銀の鳳の影に潜む者   作:マガガマオウ

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新たな技術の産声~新規試作兵器~

当面の難題を予想だにしない方向からの援護で乗り切った俺達は、遂にエルネスティの出したお題の回答となる兵器の試作を開始した。

 

「悪いなケンド、幻晶軽機(シルエットライダー)から引き続き突き合わせて。」

「気にしないで下さいよ!ウェインさん、俺も楽しんでやってますから!」

 

俺は一学年下の鍛冶師科に所属している協力者ケンド・ナーガスに、今日までの協力を労った、ケインは学年こそ下だがその技術力は既に中等科の最終学年の昇級試験をパスできる程成熟している、そう言う訳で当然の様にエルネスティも声を掛けたらしいがケンドはそれを断って俺達についてくれた変わり者だ。

 

「正直、人型の兵器は俺の心には響かなかったんすよ。家って、一応鍛冶師って事で工房営んでいるんすけど、ガッチガチ武器専門とかじゃなくて一般向けの各種の仕事道具が中心なんす、だからそっちにも応用が利く此処の技術の方が手に馴染むって言うか……つまり、こっちもそれなりに勉強させて貰ってるって事で一つ。」

 

っと、幻晶軽機(シルエットライダー)の試作期間中に言っていたが、一般転用も考えて造っている内の設計思想もケンドには合っていたのかもしれんね。

 

「まぁ、何はともあれ今はコイツを組み立てる事に集中していきますか!」

 

そう思い直しバラバラなパーツの組み立て前の状態で安置されている、俺達の秘密兵器の下に向かう。

 

「はい!しっかしホント、見れば見る程変わってるって言うかなんて言うか……コレ、一般人が見たら魔獣と勘違いしそうですよね。」

 

後に続くケンドが俺の一斉に応えるとパーツの状態でも異彩を放つソレを眺め、言葉を選びながらだが隠しきれない戸惑いを溢す。

 

「デザインについてはオイオイ変えていくさ、今はコッチの方が作ってる物のコンセプトをイメージしやすいからそうしてるだけだしな。」

「それも、そうですね。」

 

他のメンバーも集まり始め作業を開始し程なくして仮組み立ては終わり、動作確認などをした後またバラシて改良する、それを繰り返し数か月が過ぎた頃。

 

「代表、また例の巨大馬の報告が。」

「あぁ、うん……エルネスティの所の新型だな。」

 

俺達の暮らす街ライヒアラ近辺で度々、強大な馬の胴と人の上半身がくっ付いた魔獣の様な姿が目撃され始めていた。

 

「たっく、堂々とし過ぎだろあいつ等……お陰でコッチが動き辛いっての。」

「ウェインさん!蓄魔力式装甲(キャパシティプレーム)の準備出来ました!」

 

エルネスティは如何やらテレスターレの開発に一区切り付けて、別の新型製作を始めたと言う情報が入って来ていたが、奴ら堂々と街道でテストしてるらしい。

コッチは稼働実験をやるにしても人目のつかない時間と場所を選んでやっているのにだ、早くも手を組もうと持ち掛けた事を後悔したくなったが、そこにケンドが試作実験の準備を終え声を掛けて来たのでそちらに意識を移した。

 

「にしても……随分用意しましたね、現行機(カルダトア)を半日動かしてもまだ動かせそうな量はありませんか?」

 

積み上げ一固めにして置かれた蓄魔力式装甲(キャパシティプレーム)の量を見て、ケンドは唖然としながらそう尋ねてくる。

 

「アレに積めるギリギリの量をそのまま用意したからな、これでも試作機(テレスターレ)に積んで漸く一般機程度の稼働時間に出来る量らしいけどな。」

「それは……随分と大喰いな機体ですね、それでこの量を積んで稼働時間の嵩増ししようって……でも、それだと配線が邪魔になりませんか?」

 

用意された蓄魔力式装甲(キャパシティプレーム)の塊の使用用途に合点がいき、一瞬納得しかけて新たな疑問が浮上する。

 

「だろうな、いくら模擬戦とは言え召集を掛けられたのが、あの国の精鋭たるアルヴァンズだからな十全に動けて漸く勝負になるのに、稼働時間を増やす為とは言え動きを制限されればどうなるか何て火を見るよりって奴だ。」

