銀の鳳の影に潜む者   作:マガガマオウ

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祭囃子は続く~お出迎えの前準備~

「まだですか?まだですか?そのもう一つの幻晶重機(シルエットモビル)の見れる場所は?」

「まだ少し先です、それと目的地に着いても向こうの到着を持たなければなりませんので悪しからず。」

 

闘技場を出てから燥ぎに燥ぎ続けているエルネスティ、とは言え闘技場の外に出てからそんなに経ってない筈なんだが。

 

「やれやれ、少し落ち着かんかエルネスティ、まだ外に出てそう離れておらんだろう。」

「おや国王陛下、気にならないのですか?あのホッパーですか?あの機体の素晴らしさを体感しておいて他にもあると言われれば気にならずにはいられないでしょう⁉」

 

落ち着きのないエルネスティを見かねて国王陛下が窘めて下さる、だがそこで素直に言う事を聞く様な人間ならここまでの成果は出せんわな。

いや、本当に恐れ知らずな性格をしてらっしゃる……頼もしいぜ。

 

「いやいやしかし‼待ち遠しいですな‼あれ程の成果を見せておきながらまだ仕掛けてくるとは⁉」

「貴方も少し冷静になったら如何ですか?」

 

ガイスカ翁も同族でありましたか、隣を歩くターバンを巻く見た目はお若い男性……う~ん、見た目は確かに若いだが纏う雰囲気と言うか放つ気配が見た目の年齢にそぐわない、もっと言えばこの中で一番年齢は上である様にすら覚える。

しかしまぁ……多いな、後ろから付いて来る群衆の人数、声を掛けるタイミングを考えておくべきだったか?

一応、見物人が現れる事を予期して整理要員は配備しているが……足りるかな?

 

「国王陛下、こうまで見物人が増えると警備要員に少々不安が……。」

「うん、クウザよそなたの懸案も最も、案ずるな会場を出る前に先触れは出した。」

 

流石は陛下です。先々の事を読んで先手を打たれおられる、俺も見習いたいねぇ~。

訓練をしてある程度の技術を身に付けていたつもりだったんだが、まだまだ精進が足りてない証拠か……。

 

「一度、先生の下で鍛え直して頂こうか……。」

「なんだ、十分実力は有ると思うが、そなたは精進深いのだな?」

 

はっ!しまった、つい心の声が!とっ兎に角、何か返答せねば!

 

「いえ、私などまだまだ……先生に鍛えて頂いて多少は技術も身に付けましたが、実戦で通用するか分からぬ若輩です。」

「ふむ、そなたは確かに実践に出て日が浅い、だが場数を踏めば大成するのは儂でもわかる。」

 

恐れ多くも尊き方からの労いのお言葉は身に染みる、身に余り過ぎる厚遇を頂いてしまった!いや待て、冷静になれ俺、陛下が身分不詳の上に卑屈を拗らせた俺に思う所があってのお言葉かも知れん……それでは気を使わせてしまった⁉それでも叱るでのはなく、真意を隠し相手を立てた上で諭されるこれが国家を背負う者の器量!

 

「未熟な手前を気遣ってのお言葉、努々忘れず今後の人生の教訓とさせて頂きます。」

「おぬし?……いや、もう好きに捉えるがよい。」

 

あれ?今度は呆れられた?何だろう、この何とも言えない微妙な空気……ふむ、気を急ぎ過ぎて冷静さを失っていたか反省だな。

 

「っと、見えてきましたよエルネスティ殿。」

「オオ⁉……あの、天幕が幾つか並んでるだけの様に見えますが⁉」

「もう一機の幻晶重機(シルエットモビル)とやらはどこにあるのだ⁉」

 

到着予定の待合場所が見えてきたのでずっと興奮状態にあるエルネスティに知らせるが、視線の先にはテントが四つ等間隔に並べられた風景のみ、着いて行けば即座に見られると思っていた昂ぶった好奇心の向けどころを失ったメカバカ二人がすごい勢いで詰め寄ってきた、別にすぐさま見られるとは言ってないんだけどなぁ~。

 

「私は、一言もその場に在るとは言ってませんよ?」

「あっ……。」

「そう言えば……。」

 

おや?お二人揃って固まってらっしゃる。

まぁ、あのままのテンションでずっと居られてもこっちが疲れるだけだったし、ここいらで空気の入れ替えをしとかないとな。

 

「兎も角、今は天幕の元まで行きますよお二人とも。」

「はい……。」

「うむ、分かった……。」

「はははは……あの状態のガイスカ工房長を一言で静かにさせるとは、クウザ殿も中々に言葉回しが上手い。」

「よく説明を聞かんからこうなるのだぞエルネスティ、しかし話術もあやつ等譲りの腕前か……。」

 

まるで楽しみにしていたご馳走を前にお預けを喰らった子供の様に降下していく二人の情緒、心なしか後ろから付いて来る集団の足も若干鈍った様に感じるな。

そうしてようやく静かになった移動も終わり、一番近くに張ったテントに近づくと中から侍女服姿に人員が外に出てこちらに近づて来る。

 

