当に威力はあるのか?」

「それに関しては、もう実証済みだ……。」

 

この間の事件の成果が、幻晶軽機(シルエットライダー)の機動力と火器類の立証だけだったのだが、結果はある意味渋かった。俺達の目標はその先にあるにも拘らずである。

 

「そろそろ落ち着いて話がしたいんだが、もう良いか?」

「え?あぁ、そう言えば僕たちは話し合いをするためにここに来たんでした!」

「おいおい……。」

「……忘れていたのか?」

 

こいつ……予想は出来てたけど、本当に本来の目的すっぽ抜けてやがる……早い事、話題を軌道修正しなきゃダメだな。

 

「ははは……すいません。そうでしたね、今日は話し合いの為にここに呼ばれたのでしたね。」

「ふぅ……確りしてくれ、これはもしかしたらこの国の未来を左右しかねない話になるんだからな。」

「何?どういう事だ、詳しく聞かせてくれ。」

「うん……まずは、あの日何故俺達があの場所に居たかについてから話そうか……。」

 

俺はこれまでの内訳を包み隠さずすべて話した、エルネスティ達が新型幻晶騎士の製作を始めた頃に同時に起きていた異変とその後の顛末、先に起きた事件の裏側で俺たちがやってきた事の全てを話し終え口を閉ざした。

 

「………………。」

「………………。」

「………………。」

 

三人の間に流れる沈黙が永遠とも思える程に、重苦しい時間が流れた。

 

「……つまり、ネズミは僕たちの中に居たっという訳ですか?」

 

そんな空気を断ち切って、エルネスティはその言葉を口にした。

 

「そうなるな……お前たちには、新しい物を生み出す頭脳とそれを言葉にできる口と形にできる手があった。」

「はい……。」

 

俺もその言葉を否定する事無く、固定して返すとエルネスティは以外にしおらしい。

 

「俺たちには、疑念を抱き警戒心を持てる精神があり怪しい行動がないか見張れる目があって会話を聞き取る耳があった。」

「そう……ですね。」

「……返す言葉もないな。」

 

こっちの話をちゃんと聞いてくれてる、これなら俺の提案にも理解を示してもらえそうだ。

 

「俺たちは、互いにない物を持っている……これは飽く迄も提案だ、エルネスティ・エチェバルリア……俺達と手を組まないか?」

「!それは、どういう意味ですか?」

「言ったままだ、俺達は影だが実像がない……お前たちには。」

「実像だけで、影がない。」

「勿論、タダでとは言わない。俺達からは、三つの事を融通する。」

「三つの事ですか……内容は何ですか?」

「一つ目は、事務作業を請け負う事。お前たちはこれからも新型を作り続ける、だったら技術開発を専門に行える環境が必要だろう?ともなれば事務作業に時間を取られたくはない筈だ、だから俺達はそれを代行するそれと同時に情報の統制を行えば流出はある程度抑えられる。」

 

暗部は言うなれば情報戦の玄人としての側面が強い、奇襲や破壊及び妨害工作も広く捉えればそう言った情報操作の一環とも呼べる活動なのだ、そこで一番最初に新たな情報が持ち込まれる場所はどこかと言えば経理や人事と言った事務職になるのである。

 

「二つ目に、俺たちがこれから作り出していく技術や道具の供与。エルネスティ、お前が作る兵器は確かに画期的だし強力だ、だけどそれを扱ううえで兵器運用の為の周辺機器がお座成りになっている。例えば連絡手段だ、これまで通りなら確かに直接のやり取りでも問題なかっただろうが、これからはそうはいかない何時何処に敵意を持った相手が来るかわからない、秘匿通信の一つも持ってないのは危険だ。」

 

フレメビィーラ王国は確かに山脈に阻まれた僻地にある国だが、完全に閉ざされた土地ではないかつての約定を忘れた西方諸国には未開の地であり、未だに魔獣の領域と隣り合わせの稚拙な蛮族の国だと認識されていると考えていた。

だが実際には、この国は奴らにとって格好の餌場だった、利を生む物には目敏く反応しハイエナの様に群がり、こちら側の都合など知った事かと言わんばかりに奪っていく、最早どちらが蛮族かなど分からくなっている。

