ご閲覧頂いている方は何名ぐらいでしょう?
エルネスティ達が晴れて国王陛下から銀鳳の名と騎士団の称号を賜ったその頃、俺達もエルネスティと手を組む条件である新型兵器の原案が形になり始めていた、とは言え必要としてるパーツがパーツだけにいつもの様に先生方に頼る訳にもいかないどうしたもんか……。
「もういっそ、エルネスティの奴にこの図面を見せて提供して貰うしかないか……あんまり借りは作りたく無いんだけどな。」
アイツなら図面を見ただけで俺達が何を作ろうとしてるか理解できるだろうし何を欲しっているかも察してくれる、だが問題はその後見せた設計図を基に浪漫爆盛りの改造機を作られたらと思うと頭が痛い。
「ウェインさん。」
「うぁ!ノーラさんいたんですか?」
必要パーツの調達法に頭を悩ませ唸っていると背後から声を掛けらる、話しかけてきたこの人はノーラ・フリュクバリさん。フレメビィーラ王国の暗部藍鷹騎士団から新設された銀鳳騎士団に派遣されている調査員だ、なのに何故かこっちに居る事が多い主に俺の周囲に……疑われてる⁉
「ええずっと、それよりディクスゴード公爵様からお手紙を預かって来ました読まれますか。」
「え、俺に⁉」
「はいウェインさんに渡せと仰せつかりました。」
公爵様にはカザドシュ事変のあったその日に会いに行った、案の定警備体制がかなり厳しくなっていたがその日に会いに行かなければ此方に有らぬ疑いに目を向けられかねない状況だったのだ、やはり最初は警戒されただがヘルメットを外し素顔を見せたら何故か懐かしいものを見た様な表情を浮かべられ此方の言う事を信じて下さった、あの顔は何だったのか?いや、それよりも今は手紙が優先だ。
「分かりました心して読ませていただきます、渡していただけますか。」
「どうぞこちらです。」
ノーラさんから手渡された手紙の封には確かにディクスゴード公爵様ご本人の物だとします紋章の印綬がある、畏れ多いにも程がある!
震える指で便箋の封を切り中から手紙を取り出して綴られてる文面に視線を這わせる……。
”久しぶりだねウェイン君、あの日カザドシュ砦での一軒で君が私の前に現れて以来かね。
あの時は内通者の引き渡しと嫌疑のある生徒の名簿の提供は助かったよ。
それはそうと、最近何やら魔力転換炉を欲しがっていると出向させている藍鷹の団員から報告があったんだがどうなっているだろうか。
進展が無いようだったならば若し君がよければだが私が力になろう、幾つ欲しいか近くに居る藍鷹の団員に伝えてくれれば望んだ数を用意しよう。”
「あの……ノーラさん、公爵様に何を報告されました?」
「?特に変わった事は……。」
だよなきっと俺の読み間違いだ、設計上どうして魔力転換炉が必要になっている現状に困窮し過ぎて公爵様直々に譲渡していただけるなんて有り得ない勘違いしたんだ。
「ただ現在魔力転換炉の入手先に宛が無くて困ってると報告してだけです。」
「読み間違いじゃなかった!」
やっぱり貴女か⁉驚いたよ、公爵様から魔力転換炉を頂けるってどんな立場だよ俺⁉
「それで幾つ所望されますか?」
「いやちょっと待ってくださいよ、なぜ公爵閣下から頂ける話になってるのかそのあたり詳しく知りたいんですけど。」
俺との接点がこの間の事件の際に少し会って話しただけの公爵様が何故?確かに頂けると言うなら欲しいのだが物が魔力転換炉若しかしなくとも一つ一つが高価な最重要物資、基本的に幻晶騎士のコアパーツとしてしか流通しない軍需物資の代表格の様な物なのだ、それを一回会っただけのどこの誰とも知れない人間に譲渡するなど常軌の考えではない何か裏がある。
「公爵様が先行投資と言っておられました、ウィークスの自慢の教え子ならば問題ないだろうと。」
「……先生の手回し?だとしたら……。」
ウィークスとは俺が故郷に居た頃に身に付けた技術の基礎を教えてくれた先生の名だフルネームはウィークス・F・シャーロン、俺達の故郷の領主家シャーロン伯爵家の前当主にして現役の頃はディクスゴード公爵の双肩を並べた識者として有名だった、確か先生の奥方様はディクスゴード公爵閣下の実妹だった筈だから直に会って話す事もあるのかもしれない。
