だから侮るな、物の真価は使ってみないと分からない。
両陣配備が終わり相対する、相手は謎に包まれた重要拠点[郷]の守護を任せられる程の精鋭、
対するコチラは、頭数は彼方より少ない分手短かつ最小限の行動でも僅かにぎこちない。
「これより
互いに陣を布き終えたと見た陛下が観覧席に集まる方々に聞こえる様に声を張られる。
「なお戦力は均衡をとる為、銀鳳騎士団には人馬型を通常の一個小隊の編成三機相当の戦力と見做す物とし人馬型一機と三機、対する
予想通りの展開になった、現在の状況は
その為に態と武装を追加装甲側のみに集約して、更に本体の装甲は最低限に留めたのだから不謹慎神にもしてやったりと言う思いが込み上げて来る。
「一つの騎馬は三の歩兵に等しく……
「国機研製の新型か、俺たちの機体を改良した正式検討機が三機……普通ならコチラの方が分が悪いな、あの提案を受けるが得策だな。」
先輩方の会話をマイクで拾い聞きしながら、コチラも上手く行きそうだと心の中で頷いた。
そして目下の懸案の相手エルネスティに視線を寄せる。
「あぁ、早く戦いたいですね
……うん、いつも通りだな。特に気負う様子も無くかと言って増長している風にも見えない、強いて言えばだが……機械狂いの変態技術者全開ってところだな。
「それでそれで私達はどう動けばいい?」
「そのまま一個小隊を相手にすればいいのか?」
「手堅く定石をなぞるのも一考ですが……今回は重機を持ってきてくれた彼らの申し出を受けましょう。」
人馬型に乗る二人がエルネスティが作戦の概要を問うと、彼も俺達の意を汲み策に乗って頂けると言ってくれた。
「相手は間違いなく『ツェンドルグ』を警戒している、ならばそれ以外も手抜かりは無いと見せ知らしめましょう。何よりあの重機、何かあるとは思っていましたが……アレは戦術を一変させかねますよ。」
そこまで評価されるとはな、
「まったく……まったくもって常識外れな……人馬に然り重機に然りとんでもない若造共よ。しかしである……!私とてこの界隈で生きて長いのだ、『ダーシュ』はおぬし等の用意した物にも劣らぬと自負がある。」
ガイスカ翁の震えた声が聞こえる、恐れや怒りではなく喜びや驚きからの震え興奮冷めやるぬ今が渦中と言った様子である。
それでも譲れぬモノがかの人はあり、誇張ではない実績がその言動の重さを物語る。
「さぁっ恐れ知らずな若人共よ!互いの自慢の一品存分に試し合うしようか‼」
「ええっ勿論!」
「胸をお借りします翁。」
戦う前の最後の示し合わせは終わった、後は互いの技量を見せるのみ言葉で語れぬ事は腕で語ればよいそう言っている様に分かれる。
「それでは皆さん、指示の通りに!」
「了解だ。」
「仰せのままに。」
「任せとけ!」
「行っくよー!」
「委細承知、エドガー殿ディートリヒ殿マギアマルチバレルランチャーを手にお取りください。」
ツェンドルグが一機だけ小隊を外れ相手の注意を引き付けるよう駆けだし、エルネスティも前に出るがエドガー並びディートリヒは重機の近くに留まって貰い備えた火砲マギアマルチバレルランチャーを抱えて貰う。
「……人馬が離れたな、一方は一機だけ前進して残りは重機の傍を離れず火砲を装備した?アレで後方から援護を行う作戦か……第二小隊、槍壁陣形を保って人馬型を迎えろ!コチラは残りの小隊及び重機の相手をする。」
流石は現役の
しかしまぁ……残りの六割は見当も着かないだろうな……何せキーマンがエルネスティの時点でさ。
先頭を走るエルネスティの
「相手方先行機に変化あり!何だ……空気が収縮してる、
「それではご覧あれ……
エルネスティの行動の合わせ迎撃態勢を整える相手小隊機を前にして、アイツは意気揚々と自作の玩具を自慢するかのように自身の機体に施した機構を見せ示した。
轟音と共に地を滑る様に直進する
「何だあの速度は⁉あの方向は……第二小隊が狙いか‼」
止まった思考が回り始めた相手機は驚きつつも冷静に、エルネスティの飛んでいく方向にある物を分析し獲物が何であるかを推し量る。
しかし、狙いが分かった所であのスピードに追い付ける機体は今この場にはない、少なくとも
相手機がエルネスティの動きにどうすることも出来ずただ立ちすくしている間も、目標に向け前進し続けるエルネスティ機は一瞬で標的の眼前に迫った。
「
途轍もない情景を前にしても流石は歴戦の雄である、視界から得たれる情報を総動員して最善手を選択して迎え撃つが、そこはエルネスティである噴射角度を変え速度を維持しつつ法撃を躱し相手機に肉薄。
「嘘でしょ⁉あの速度で回避までするの⁉」
対面して見たらきっと悪夢のような光景だろう、気がふれた様な装置で頭の螺子が切れてるとしか思えない速度を出し普通は飛ばない物が宙を滑走する光景など誰が想像できるのだ。
「ぐぅぅぅ……!」
気が付けば擦り抜け様に一機が斬られて仰向けに倒れる
「なんて悪い冗談だ、あの機体は早く制圧して於かないと脅威だぞ!」