しかし、作った先から奪われてはたまったものではない、だからこそ通信技術や防犯設備等の拡張は必須なのである。

 

「三つ目は、諜報活動にて知り得た情報の共有と遠征時における現地拠点の設営や活動基盤の作成。国外活動を視野に入れた提案だが、もう既に知っているかもしれんが今回の事件の首謀者は国外勢力それも上層部の人間である可能性が高い。そもそも、この国は国外の情勢にかなり疎い……敵方は密偵を送り込みこちらの情勢を長期間探っていたにも拘らずだ、だから今度はこちらからも打って出る。今後は俺達が国外の情報を集める偵察活動を専門に行う部署を作る予定だ。そして、その過程で国外に遠征すると言った事になれば最初に俺達が現地へ赴き現地での活動拠点と情報網を確立、その後に全ての作業が完了させる。」

 

守るばかりでは限が無いのだ時として、攻める事が防御に繋がる事もある。

侵攻する時は大国が小国に攻め入る場合が多い、一部の例外を除けば国土の広さは国力に比例していると言っていい、往々にして国家においても弱肉強食の理論は通じているのである。

今回の事件が起こった原因には、こちら側を恐れられていない事もあるのだろう、だからこそ相手にこちらが強大であると錯覚させ畏怖を植え付ける必要があるのだ。

ここでも暗部は重要な役割を果たしている、虚像を実像より大きく見せるには情報操作と裏工作が決して小さくはない影響を与えるのだから。

 

「現状の俺達が提供できるのは以上の三つ、逆にこちらが欲しい条件も三つだ。」

「ふむ……そのこちらに望む条件とは?」

「指令系統の個別化、有事の際の司令の優先順位を国王陛下とその側近に優先する権利そして、それを行っても不思議に思われない立場、この三点を所望する。」

 

指揮系統の個別化はエルネスティをトップとしたうえでこちら側の直接的な指揮権を俺達が持っておくのに必須であり、司令の優先順位の変更もエルネスティが不在時に必要である、更にその二点を執行した場合に立場的な齟齬が起きないようにある程度高位な幹部格の地位が欲しいのも当然ではあった。

さて……今現状で俺達の希望する事は話せた、一方的にだが提案したのは良いがエルネスティが乗ってくれなければ意味が無い、残念ながら予想が付かない相手だ……どう返し来る天災。

 

「話は、分かりました……。」

「返答は……。」

「………。」

 

暫くの沈黙……乗るか乗らないか答えに迷っている様に見える、だが悪戯を考えてる子供の様な無邪気な表情にも

見えてくるのだから不思議である。

 

「一つ……僕から出すお題を呑んでくれたら、さっきの話受けても構いませんよ。」

 

やはりそう来たか……ある程度の想定はしていたが、どんなお題を出してくるのか……。

 

「そのお題とは?」

「僕たちが、幻晶騎士を開発していることはご存知でしょう。」

「この街で暮らす人間に、知らない奴はいないだろうな……そして、今のでお題の内容を何となく察せたんだが敢えて聞くぞ何をすればいい。」

「はい!僕からのお題!それは、僕たちとは別種の技術を持つ貴方達にしか作れない独自のメカを作る事!それが、手を組む条件です!」

 

高らかに宣言された手を組む条件、その内容は俺が事前に予想していた内容と同じだった。

突拍子もないが、エルネスティの普段の様子を観察すれば誰でも予想できる……そして、そのお題に対する具体的な回答も用意している、後はそれでエルネスティが満足してくれるかだな。

 

 

クーランド商会、それは現在フレメビィーラ王国にて最も繁盛している商会である。

国による特許法の制定後、最初に技術特許を取得した商家であり数々のヒット商品を世に生み出し続ける開発力があり西方諸国との国交を持った現在ではフレメビィーラ王国を代表する商家としても有名だが、その開発にかかわる部分には不明な点が多い、いくら秘匿主義者の多い商人の言う人種だとして異常であると思わざるを得ない。

 

とある新聞記者の記述、なおこの記者はその後も調査を続けたらしいが現在は行方不明になっているらしい。

 

 

 

 

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