銀の鳳の影に潜む者   作:マガガマオウ

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可能性は示された。
後は活かすも殺すも持つ者次第、だから考えろ攻略される前に。



この戦いは予測不能~重機の真価中編~

「長蛇の陣?まさか、マギアマルチバレルランチャーの弱点に気付かれた⁉」

 

縦一列に並び歩調を揃えて全身を開始した相手側の小隊の陣形を見て俄に焦りを覚えだす、マギアマルチバレルランチャーは言ってしまえば魔導兵装(シルエットアームズ)の拡大解釈武器だ。

その構造はコアシャフトとその周りを覆う二層の拡張術式を組み込んだレイヤーにより遠・中・近の射程有効距離を調節できるメインユニット、四本の杖の先端部を一つのレンズに纏め三段階の開放状態で連射・収束・拡散の三つの打ち分けが出来るバレルをくっ付けただけの代物。

急拵えで十分な試験が行えなず立ち上げに時間が懸かり更に、射程距離を変える時にも毎回電源を落とし再起動させてから切り替えなけらばならない、幸い法撃法を変える際には再起動は必要ないがその代わりに切り替えてから再度の発射状態になるまでまた時間が懸かる、他にもこの武装は面制圧を主目的として作ったから横軸へ攻撃は得意でも、相手が縦軸移動を始めたら有効度は下がる……今の設定は中距離仕様で連射と収縮、近距離仕様なら兎も角いま接近されると不味いのだが、生憎相手は縦一列で進行中なので早々に見切りをつけて次の段階に移った方が得策なのだが……。

 

「……行ってくれ、もう十分時間は稼いでくれた。」

「っ!何を⁉」

 

ここまで来て協力してくれたお二人を残し次へ進む事に躊躇い悩む俺にエドガー先輩はそう言って来た、考えを見透かされていた事と突き放された様な心情が言葉を詰まらせる。

 

「クウザ殿、貴方の持ってきてくれたこのマギアマルチバレルランチャーは素晴らしい武器だ、実際に使ってみた我々がそれを実感した。」

「その評価は紛れもない事実、これのお陰で僕らはこれから歴戦の騎士相手を消耗させた上で与力を十分残して戦える。」

 

お二人はマギアマルチバレルランチャーをゆっくり地面に置き、両翼に広がる様に左右に別れながら俺に嘘偽りない感想を言ってくれる。

 

「この好機を作ってくれた貴方には感謝している……。」

「だから今度は、僕らが君の好機を作る!やるぞエドガー!」

「お二人とも、忝い……全面増加装甲を残し後は全てはパージ、機体を軽くし全速力で敵陣を突破します!」

 

そう言い終えるとお二人は一列に並んだ相手の横腹を狙い左右から攻勢を仕掛けた、俺への気遣いと心意気を肌に感じ覚悟を決めた!

内包マナがもう残っていない前面部より後ろの増加装甲の固定を外し、装甲と本体の間に空気を圧縮させる。

 

「固定脚を降下、ホイール展開及び回転開始。」

 

固定脚の姿勢を地面すれすれまで下げ、半格納状態のホイールをゆっくり回しながら地面に沿わせる。

 

「増加装甲のパージ開始、大気衝撃波(エアショックウェイブ)発動!幻晶重機(シルエットモビル)全速前進!」

 

ホイールが地面を捉え土を抉り巻き上げ始めると共に、増加装甲を空気の衝撃で弾き飛ばし固定脚を畳み仕舞うと弾かれるように走り出す。

 

「こいつ!まさか先程の改造機と同様に高速機か⁉今度こそ止める!」

 

左右から迫る二機に気を取られ陣形を崩し出した所で、幻晶重機(シルエットモビル)で突貫強行突破を仕掛ける俺の動きに気付き、先頭を進んでいた一機が背面武装(バックウエポン)を構え狙ってくる。

 

「くっ早い!狙いが付けられん、それに当たっても装甲で弾かれる!」

「押し通る!」

 

