銀の鳳の影に潜む者   作:マガガマオウ

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隠者としての予行練習~要人救出任務~

件の変人もといエルネスティ・エチェバルリア君は今も絶賛我が道を突き進んでいた。直接係わっている訳では無いのでどの程度かは知らないが俺も参加していた最初の魔法学講義の時間に派手に実力を見せた後、以降のこの講義参加の免除を許され学科も学年も違う幻晶設計基礎の講義を受けているらしい。

後は小耳に挟んだ情報だと、件の人物の取り巻きの二人を良く思ってない上級生たちがいるらしい話も聞いた。

如何にも、あの三人の周りはいつも騒がしい。

まぁその分、此方に向けられる関心の視線は大分少なくなっているのは嬉しい事だ、この時期に悪目立ちするのは正直避けたかった。

それでも、興味を持って視線を送って来る人物は僅かばかり残っていたが、そちらの方の問題は片付いているのであしからず。

今一番の問題が有るとすれば…。

 

「ウェン!これから飯か?」

 

この兄貴である…。

俺の兄貴、グリズ・クーランドは俺より二年先にこのフレメヴィーラ騎操士学園に入学していた。

あの事件の後に騎士になる事を志した兄貴に目を掛け稽古を付けてくれた人が、如何やら元はとある騎士団の名の有る騎士様だったらしく、その伝で兄貴もここに入学していた。

 

「そうだけど何?」

「一緒に食べよう。」

 

しつこい様だがあの事件の後、人質に取られた俺を置いて自分は逃げたと負い目を感じた兄貴は俺に対して過保護になっていた。

気に掛けてくれるのは有難いが、こうもしつこいと流石に目立つからどうやって断ろうか思案していると視線の端にあの三人を捉えた。

視線を外し兄貴に向かい合うとゆっくり耳に手を掛ける、耳に集音目的で自作したアイテムを取り付けた。

会話の内容は取り留めの無い日常の愚痴などだった、特に異常も見受けられずアイテムを外そうとした時ある人物が三人の下に近寄って空気が一変した、どんな人物なのか姿を検め様と視線を抜けると意外な人物がいた。

『あれは、確か生徒会長の…成る程な、理解した。』

俺としてはこの先の学園生活の中で関わり合う事が無いであろう人物である、それにあの二人の事情も何となく察していた、これ以上は聞く必要も無いだろうと今度こそアイテムを外し兄貴と昼食を取る事にした。

それから数日の時が経った、授業が終わり領主さまが宿舎として用意してくれた平屋建ての家屋に帰った俺は、研究室と銘打った一室で仲間と共にアイテム制作とその為の魔術研究を始めていた。

 

「ウェイン、暗視ゴ-グルの試作品が出来たぞ。」

「もうですか⁉流石ですねクルス先輩…!」

 

此処まで語って置いて自己紹介をしていなかったな、俺はウェイン・クーランド。

俺の暮らしていた領内では名の知れた商会の次男だ、親の後は継がないのかと聞かれそうだが無問題だ両親は俺達二人に好きに生きろと送り出してくれた。

そして俺と共に居るこの人はクルス・エイグラム先輩、兄貴と同学年の魔法学科の先輩だ。

ここで何を作っているかと言えばもうお分かりだろう、ズバリ隠密用マジックアイテムである。

確かに身体的技術も必要だが、それにも況して必要な物は隠密抜けに調整されたマジックアイテムだと俺は考えていた、そして最初のアイテムの開発を始めた頃に先輩に出会ったのである。

以来、学園の授業が終わった後はこの部屋に二人で毎日アイテム開発に勤しんでいる。

これまでに制作できたアイテムはさっき出来上がった試作品も合わせると四種、防毒と変声能力付与マスク、集音と障害物越しでも音声を聞き取れるイヤーマイク、認識阻害のコーティングを施した外套、そして透視と暗視の能力が付いたゴーグル、どれもまだ試作段階で実用化試験を行えてない。

 

「必要最低限の装備は揃いましたね。」

「あぁ、後はテストが行えれば御の字なんだがな…。」

 

先輩も思っていた事だったのか、そんな一言が口をついて出た。

 

「まぁ、気長に機会を伺いましょう。もしかした、案外直ぐ好機が巡ってくるかもしれません。」

「ふっ…そうだな、そうかもしれん。」

 

この時の何の気なしに口にした言葉が現実になるとは、先輩もましてや本人ですら思いもしなかったのある。

それは学園に入学して数か月経った頃だった、その日は何時もと変わらぬ晴天だった。

切っ掛けは件の変人の取り巻きの男女の男の方アーキッドが上級生と広場で決闘を始めたと聞いた時だった、誰が見ても異常な試合運びに遠巻きに見物していた皆が怪訝そうな表情で二人の戦いを見守っていた。

そんな中俺は、試作品四点セットを身に付け校舎内の空き教室を回り目的の人物を探していた。

 

