銀の鳳の影に潜む者   作:マガガマオウ

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駆ける騎馬は勇ましく、溢れ出る狂気を滾らせる。
宴もたけなわ、兵どもが燃え盛り。


この戦いは予測不能~重機の真価後編~

三機を相手に立ち回るディートリヒとエドガーの二人、当初の予定であれば今より厳しい状況に立たされていたと肌で感じていた。

 

「何と手堅い……!機体は勿論、騎操士(ナイトランナー)の方も心技体揃えた手練れとみた、優秀な騎士だ。重機、アレが無ければもっと長く確かめられたのだが……いや、此方の相当消耗させれたが結果として同じ条件で勝負出来ているのか?しかし、惜しいな。」

「強い!消耗させた上での一撃の重さと鋭さ、一分の隙も無い正確な攻撃!そして新型の性能も……難物のテレスターレから派生した機体の筈なのにこの精密な機動とは……国機研(ラボ)の仕事が伊達では無かったと言う事か!」

 

エドガーは隊長機を相手に一人で奮戦していたが力量と技量はアッチが上だ、クウザの協力で与力を温存した上でエルネスティの拵えた新規武装、己のこれまでに培った経験持ち前の精神力を全て出して漸く互角の勝負が出来ていた。

 

「元々の低燃費と可変式追加装甲(フレキシブルコート)の連続使用、幾ら彼方のマナプールを減らせてもいつ魔力が切れるか、それでもクウザ殿が作ってくれた好機だ……絶対に耐え切ってみせよう!」

 

いくら優れた機体に乗り強力な武装を積んでそれを使いこなす乗り手が居ようと、研鑽と経験を重ね現場で腕を磨き続けた手練れが相手では、どんなに好条件に持ち込もうと五分五分で精一杯。

それでもクウザの存在、彼が居ると居ないでは全くもって心境が違う、太陽の様な強烈な眩しさと暑さとは対照的な月の様な静けさと冷たさのある人物、だがその裏にある熱い信念は僅かな時間でも感じ取れた。

余りにも自然に自分は……自分達は彼に従う事を当然の様に受け入れていた、だからこそクウザがエルネスティを連れて戻ってくるまでは、しがみ付いてでもこの場は死守するとエドガーは決めたのだ。

それが二機を相手に善戦するディートリヒも同じであった、最初の不意打ちから何度か使用した手首の仕込みワイヤーも軌道を見抜かれ始めていた。

 

「流石に相手も慣れてきたか!それなら風の刃(カマサ)!」

 

一つ手が通じなければ次の手を講じるまでグゥエールにはまだ武器がある。

 

「何と多才な武装の機体だ……!」

「焦るなよ、お前は控えて居ろ迎撃は俺がする!」

 

放たれる法撃を楯で受け止めた国機研機の騎操士(ナイトランナー)は、グゥエールの手数の豊富さに息を巻く。

その機体の後ろに控えた国機研の機体は、消耗した仲間に防御を任せ自身は反撃役を務める。

 

「相手は消耗しているがグゥエールもそろそろ限界が近いか⁉……しかし、エドガーと二人で足止めをしていた想定よりはずっと優勢だな、クウザ殿には感謝しかないよ……後は彼が団長を連れ来れば、きっと間に合う彼等なら!」

 

ディートリヒのクウザへの信頼感は既に揺るぎないものとなっていた、だからこそ託せるのだ自分達の命運を我らがエルネスティ団長と共に。

 

 

ウェイン視点

 

「は~ははは!風です!風を感じますよ!クウザさん、僕らは今風と一つに成ってるんですよ⁉最高ですね!」

「だから、燥ぐのは構いませんがお静かにと!」

 

絶賛上機嫌に狂ってらっしゃるエルネスティ殿のテンションに若干押されつつある俺ことウェイン、本当は緊張感ある場面の筈なのにさっきから雰囲気ぶち壊しだぜ……。

 

「自分で吹き飛んでる時には、機体操作やら出力調整やらで風なんて感じる暇無かったですからね⁉今まさに体に風が当たる感覚を実感している訳ですよ!」

「分かりましたから⁉少しは緊張感を持ちましょうエルネスティ殿!」

 

すんごい有頂天で途切れる事のないマシンガントークが炸裂しておられます、そろそろ目的地が視認できる所まで来てるから落ち着いて欲しい。

 