「待て!下手に動かず冷静になれ!敵はあの一機だけでは……。」
一連の行動が必要以上に警戒心を高めエルネスティに気を取られていた残存機の一機、その狭まった視野の脇を指すようにツェンドルグが姿を見せる。
「ぐああああああっ!」
強烈なシールドバッシュをシールドで受け止めるが、その衝撃は凄まじく耐えるので精一杯の様子。
「何て状況だ……相手側の術中に嵌めらるとは。」
「第二小隊崩壊!アーニィス隊長、我々はどう行動すれば⁉」
さて現在の戦況は当方が優勢、相手は奇襲により戦線崩壊の色が濃くまた混乱している模様、しかして歴戦の騎士殿方である回復は早いと思われ。
「落ち着け!今は第二部隊の援護に向かえば背を突かれ挟撃される!こちらは三機、相手は騎士が二機に重機が一機……先にあの部隊を叩くぞ、出来得る限り最短でな!」
やはりそこは経験値の差か、場数を踏んでどんな異常事態でも精神の切り替えが早い。
ただ、コチラもただ指を咥えて立ってた訳じゃないんだ、試作ゆえに立ち上げから実射までに時間が係る手持ちの大型火器マギアマルチバレルランチャーは十分に温まった、この距離ならやれる……精密な命中率は多少は下がるが今回は当たるだけで十分、脅威を抱かせるただそれだけでいい。
「撃ち方……始め。」
「了解した。」
「撒き散らせばいいんだろ?分かっている。」
俺の合図にお二人が答える、その後グゥエールが引き金を引いた火砲から火球が連射され相手方の機体を掠めていくを確認した。
「集まった所を私が撃つ!」
一か所に集まり盾で防壁を築いた相手小隊に向けて、アールカンバーが砲身を向け引き金を引けば大火球が一団の集まる場所に向かい放たれた。
「相手集団が散った、ディー!」
「分かっているさ、エドガー!」
明らかに高火力である大火球を見て蜘蛛の子を散らしたように分散した所に再びグゥエールが火球の雨を降らせ相手の機体の足を止める。
狙い通りの展開だ、ただ一つ懸案するとすれば思ったよりマナの消費が激しい事か……増加装甲の備蓄のマナの残量が想定より早く無くなっている、思ったより持たないかもな。
「お二人とも、余り良い話ではないですが……想定よりマナの消耗が激しいようです、予定していた段階を早めるかもしれません。」
「……了解だ、普通であればテレスターレの改造機である私達の機体はこの武装を使えばマナはとっくに底をついていた、これだけ相手を押し止められるなら十分だ。」
「もっとも近接戦で行ってもそこまで長く持たなかったと思うがね、僕らの機体がこうしてまだマナを残しているんだ、それだけでも評価するよ。」
エルネスティの傍で相当鍛えられたらしい、こんな状況でもこっちの想定不足を責めるより武装の成果を讃える余裕を見せてくれるとは、是が非でも協力関係を結びたくなった。
国機研チームアーニィス視点
「不味いな……下手に動けん、早く決着を着けねばならんと言うのに。」
ずっと此方の想定を超える状況が続いている事に内心で焦りを覚え始めていた。
新型機の雛型となった機体テレスターレ、アレはパワーこそ優れていても実働時間に難点がある機体だと聞いていたし持久戦に持ち込めば此方が有利と模擬戦の前までは考えていた。
「だが今は……
見た目に騙された!アレは一機だけでも戦況を左右する……戦術の根本が崩れるぞ!
あの火砲も厄介だ、散れば連射集まれば砲火なるほど効果的だ、実際良いように翻弄されている自分達を見ていたら見物人たちも考えが変わっただろう、恐れるべきは人馬だけでなかったと。
「まるで堅牢な砦だな、二小隊で責めれば落とせたが一小隊では手堅過ぎる……!」
これでは如何に此方の稼働時間が長かろうと向こうの稼働許容時間と同等迄削られる可能性すらある……状況を打破するには一機失う覚悟で突撃するしかない!
「俺が先行する、二機は俺の後ろに続け!」
「っ!隊長自ら弾避けになるつもりですか⁉それなら俺が!」
部下の一人が俺の狙いに気付いて身代わりを名乗り出て来た、だが……。
「いや……俺が行く、火砲だけが相手の手の内の全てとは思えない……騎士の方に何かある、お前達はそれに備えてくれ。」
常に油断できない相手だ……飛び入り参加の重機ですらあの制圧力なんだ、あの改造機二機にも仕掛けがあるのは明白、初めてだぞ人間相手に緊張したのは……楽しくなってきた。
フレメヴィーラ王国を発祥国とする機動機体類の総称。
その活動領域或いは用途は極めて多岐に渡り、建設・建築を始め物資運搬や情報の通達や収集の足として、はたまた交通手段と設備を整えれば屋外泊車両としても使用可能と多才な運用が出来る。
その操縦系には
この機体には軍用モデルと民間モデルで分けられており、違いとしては内蔵武装の有無や装甲位置と動力源の違いなどである。
活動する環境に合わせたカスタムも容易であり、殆ど部品が統一された規格の上で生産されている為に整備性も良好と永年に置いて人間社会で使用され続けている名機たちである。