だが数発の法撃ぐらいなら増加装甲で耐えられる、その為に正面部だけは装甲を残したのだ。

前から放たれる法撃の嵐を気に留める事もなく、そのまま横を通り過ぎようとするが……。

 

「前がダメなら横から!」

「やらせない、ここから我々が相手です!」

 

すれ違う一瞬を列の真ん中に居た機体の法撃が飛ぶ、それをエドガー先輩のアールカンバーの大盾が防ぎ相手から覆い隠す。

 

「ならば背後から撃つのみ!」

「そうはさせないよ!」

 

双方揉み合う一団から然程離れていないが後方に抜け出た時、殿を務めていた最後方の機体が向きを反転して此方に狙い付けるが、その直後にグゥエールの腕からワイヤーが伸び相手の背に刺さる。

 

「仕込み……武器⁉」

「ライトニングフレイル!」

 

俺に気を取られ背後への警戒が緩んでいた騎操士(ナイトランナー)は虚を突かれて思考が鈍った、ディートリヒ先輩はその隙を逃がさずワイヤーを通して電気を流し込む。

 

「あががががっ!」

「電撃魔法⁉くっ取り逃がした!」

 

電流が背中から流れ出し乗り込んでいた騎操士(ナイトランナー)の震えた絶叫が遠くで聞こえた、二人の息の合った連携技で会場の真ん中を突っ切る事が出来た俺は速度を緩めずエルネスティの元へ急いだ。

 

「前から増援⁉あれは……重機か⁉人馬だけでも厄介だと言うのに!」

「落ち着け、見たところ奴の装甲はボロボロだ背面武装(バックウエポン)の掃射で落ちる!」

 

ツェンドルグと交戦中の二機が接近する俺に気が付く、一人忌々しそうに悪態を衝くがもう一人が冷静に状況を読み背面武装(バックウエポン)を向けて来る。

 

「こーらー!そっち向くなー!可動式追加装甲(カウンターウェイト)展開!」

「やらせるかよー!ランス・レスト固定よし!」

 

確かにここに来るまで装甲の損耗は激しい、だが此方には頼もしい仲間がいる。

 

「しまっ!」

「くっ!人馬は俺が引き付ける、お前は重機から目を離すな!」

「「突撃ー!」」

 

ただこの一時の場、エルネスティから出されたお題の品を見せる場にて共闘するだけの関係だが今はそれで十分、この場で共に戦っているそれだけで一体感が生まれている。

 

「全面増加装甲をパージ!大気衝撃波(エアショックウェイブ)ジャンプ!」

 

相手の法撃が届く直前、ボロボロになっていた装甲を弾き法撃の直撃を往なすとそのまま大気の圧力で飛び上がる。

 

「何⁉装甲を自ら解いて、コチラの法撃を弾いただと!」

「バッタが飛んだ⁉着地地点は……まさか⁉」

大気衝撃波(エアショックウェイブ)!方向転換確認良し中央安定脚展開!」

 

空中で部分的に大気衝撃波(エアショックウェイブ)を掛け、期待を縦から横向きに姿勢を変えると増加装甲の内側に隠れていた中央の固定脚を展開して着地に備える。

 

「着地時のショック備え!……うっ!うぅぅぅぅ!はぁはぁ……直地確認、機体の損傷軽微起動に問題なし。」

 

横付けで地面に落ち食戟で機体が揺れ、その後車体で土を抉りながらもどうにか制止する。

 

「凄いですね今のは!アキラの着地シーンみたいでした!」

「はぁはぁはぁ……左様で、マナのチャージは出来ましたか?」

 

今日一番の緊張する場面を乗り越え僅かな間の硬直も、やたらテンションの高いエルネスティの声で掻き消される。

少し荒くなった呼吸で割と素っ気ない態度で返答を返す到着が少しばかり早かったからな、ほぼ空になったマナプールの再充電に専念させるための時間稼ぎだったんだ、ちゃんと溜まってるのか分からない。

