銀の鳳の影に潜む者   作:マガガマオウ

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お馴染みになってきましたが、閲覧及びご拝読ありがとうございます。
この話が、本作に置ける一つの節目となります。
如何か最後までお読み頂けると幸いです。


巨獣が討たれて影が動く~本格始動~

「よぉし、塗り終わったぞ~!」

「お疲れ様です。こっちも終わりました。」

 

べへモス討伐の為、グゥエールの剣に痺れ薬を塗る作業をしていた俺とエルネスティが、其々の作業を終わらせ一息ついた。

 

「後は、お前さんの仕事だけだな。」

「えぇ、任せて下さい。」

 

少しの休息の後、エルネスティはグゥエールのコックピットに入り自分が操縦する為の改造を施していく。

 

「大したもんだな、幻晶騎士の操縦系を掌握しちまうとは…。」

「おや?随分詳しいですね。」

「鍛冶師とは、何かと縁があってね。」

「ほほう!それは、奇遇ですね!僕も、知り合いに鍛冶師がいるんですよ!」

「はは、そうかい。だけど、今はそっちに集中しな。」

「あぁ、これは失礼。」

 

身を乗り出して続きを喋ろうとするエルネスティを、俺は静かに窘めた。

あっと言う間にグゥエールを起動させると、俺はその場から離れ近くの気に飛び移った。

 

「それでは、色々ありがとうございました!」

「気にすんな、俺もあれだけのデカブツに薬が効くか実験したかった所だ。」

「そうなのですか?では、最善の結果が出せる様に祈っておきましょう!」

「おう、気を付けてな!武運を祈る!」

「はい!行って来ます!」

 

やけに浮かれた声で、常識的に幻晶騎士では出来ない筈の動きでべへモスの下に走って行くエルネスティを見送り、俺も見通しに居場所を探して木から木へ飛び移った。

それから数分で小高い崖の上に立っていた巨木を見つけ上の方の太い枝に腰掛けマスクのゴーグルレンズから望遠機能を引き出してべへモスが居る辺りを観察した。

 

「おうおう、やってるねぇ…。」

 

べへモスの片目に、グゥエールの物と思われる剣が刺さり潰されていた。

 

「早速実行したのか、やるとは思ってたけど仕事が早ぇ~や。」

 

見事に切っ先から根本の付け根まで深々と刺さった剣を見て、エルネスティの行動力の高さを再認識した。

手元のタイマーを入れてからまだ数十分位しか経ってないのを見ると、現地に到着したのは約四分ちょい前だろう、という事は登場と同時にグサリッとやったらしい。

 

「さて…後どれ位で効き始めるかな~?」

 

俺の目測では、投与から四~五十分係ると踏んでいるが、実際は如何だろうか?

暫くは軽快に動き、べへモスを翻弄していたが途中から様子が可笑しくなった。

 

「…獲物がダメになったか?」

 

さっきから攻めるより避ける動きが多い、痺れ薬もまだ効いて無い所を見ると剣が強い使い物にならなくなったと取るべきだろう。

 

「あ~いや、原因はそれだけじゃねぇな…まぁ、あれだけ激しく動いてりゃあ…普通は起きるか。」

 

別の原因に思い当たる節が有り、俺は一人納得した。

グゥエールの本来の騎操士であるディートリヒ先輩を二人掛かりで寝かした後そのまま、外にほっぽりだす訳にもいかずコックピット内を一部破壊して詰め込んでおいたのだ、そのまま激しい戦闘に突入した為に揺れまくるコックピットの中で目が覚め現在も巻き込まれていると言う状況である。

 

「うん?おぉ!落ちてた武器を拾ったぞ、戦闘に集中してて気づけない筈なのに。」

 

またグゥエールの動きにキレが戻り、攻撃に移る回数も増えて来た。

 

「ありゃ先輩だな、宛ら獅子の上に乗るネズミの心境か?」

 

まぁ、見た目的には全く逆なのだが…そうこうしていると、少し離れた街道の辺りだろうかかなりの大部隊で進行する幻晶騎士の一団を見つけた。

 

「やっとご到着か、随分係ったじゃないの…。」

 

街付きの守護騎士団がようやっと到着したのを、俺は遠目で確認した。

ようやく戦闘らしい戦闘になって来たと思っていると、べへモスのブレスが炸裂した。

 

「…やっとか、効果が効き始めるまでに…約四十分、予想の範囲内だな…。」

 

べへモスがブレスを吐き出す時に少し間が空いたのを見た俺は、痺れ薬の効果が効いてきたと判断した。

とは言えだ、流石にあの大きさだ少し動きが緩慢になる程度しか聞いて無い様だが。

それでも、さっき迄エルネスティ達を相手にしていた時よりかは、動きが遅く更に対大型魔獣用の兵装を使われ機動力を殺がれる。

かなり優位な戦況に流れつつある中、突然べへモスが自身の真下に向かってブレスを吐き出した。

 

「奥の手ってか!奴さん本気になりやがったぜ!」

 

ブレスの影響で噴き上がった砂埃で遠くからの観察が難しくなったと思っていたら。

 

「なっ!普通立つかよ……あの図体で!」

 

べへモスはブレスの反動を利用して体を立ち上がらせた、山の様な巨体が二本足で立ち上がる様は正に怪獣そのものだった、そしてそのまま持ち上がった体を地面に叩きつけた。

 