「いやそれでも、こんな孫に甘い祖父母並みの信頼度は可笑しいよな……ん?」
待てよ、確かこの間会った時のあの反応……それに何故ここで先生の事を引き合いに出した?……俺の実家クーランド家ではこれまで祖父母と思われる人と面会した記憶が無い、最近までは何らかの理由例えば両親が駆け落ちしたカップルだったとか二人とも結婚する前に両親が亡くなってしまったからかと思っていた、だがそれにしては不自然なんだよな……これはライヒアラに来てから気付いた事なんだが、例えば食事の際の綺麗な所作が手馴れていたり手紙を書く文章が平民が書く文字とは微妙に違っていたり、僅かな違いだけど結構良い家で教育を受けていた風格の様なものを感じる事があった、何よりクーランドと言う家系を幾ら調べても両親より前の年代の人物の足跡みたいな物が一切見つからなかった……。
「エルネスティとの一件に片が付いたら、我が家の系譜を本格的に調べてみるか……。」
頭の中を色々な考察や憶測が浮上していたが根拠がない事を悩んでも仕方ない、ここは思考を切り替えエルネスティのお題をクリアする事に集中しよう。
「それが良いと思いますよ、それで幾つ用意したらよろしいでしょうか?」
思案している間、声を掛けずに傍に佇んでたノーラさんが俺の独り言に返事を返して来る、表情変えないなノーラさん……これ、要望伝えないと帰ってくれない奴かな?
「……二機お願いします。」
「承りました。」
そう言ってからも暫く俺の傍を離れなかったノーラさんは、何故か少し浮かれているようだったと様子を見に来ていたクルス先輩が言っていた。
クヌート・ディクスゴード視点
私は妹夫婦が暮らす別宅へはちょくちょく来ているが、きちんとした用が有って来るのは久しくない気がするな、特に最近は多忙だった事もあって来る機会が無かった。
「久しぶりですな義兄上、そろそろ訪れる頃かと妻と話しておりましたが本当に来られるとは……。」
「もうアナタ!お久しゅうございますお兄様。」
「ふん、お前の事だ私が来る事など分り切っていただろう、それよりミネバも出迎えてくれたのか。」
遠くから見れば随分質素な造りの屋敷の表門の前でこの屋敷の主ウィークスとその妻で最愛の妹ミネバが出迎えた、相変わらず生意気な事をぬかす奴だが私が親しく接す事が出来る者も多くはないからな。大目に見てやるとしよう。
「ここで世間話をするのも一興ではありますが、今日来られた用は外では話せますまい、どうぞ屋敷の中へ。」
「お持て成しの準備も出来ておりますから。」
「ではそうさせて貰おう。」
二人に案内されて門をくぐると趣味のいい庭園が出迎えてくる、ここはミネバの好みだな、派手さは無く質素ながら気品を感じられるレイアウトは見る者を自然と癒してくれる効果がある、そしてその庭の先に遠目では分からない精緻な彫刻の施された壁が目を引く落ち着いた外観の屋敷が見えてくる、やはりこの装飾は何度訪れても視線な気持ちで見られるここはウィークスの意向だと言っていたな。
「どうぞ義兄上お上がりください。」
中に招かれ入ると掃除が行き届いた清潔感のある廊下を抜け、この屋敷の応接間に通されると向かい合うように置かれた椅子とその真ん中にテーブルが置かれ、テーブルの上にはチェスのボードと駒が用意されていた。
「これが持て成しか?」
「えぇ、義兄上にとってはこれ以上に無い持て成しでしょう?」
あぁ、これだこれこそが私に取っては最も嬉しい持て成しだ、やはりウィークスは分かってくれている。
「では一局お相手させていただきます。」
「うむ、先攻は貰うぞウィークス。」
さてこれから長い話になりそうだ……。
シャーロン伯爵家
王都から西に進みオービニエ山脈に近い場所に拠点を置く貴族家。
その場所がら西方諸国との交易も盛んで商人の数多くが本拠となる店を出すなど活気に溢れた場所としても有名である。
また歴代の領主の意向により、領民向けに簡易の学問所や図書館などが開かれるなど識者の育成に力を入れている事でも知られている。
待ってくれて方は、如何ほどいるのか気になりますが遅くなりました。