 

「えぇ、ご注文通りずっと動かずにいたのでかなり溜められました!」

「そうですか、では騎乗して頂けますか?お二人の元までお送りさせていたきますよ。」

 

無駄に動かないでじっとして居てくれと頼んでおいたからな、目算通りにマナは溜められたと聞けてホッとする。

それじゃあ後は、エルネスティを奮戦してくれている二人の元へ届けるだけ、それで俺の提案は完遂される。

 

「勿論ですとも!話を聞いた時からずっと乗りたくてウズウズしてたんです!幻晶騎士(シルエットナイト)を乗せて走るバイク!いえ、幻晶重機(シルエットモビル)幻晶騎士(シルエットナイト)で最初に駆った騎操士(ナイトランナー)になれるんて光栄です!」

「そいつは……どうも。」

 

コイツ……やっぱり狂ってるな……はっ!いかんいかん、コイツのノリに飲まれてた。

気を取り直して……さぁ大詰めだ、いち早く膠着状態の戦況を引っ掻き回そうじゃないか。

 

「乗りましたよ!クウザさん、早く始動してください!」

 

騎士が重機の上に跨った振動を感じた後、エルネスティから動き出すことを急かされる。

 

「ふぅ……了解、ホイール回転開始。軌道の調整は其方でお願いします。」

「分かりました、車体を正面に向けて動かして……前に向けましたよ!」

 

車体を円を描くように動かして車体向きを真っ直ぐ前が向いた、実は重機単体だと小回りの利く方向転換がやりにくい、全く出来ない訳ではないではないがやろうとすると通常走行時よりもマナを多く消費しなければならないのだ、だが騎士が上に乗った状態ならば走行時と変わらないマナで方向が変えられる。

 

「騎馬が……増えた?」

「まさか?これが彼等の本当の……?」

 

観覧席から声が聞こえてくる、ここまで様々な兵装や戦術を見て来た観客たちだ、勘のいい者は納得の表情を浮かべていたが察しのいい方ではない方々は仰天顔で此方を見ていた。

 

「突っ切りますよ、覚悟はいいですか?」

「とっくに出来てます!」

 

走り出す前の最終確認、形式的なやつだが自分に言い聞かせる意味でもやっておく。

 

「させるかっ!」

「隊長たちの元には行かせなっ!」

「こっちこそ、エル君達の邪魔はさせない!」

牽引策(トーイングアンカー)発射!」

 

アクセルにギアを入れると魔力転換炉が唸り上がり発進前の音頭となって響き渡る、それを聞いていた二機の相手機が此方に迫りさらにそれを追ってツェンドルグが迫り一機の足に牽引用のアンカーを引っ掛け引き摺る。

 

「くぅぅ、こんな時に!」

「今だエル!クウザさん!」

「はい!行きましょうクウザさん!」

「了解!最大速度で突っ切ります、しっかりハンドルは握って置いてください!」

 

エルネスティから返事を待たずにいきなりフルスロットルで走り出す、一刻も早くお二人の元へ駆けつける為なら躊躇はしない。

 

「はははははは!魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)並みの加速ですね⁉素晴らしいです!素晴らしいですよクウザさん!」

「黙ってないと舌を噛みますよエルネスティ殿!」

 

機体を包み込む風の圧力がコックピットの中でも感じる、機体に当たり後方に流れる大気の流れを肌で感じる中で止まらないワクワクを口にし続けるエルネスティのそんな狂気すら今は頼もしい。

 

 

ガイスカ・ヨーハンソン視点

 

「何という……何という、節操の無さだあの幻晶重機(シルエットモビル)と言う機体は⁉」

 

彼、ガイスカ・ヨーハンソンは正式の名は国立騎操開発研究工房であるが縮めて国機研を称される組織に工房長の座を任される幻晶騎士(シルエットナイト)開発の第一人者である。