「あっ!見えてきましたね!なかなか善戦していますねぇ~!」

「前哨戦で消耗させたのが効いているようですが、お二人の機体も芳しくない状況の筈……急ぎましょう。」

 

視界の奥に密集する騎士の集団が見えてくる、遠目に見れば確かに互角の戦いを繰り広げて見える。

だがしかし、それでもテレスターレが消耗戦に不利なのは変わらない、責めて数の戦力差だけでも解消させたい、ここからは不要なお喋り無しだ戦いの前に集中力は切らしたくはない。

 

「えぇ、了解です……ここからは標的に集中させてもらいますよ。」

 

さしものエルネスティも鉄火場が近づけば静かになった、猛る本能を滾らせ喰らう獲物を吟味している様だ。

何故か分かる、俺にも理解できる気を尖らせれば尖らせる程、俺の中で何かが飢えを訴えて来る。

救援に向かっている筈なのに、心は獣の闘争本能の様な疼きが燻り、獲物を狙うように相手を見定めていた。

腹が減った獲物を寄越せ!どちら喰い応えがある?どちらがまだ活力が残ってる?早く嚙みつかせろ!

距離が短く成る程、五月蠅く煩わしい声が大きくまた多くなる、そこまで来てやった気が付いたのだ俺の焦りは仲間を心配する者だけじゃない狩猟本能も含んでいたのだと。

やがて状況は動く、グゥエールが剣を大地に刺し膝をついた、だがあれは振りだと本能が告げるマナが少ないのは事実、だがアレは油断を誘う為の演技だと内なる声が言っている。

狙うのはアイツが狩らずに残した方だ、そっちまだまだ動ける活きがある!そっちを喰らわせろ、俺を満たさせろ!

内なる獰猛な俺は言う、その事が真実であるようにグゥエールの最後の一撃が動きが鈍い方の機体に当たり機能を停止させグゥエールも沈黙した。

その時には、相手機と俺達の距離は目と鼻の先に迫り……焦らされた二頭の本能の獣は、大口を開けて獲物に食らいついた。

 

「……は⁉ぐぁっっっ!」

「貰いです!……お二方共、只今戻りました!」

「随分、お待たせさせてしまいましたね。」

 

接近して通り抜ける刹那の一撃が相手を捉える、その相手は一撃が決まるまでまるで抵抗してこなかった、まるで蛇に睨まれた蛙の様に呆然と立つくし、意識が戻ったのは受けた一撃で機体が飛ばされていた時だった。

一人打ち取った事で満たされたのか荒くれていた飢餓感はすんなり収まった、漸く一息つける間が生まれ動かないグゥエールの方に語り掛ける。

 

「はぁはぁ……いいや、十分早いさ……お陰で僕にも見せ場が出来た。」

 

息が上がってはいるが彼らしい気障な調子の軽い返答が返される、その声は充足感で満たされた晴れやかな声色だったが。

 

「エル!ディー先輩!クウザさん!こっちは片付いたよ!」

「今からそっちに行くぜ!」

 

俺達が束の間の安息に気を休めていると、少し離れた位置に居たツェンドルグを駆る双子も自分たちの戦いを終えた事を告げて来る。

 

「アッチも終わったようですね……では。」

「残るは大将首ただ一つ……エドガー殿、援護入りますか?」

 

相手の大将と一騎打ちを続けるアールカンバーに視線を向ける、多少押されて見えるが状況は拮抗している様だ。

 

「ふぅふぅふぅ……団長それにクウザ殿、提案は嬉しいがここ私に任せてほしい!」

 

俺達の問いに疲労と活力の混じり合う強い意志の籠った返答が変える、そう言うだろうな、エドガー先輩の性格を考えれば……確実性を取るなら彼の提言は流し無理にでも援護を行うべきだが。

 

「俺以外は行動不能か、最初から重機を警戒して置けば……いや、もしもは所詮仮定だな……現実は結果が全て、次があるなら今度は我々にも重機が欲しいところだ。」

 

相手側の隊長は状況の理解が早いそれ位出来てこそ前線の指揮が執れるのだろう、相手が負けを認めたからにはここからの戦いは無駄な戦いになる……良く言えば公開演技、悪く言えば消化試合……ならば本人の意思が尊重されても何ら問題は無い。

 