「皆様お待ちしておりました……代表、王太子殿下が先にご到着され中で控えられております。」

 

俺が案内して来た招待客に会釈をしてから、俺の耳内に招待状を渡して欲しいとクヌート公にお願いしていたお方が先に到着していると伝えらた。

 

「分かった……ご挨拶にお伺いする、王家の方への接客ご苦労だった。お連れした招待客様への接待を引き続き頼む。」

 

王太子殿下、来てくださったか……来訪して頂けるかいまいち自信が無く不安ではあったが、訪れていただけとのならば主催者として御礼のご挨拶に向かわねば。

 

「承知しております。皆様、ここからは私が案内役を承ります。」

「私はここ迄で一旦別行動を取らせていただきます。皆様には、ご理解いただきたく。」

「うむあい分かった、クウザよここ迄の案内ご苦労であった。」

 

現状確認と報告を聞き後の指示を出すと、その場で身を翻し会釈をして迎えに来た人員に案内役を交代する。

 

「リオタムス王太子殿下、クヌート公爵閣下よりの紹介を受けましたクウザと名乗ります者でございます。お目通りを願えますでしょうか?」

「うむ、おぬしがクヌート公が言っておられた男か、許す中に入って参れ。」

 

案内役から外れた俺は足早に此方から見て一番手前のテントの直前で止まり、中に居られるであろう御方に顔を合わせるお許しを請うと、聡明な品格を思わせるお言葉を返して頂けた。

 

「はっ!お許しいただきありがとうございます、失礼いたします。」

 

許しを得てテントの中へ入り真っ先に一礼してから、ヘルメットシールドを上げて仮面を外した後ヘルメットそのものを脱ぐ、外に見張りが居る事を予め認識している、つまり今はテントの中に居るのはリオタムス王太子殿下と俺の二人だけだ。

 

やはり似ているな、あの方に……良くぞ参った、その顔がそなたの本来の姿か。」

「はっはい!本当の名はウェイン・クーランドと申します。」

 

最初に小声で何かを囁かれておいでだったが良く聞こえなかった、僅かな間をおいてから俺の素顔を見て何やら感慨深い雰囲気を醸されておられる、何か殿下から例えるなら親族に向けるような親し気な視線を向けられている。

なぜ尊き御方からその様な視線を送られるのか、俺には皆目見当も……いや、薄っすら隠された事実的なモノの気配は感じていた、だがアレは俺の憶測の域を出ない案件な訳で……。

 

「リオタムスよ、クウザとの顔合わせは終わったか?そろそろ中に入りたいのだが?」

「父上?少々お待ちください……どうぞ、お入りください。」

 

王太子殿下との面会の時間が少し長かったらしい、国王陛下の声掛けで俺としては長い思案の中から現実に引きも出され、慌ててヘルメットと仮面を被りなおしたのを確認してから国王陛下に返答された。

 

「リオタムス、そなたも呼ばれておったのか。」

「はい父上、先に紅茶と茶菓子をいただいておりました、中々美味ですよ。」

 

まず最初に国王陛下が入って来られ王太子殿下と軽い雑談を交わされる、王太子殿下の座る机の前にティーカップとお茶請けが載せられた小皿がある、こちらで用意した茶葉とそれに合うお茶請けは王太子殿下のお口に合った様でホッとすると共にお気に召して頂けた光栄に浸る。

 

「ふむ、そなたが褒める程か、ならば儂もいただこうか。」

「では私もご相伴に預かりましょう。」

「直ぐにご用意します。椅子にお掛けになってお待ちください。」

 

王太子殿下のありがたきお言葉をしみじみ心で滲ませていると、国王陛下も紅茶とお茶請けをご所望されターバンの男性も求められた、お二人の後に続いてテントの中で控えていた侍女服の部下が受け応え外に出て行く。

 

「国王陛下と国機研の……?」

「これは失礼、名乗るのを忘れていました。国立機操開発研究工房で所長を任せられております、オルヴァ―・ブロムダールと申します。」

 

バンダナの男性は国機研の最高責任者である所長であられましたか、ガイスカ翁の対応から察するに彼よりう前の立場の人間であるとは推察していたがこの方が。

 

「これはどうもご丁寧に、それでエルネスティ殿とガイスカ翁は一緒では?」

「あの二人なら外で待つと言っておった、此方に向かっていると言うそなたの取って置きを見逃したくないのだろうて。」

「クウザ殿が天蓋に向かわれてから、息を吹き返したように猛り出しましてね。」

 

冷静さが持たなかったか……しかし、向こうが今どの地点に居るかは気になるな確かめてみるか。

 

「国王陛下並びに王太子殿下、しばしお暇を頂けますでしょうか。」

「そなたも多忙だな、良い好きに致せ。」

 

外に出る前に国王陛下にお傍を離れるお伺いを立てなければと願い出れば、かの方は快く俺の願い出を受け入れて頂けた。

 

「ありがとうございます。皆様はそのままお寛ぎください。」

 

認を得られたお礼と一緒に一礼してから、俺はテントの外へ出て横に並ぶ後の三つを注視する。

 