幾十年もの間、工房の中で騎士に係る仕事に就いて来た彼は、目の前で今まさに自分の培った経験や知識がグラグラと揺らぎ始めた事に動揺していた。

いや、とっくに砕けて破片になり更にその破片すら粉々になるまで砕かれ粒子状になっていた、そしてなお燃える情熱がその驕りの塊の為れの果て溶かしドロドロの高温の液体となって流れ出す。

忘れて久しい感覚、新たな知識を得る事でしか得られない感動と自分に無い物を持つ者へ羨望と嫉妬、純粋であり不純でもある正負の感情が綯い交ぜとなった若き日の情熱、ガイスカと言う男は上昇志向と知識欲の権化だったのだから蘇ったギラ付きは凡夫のそれとは比べ物にならない程大きかった。

それどころか、嘗てに無かった知識や経験すら溶け出たものの中には含まれているのだ、熱と質ともに昔以上のものに膨れあがっている。

 

「多目的の使用用途とは聞いていたが、戦闘の補助も含まれるとは思っておった……おったが!しかし、これは!動かなければ騎士の戦闘補助だけではなかったのか⁉なんだアレは⁉稼働時間の短い筈の試作機が何故あそこまで長く!それもダーシュを押し込める程の善戦をしておる⁉いや分かっておる、分かっておるのだ。全ての要因が重機にある事ぐらい、常識に捉われておった儂にも分かるのだ!しかし、アレはなんだあの火砲は⁉あの増加装甲は⁉一個小隊を丸ごと押し込めるあの威力は⁉あの装甲からマナを確保するなど誰が考えた⁉誰もが思い付き、実践できそうな事を何故誰も思い付かなかった⁉人馬もそうだ、魔力転換炉を二機だと⁉騎操士(ナイトランナー)を二名だと⁉馬の胴体だと⁉なぜ思い付くそんな悪魔的な⁉天才的な発想を⁉」

 

激昂する古い価値観に捉われた己に人の形を妄信した周囲に何よりそれを迷いもせずに実践した兜姿の男と少女の様な身なりの男に、一見しただけでは判断できなかった重機の可能性と人馬型と言う一瞬気でも触れたのかと思えるアイデアを現実にした恐怖し狂喜し嫉妬した。

叫ばずにはいられないクウザと名乗った出自の分からぬ男の発想の自由さに、嘆かずにはいられないエルネスティと言う自分より遥かに短い期間を生きておきながら奇想天外な小僧の奇特さに、苛立たずにはいられない今までの井の中で満足して大海を望む事すらしなかった自分の怠慢を。

 

「更にあの奇抜な騎士たちの新武装!動き出した重機は騎士を乗せて即席の騎馬になるなど!あぁ、腹立たしい!恨めしい!悔しい!何より羨ましい!儂に、儂にもっと柔軟な思考があれば⁉儂にもっと自由な着眼点があれば⁉……いや、まだだ古き考えを壊された粉々にされた今こそ!若い頃の様な情熱が蘇った今だからこそ!さらに飛躍できる、儂はまだ一段上に行ける!ならばこの模擬戦、しかと目と記憶に焼き付けておこう!この悔しさと羨ましさを忘れぬ為にも!」

 

溶けた鉄の様な価値観に胸を焦がし、尽きぬ情念の熱で焼き付けるこの蘇った懐かしき感覚を二度と忘れぬ為に。

 

 

マルチバレルツール

 

銀鳳騎士団と国立騎操開発研究工房との機体同士の模擬戦にて使用された、マギアマルチバレルランチャーに端を発する装備群の総称。

当初、模擬戦で使用された物は威力と命中精度こそ申し分ない物だったが、それでもまだまだ実践に用いるには不安の残る装備であった。

後に国立騎操開発研究工房にて改良が行われた結果、バレルと呼ばれるパーツの交換で戦闘は勿論、様々な用途への転用が可能なマルチツールへと作り変えられた。

その主な転用先は土木工事などの現場であり、その多くが今日も世界各地で人々が生活を営む上で欠かせない環境を作る事に役立っている。

 

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