「工作が下手すぎるな…良くも悪くもドラ息子って所か…。」

 

その頃には、製作したばかり遠隔映像送信アイテムを先輩に預け決闘の様子を中継して貰っていた。

神聖な決闘という形を取りながら明らかに不正を行った上級生、確か名前はバルトサールと言ったか姓が生徒会長と同じの所を見ると侯爵家関係のごたごたが原因と見た方がいいか、何方にしても騎士を志した者する事とは思えない。

兄貴から日頃、聞かされていたバルトサールとその取り巻きの性格と行動パターンから保護対象の監禁場所の候補を虱潰しに捜索していく。

 

「よく耐えるな、伊達に変人と行動を共にしている訳では無いか…。見つけた。」

 

一方的に攻撃を受けながらも耐え凌ぐアーキッドに感心していると、目的の場所を発見した。

 

「不用心だな、外に見張りも無しか…。」

 

バレてないと思ったのか、教室の外には一人も見張り役が立ってない光景に呆れかえる。

 

「何はともあれだ、作戦を開始する…!」

 

短く呟き行動に移る、先ずは敵戦力を把握する為にゴーグルを透視ギミックを発動する。

 

「室内の敵戦力は三人、武器は杖か…攻撃方法は魔法による遠距離と想定、インビジブルローブで接近した後に無力化及び拘束する。」

 

簡単な作戦の概要を組み立て、軽くドアをノックした。

 

「誰だ!」

 

室内から緊張した様子の声が響くと俺はマスクの変声ギミックを使い絶賛いかさま中の奴に似た声を作って答える。

 

「俺だ。決闘が終わったんでな、中に居るそいつがどんな顔してるか見に来た。」

「なっ何だ、バルトサールさんですか。」

「驚かさないで下さいよ。」

「御託はいい、とっとと此処を開けろ。」

「はいはい只今っと…。」

 

一人が此方に歩いて来るのを確認して脇で待つ。

呑気なバカ面晒した取り巻きがドアを開けた時、開いたドアから室内に侵入した。

 

「あれ?バルトサールさん?居ないな、何処だろうなぁ…!」

 

声の主の不在を不審に思って仲間たちに伺いを立てようとした時その異様な光景に言葉を詰まらせた。

 

「おっおい、如何しt…。」

「騒ぐな、眠っていろ…。」

 

気絶して倒れ伏せている仲間に驚き声を掛けようとした時、彼も謎の襲撃者に意識を刈り取られた。

 

「無力化を完了、拘束に移る…むっ?足音か、早いな…。」

「貴方は…誰…?」

「!アデルトルート・オルター⁉まだ意識が有ったのか⁉」

 

朧気ながらも意識を保っていたアデルトルートが、フードを外した状態で認識阻害の効果が適用されてないウェインを目撃した。

幸いゴーグルもマスクも付けた状態で声を変えていた為、具体的な人相は知られていないがそれでも存在を知られるは不味い、一旦冷静になりアデルトルートに話し掛ける。

 

「此処で見た事は誰にも喋るな、例え身内や親しい友人にもだ…!」

「何…で…?」

「俺は存在は世に知られる訳にはいかない。だから約束してくれ…!」

「でも…エル君に聞かれたら…。」

「…頼む…俺はまだ、夢を叶えられてないんだ…!」

「夢…?」

「あぁ、影から忍び来る災厄からこの国を守るという夢だ…。」

「…分かった、誰にも言わないよ…。」

「ありがとう…。」

 

そう言い残し、俺はその場を立ち去った。

その後は、エルネスティに抱えられたアデルトルートが決闘の場に現れた事で形勢が逆転、アーキッドの勝利に終わる。

決闘でありながら不正を働いたバルトサールは厳重注意を受け自宅謹慎と成る事で一連の事件の幕は閉じた。

だが疑問も残された、アデルトルートを攫っていた取り巻き達はエルネスティが到着する前に全員誰かに昏倒されていた、それもかなりの手練れらしく誰も顔どころか姿すら見ていないと言う。

一体誰が、彼らを気絶させたのか事実を知る者は当事者以外は誰も知らなかったのであった。

 

姿の見えない襲撃者:これは、とある名家のお家騒動が発端と成った事件である。

ある日の中庭にて決闘騒ぎがあり一方の生徒が相手方の身内を誘拐して、決闘を有利に進めようとした。

身内の救出により計画は失敗、首謀者は自宅謹慎の憂き目にあった。

だが救出に向かった生徒の話で、別の事件が起きた。

その生徒の話だと、誘拐グループの生徒は到着した時には全員倒されていたらしいのである。

倒された生徒は顔も姿も見ておらず、誘拐されていた生徒もよく覚えていなと発言したらしい。

この事件には、様々な憶測が流れたが真相はまだ明かされていない。

~ライヒアラ騎操士学園 七不思議より~

 

 

 

 




重ね重ねのご拝読、ありがとうございました。
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