「エドガーさん、承知しました。」

「我らは手出し無用と弁えましょう、時間の許す限り気の許されるまで手合わせを。」

「すぅ……ふぅ~感謝します!団長、クウザ殿!」

 

許しを出せば一度長い深呼吸をした後、気合の入った声を張り感謝を伝えるとアールカンバーは楯を構え直す。

 

「来るか白い騎士の騎操士(ナイトランナー)!対局は決した今、この対戦は互いの矜持を示すだけの戦い、ならば一介の騎士として全力を持って相手をさせて貰う!」

「乗ってくれますか、貴方にも感謝を……いざ勝負!」

 

互いの剣の激突し重なる激しい鍔迫り合い、持久力のダーシュと出力のテレスターレ双方の特性が騎操士(ナイトランナー)の意思により引き出される。

一進一退の衝突、互いの矜持以外なにも介在しない純粋な腕比べ、一瞬が永遠とも呼べる時間に引き伸ばされる静かだが熱い戦いは……。

 

「ぬぅぅぅぅ!……はっ⁉マナがっ!」

「うぅぅぅぅっ!コチラもか……。」

「そこまで‼両陣見事であった、剣を収めよ‼」

 

お互いの機体のマナプールの枯渇で幕を下ろす事になった、そして最後の対戦の決着が着いたと同時に陛下が模擬戦の終了を宣言される。

 

「双方とも勝らずとも劣らぬ称賛する他に言葉の無い機体である!その力を充分拝見させてもらった!流石としか言えぬ!皆でこの素晴らしき健闘に賛辞を送ろうぞ!」

 

陛下の惜しみない称賛は機体を造った関係者、さらにはそれを駆って戦った騎操士(ナイトランナー)に取って何にも代えられない褒賞であり、集まった観客たちの声援は健闘を称える勲章に他ならない。

その称えられる者の中には俺も居るのだが、そんな空気の中でエルネスティにだけ通信機を繋げた。

 

「エルネスティ団長、この後国王陛下と国機研のお二人を連れて会場の外で待っていて下さいますか?」

「え?まぁ構いませんが、どうなさいました?」

 

興奮に膨らんだ空気を戦いの後の高揚感と共に楽しんでいたのだろう、急に話を振られて珍しく驚いて居られた。

 

「我々のもう一つの創作物が到着予定ですので、ぜひご拝見して頂こうと提案したく……。」

ナント!このバイク型以外にも幻晶重機(シルエットモビル)を造られていたんですか⁉

 

俺が本日の取って置きの切り札を切るべく打診のセリフを言い終わる前に、エルネスティの大きな声が会場全体に響き渡る。

声でけぇな……さっきまでの騒がしさが一気に静まり返ったぜ、いやー沈黙が痛いわ~。

 

「あの……。」

「こうしてはいられません!どこですか⁉どこへ向かえばその機体は見られるんですか⁉早く行きましょう!あぁ、国王陛下と国機研のお二人にも声を掛けて欲しいんですよね⁉陛下‼国機研のお二人も勿論見に行きますね⁉」

「……うむ!是非見せて貰おう。」

「分かり切っておるわ!こうしては居れん!早く案内せい!」

「ははは!全く愉快な方々だ、付き合いましょう。」

 

冷静になれとエルネスティに聡そうとする声は、怒涛の勢いで繋がれる言葉の濁流に押し流され、そのまま大衆の面前で声を掛けようとした人物達にも勝手に了解を得てしまう。

う~ん!会場がさっきとは別の意味でざわついてきたな~……予定より観覧客が増えそうだ。

 

 

新型幻晶騎士(シルエットナイト)模擬戦

 

幻晶騎士(シルエットナイト)が世に生まれ幾星霜の年月が流れ久しい、その間にも幾度も模擬戦とは行われて来た。

しかし、昨今の結晶筋肉(クリスタルティシュー)魔導兵装(シルエットアームズ)に関する技術を語るに於いてこの模擬戦ほど重要な試合は無いと言っていい。

この日に世にお披露目となった技術の大半は後世に多大な影響を残し、その殆どが現在も研究開発が続けられている。

停滞していた技術に革新を起こしたこの日の事を多くの技術者は転換日と呼び、一種の記念日と位置付けられ新たに考案した技術の発表式をこの日に行う技術者は多い。

 

フレメビィーラ王国目録 技師の章より

 

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