「管制通信用の天幕は……奥から二番目か。」

 

テントの外に掛けられた目印の看板を頼りに目的のテントを見つけてそちらへ向かう。

 

「失礼するぞ、皆ご苦労だなあっちはどの辺りまで来てる?」

「代表、さっき通信がありましたよ、もう直ぐそこまで来ているそうです。」

 

テントの中には管制官と通信士が詰めており、俺に気が付いた通信士が近況を伝えて来る。

 

「そろそろか……おっ!音が聞こえてたな、お出迎えしてくる。」

「はい、いってらっしゃい。」

 

テントの中に居ても聞こえてくる風を切る駆動音、ゲストを乗せたヤンマがこっちに向かって来ていると認識するのに十分な確証だ、それであれば出迎える為にヘリポートへ向かおうと外へ出て行く。

 

クウザさん!あの音はまさか!

もう一つの機体とはまさか……!

 

テントの外に出れば詰め寄ってくるのは当然機械バカ二人組、多少時間に余裕はあるが余り間は取られたくないし、仕方ない連れて行くか……。

 

「これからゲストの方々をお出迎えに向かいますが、静かにしていてくれるなら同行を許しますよ。」

本当ですか⁉分かりました、同行させていただける間は静かにしています!

「ゲスト?……いや、それよりも着いて行っても良いのだな⁉嘘では無いな⁉

 

この二人が静かにしてくれるか不安でしかないがここでダメだと言ってごねられてもて困る、ならいっそ口約束だけでもしておいて連れて行く方が得策かと考えたが、今この時点の二人の反応を見ると時期尚早ではないかと思い浮かばずにはいられない。

 

「えぇ本当です。正し、今の様に声を上げられ大きく張り出されるなどした場合は、即座に引き返して頂きますが。」

「うっ!……分かりました。」

「うっうむ、了解した。」

 

しつこい位に釘を刺し度々意識を戻して静かにしていて貰わなければ、これから迎えに行くゲストは俺達にとってとても大切なお客様な訳だから。

 

「では行きますよ、出迎えが後から来るなど有ってはならない事ですから。」

「はっはい!」

「うむ……ゲストとは一体?」

 

まだ向こうは到着していないのだが、先に行って待っている方が好印象に繋がり易い、これまで厚遇をして頂いた支援者様であられます皆様に失礼が有ってはいけないのだ、だが迎えに行く前に一番外側のテントを覗き込む。

 

「代表、もうお出迎えに?俺達は何時頃向かえばよろしいですか?」

 

中では整備員達が詰めて居るのだが、その中で今回の整備責任者に任命したケンドが俺に気が付いて、入り口まで近づいてこれからの予定を聞いて来る。

 

「先に行ってお待ちする。此方の用事が済ませれば直ぐに呼ぶ、準備だけはしていてくれ。」

「了解、お気を付けて。」

 

俺は先に自分の予定を伝え後の指示を言い渡し到着予定位置を目指し歩き出すと、ケンドが俺達を見送る為にテントを出て頭を下げる。

今だ音だけが存在を示し続けるヤンマ、ゲストの皆様をお乗せしたあの機体はこの場には到着せず少し距離を置いた開けた場所に到着する、この場に直接現れたら風圧でテントが飛ばされ兼ねないし集まった見物人達に危険が無いとも言えない、安全面を考慮するなら待機場所と到着地点はずらすの一番良い。

さてゲストがご到着されたら後ろの二人の事をどう説明しようか、付き添い人と言うには立場が微妙……見学人と呼べば言い訳は立つが……。

そんな事を考えながら俺は後ろにしおらしく大人しくなった二人を連れ、ゲストをお出迎えする上でどう説明しようか頭を巡らせ始めるのだった。

 

 

SPKS-SM02ヤンマ

 

幻晶重機(シルエットモビル)の二番目に制作されたジャイロ機と呼ばれる機体。

その姿は大型のトンボを模して作られた、コックピットと貨物または客室用に作られたコンテナを換装する機構と本機の要である機体を浮かせる魔導回転浮遊翼(シルエットフローター)と姿勢制御と推進翼を担う機動制御翼(バランサ―ウイング)を持つ胴体部、板状結晶筋肉(クリスタルプレート)を四角形に斬り出し四枚重ねて鋳造したバッテリーキューブと呼称される物をを六個格納して飛行時のエネルギーの供給を行う後尾部で構成されている。

SPKS=SM01ホッパーとは構造上、使用部品は多くは共有できていないのだが最低限の起動に必要とされる部品に関しては共通している、その為応急修理程度であれば可能であり保有している組織はそれ程多くは無いが民間使用機が存在している。

また制空権の確保と防衛の為に多くの機体が軍用機として現在も主力兵器の一つとして使われ続けており、長年の運用実績からの信頼と愛着は多くのパイロットの支持を受けている。

人が活動可能領域を空に広げて数年が経った現在に置いて、制空権の保護は国土防衛の重要案件として常に議論されて来たが、その度にヤンマの重要性は認識され続けてきた。

この世界の大空はこの機体によって守られ、その姿は空への憧れ持つ人々の羨望の的となっている。

 

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