「それじゃ、何が狙いで?」

 

そのくらいの想定なら事前に済ませてる、だからこそコイツが有用だと気が付いた動けないなら動かなければいい、近づかれれば危ないなら近づかせなければいい、そんな簡単な事だ恐ろしく単純故に気付き辛い幻晶騎士(シルエットナイト)は動けてナンボ何て固定観念、機動力は確かに大事だが其ればかりに注力し過ぎて選択の幅を狭めてる、時には動かない事が正しい事だってある。

 

「その一つの回答がコレだ……。」

「コレは……!」

 

奥から運ばれてきたソレを見たケンドは一瞬言葉を呑み、その後は実験が終わるまで無言を貫き最後に。

 

「コレが……ウェインさんが言っていた、騎士には出来ない兵士の戦い方……ですか?」

「そうだ、騎士には不名誉な戦い方かもしれない、だが孰れこの戦い方を必要とする時が来る、俺はこの前の襲撃でそれを確信した。」

 

この国は、フレメビィーラ王国はもう閉ざされた世界じゃない、西側へ伝わった新型の技術は遠からず大乱の兆しを生む、おそらくもう既に……対岸の火事なんて安穏に構えて居られない、賽は既に投げられているのだから。

そうして時間は過ぎた、表のエルネスティ達銀鳳騎士団と裏の俺達は其々に慌ただしくその時に備え待ち続けた。そして……その時は来た。

 

「数日後に王都でか……その時に俺達の開発した兵器の出来次第で、俺達の提案を受ける是非を決めるって事だな。」

「はい、もう既に情報は掴んでいるとは思いますが、一応僕からも伝えおこうと思いまして。」

 

向こうに贈った通信魔道具に通信波形での連絡と確認し盗聴に気を使いながら事前通達を聞く、確かにその情報は掴んでいるが。

 

「さぁ~て、どうだろうな?」

「……ぼかしますね、まだ手を組んでない相手には、成否は明かさないと言ったところでしょうか?」

 

通信魔道具越しにあやふやに答えを濁した俺に対して不満にも思わず一人納得しているエルネスティ、やっぱりわざとらし過ぎたな反省反省。

 

「それでは、僕からは以上です。当日を楽しみにしていますね。」

「あいよ、期待せずに待っていてくれ……さて、最終組み立てを始めようか皆の衆!」

 

そう締め括り通信を切られると、後ろに控えていたクルス先輩達に向き直し手を打ち鳴らして声を張る。

 

「「「「おう!」」」」

 

俺の号令に合いの手が返り、其々の担当の持ち場に散って作業を始める。

 

『さぁ、忙しくなるぞぉ~先ずは、当日までの日程の段取りからだ!』

 

そう考えを膨らませながら見つめる俺の視線の先には、其々形の違う二機の大型の機動兵器が並んでいた。

 

 

ライヒアラ日報ある日の記事より

 

【街道の魔獣現る】

 

最近、ライヒアラ近郊の街道に見慣れぬ魔獣の姿が度々目撃されていると町の住民や街道を利用している旅人、商人などの報告が相次いでいる。

その魔獣を目撃した商人の話では、巨大で魔獣は下半身が馬上半身が人の姿をしていたと言う。

その他の目撃者も同様の証言していたことから、容姿については間違いないようだ。

又その行動にも不審な点が多く、恐ろしい速度で近づいたと思えば例え荷を積んだ馬車があっても何もせずに通り過ぎ、何事もなかったかのように姿を眩ますと言う。

かの魔物が何を目的に活動しているか、熟練の騎操士(ナイトランナー)にも皆目検討も付かないと頭を悩ませていた。

それについて当誌は、予てより街道の魔獣の噂程活発ではないが、ライヒアラ付近の森林の奥に希に現れると言う是も未だ存在が確認されてない虫に似た魔獣が関係しているのではないかと予測している。

現在ライヒアラ近隣で起きてる不可解な魔獣の出没は何を指し示すのか、当誌はこれからも調査を続けて行きたい。

 

その後、この件に関してライヒアラ日報が記事を載せる事は無くなった。

噂では、外部からの圧力が有ったのではないか言われているが、当のライヒアラ日報はこれを否定していると言う。

 

 

 

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