「!おいおい…洒落に成ってねぇぞ。こっちにまで衝撃がきやがった!」

 

流石はあの巨体である、重さも一級品だ。

そんな膨大な質量が重力を伴って地面を叩くのだから、相当な負荷が大地に伝わっていたのだろうまるで地震の様な振動が森全体を揺らしていた。

 

「ありゃ、地雷も渡しといた方が良かったか?」

 

色々と足がつくことを恐れて、地雷を手渡すの渋った事を若干後悔した。

しかしふとある事を思い出した、演習前に森に仕込みを行った関係者の誰かが間違えて起爆性の地雷を埋めてしまったと言う報告があった事を、そうしているとべへモスの足元で急に爆発が起きた。

 

「…まさかな…。」

 

もしそんな偶然が起きていたとしてだ、じゃあ何故今まで発動しなかった?

 

「っ!そういや、試作品を作る時に軽い衝撃では起爆しないように頑丈に作ってたっけ…。」

 

うん……新しく作る時は、もう少し簡素な物にしよう。

何はともあれ、あれは試作で作った為に爆破の威力が馬鹿みたいに高い、さしものベへモスといえど、ただでは済まなかった。

騎士団の幻晶騎士が殆どやられて、前線が崩壊しけた時に起きた思いがけないハプニングである。

爆炎に巻かれ苦悶するべへモスに更なる追い打ちが掛る、エルネスティの駆るグゥエールが混乱に乗じて猛攻を仕掛けたのである。

 

「はは、随分息巻いてやがる。お気に入りの幻晶騎士ぶっ壊されて相当ご立腹らしいな。」

 

怒りの度合いが凄まじすぎて、若干引いてしまう。

体力を相当消耗しているのか、将又痺れ薬の効力がより強く効いて来たのか…いや、両方か。

べへモスはもう大して動けていない、このまま押し切れると踏んだその時だった、グゥエールの片足が損傷し真面に動けなくなった。

 

「……オーバーフロー、無理させ過ぎたな。」

 

奴はもう動けないと感じ取っただろうべへモスは、最後の力でグゥエールに突進を仕掛けた。

誰もがもう駄目だと思うだろう、だが俺は何故だかエルネスティが今考えてることが良く分かる。

 

「最後の最後で大博打か、悪くねぇな。」

 

あれは往生際の悪い人間だ、俺がそうなのだから奴はもっとだろう。

正に乾坤一擲の大勝負、この場で全て運を使い全力で行こ残りに懸けるそう考えてしまうのだ。

 

「全く、大した博打打ちだぜアンタ…。」

 

俺は、事の収束を確信して学園の馬車に戻る事にした。

その後、移動している馬車に飛び乗り人型と入れ替わると、何もなかったかのように学園に戻った。

後日の話をしよう、あの後べへモスは守護騎士団によって討伐されたと報じられた。

当然と言えば当然だ、それから巻き込まれる形となったディートリヒ先輩は重傷を負い診療所に長期入院する事になったらしい。

そして、陰の功労者にしてべへモス討伐の立役者であるエルネスティは近々王都にて国王陛下にご拝謁になると言う噂を耳にした。

成る程な、表向きは褒美を上げられない代りに直接会って欲しい物を聞き出そうって腹か、やれやれ有名人てのは大変だね。

そして俺達にも変化があった…。

 

「広いな…前まで、使っていた部屋とは比べ物にならないぞこりゃ…。」

「だが、お陰で鉄の精錬が出来るだけの施設が使えるようになったんだ、良かったじゃないか?」

「そりゃそうですけど…。」

 

あの後、試作の無線機が完成し試験の為に地元の領主さまに片方の無線機を送って実験を敢行、結果は成功してそのお祝いに何かを送ってくれる言うので、今より広い研究施設を所望したら本当に間取りにして貴族の屋敷二つ分は有りそうな敷地と建物それから専門の機材に至るまでを揃え送ってくれた。

 

「と、取り敢えず…研究室から、資料や何かを移動させましょうか…。」

「あぁ、そうだな…新入りも入ったし全員で引っ越しを始めるか…。」

 

この施設は表向き学生寮となっていたので、俺達の仲間は全員ここに住む事になっていた。

 

「あぁ、そう言えば聞いたかウェイン?」

「何ですか先輩?」

「エルネスティ・エチェバルリアが国王様に一勝負持ち掛けられたらしい。」

「?何故そんな事に?」

「あぁ、何でもエルネスティの奴が、国王様に相当無茶なお願いをしたらしくてな。」

「はぁ?それで、内容は?」

「要望に見合うだけの幻晶騎士を作れだとさ。」

「…彼奴なら、やれそうですね…。」

「そうだな…。」

 

思えばこの時から、俺は彼奴のうねりの中に絡め捕られ始めていたのかも知れない。

この後起こる大事件に関わって、俺の…いや俺達の運命は歯車は回りだしたのだから。

 

 

陸皇討伐

この日、我が国に迫った最大の脅威は守護騎士団によって取り払われた。

しかし、真の功労者は当時はまだ幼い銀鳳騎士団の団長閣下であった。

この事実は、国政に携わる者たちによって隠蔽され当時まだ中等部の学生であった団長閣下もこれに納得していた。

しかし、今日ここに於いてもまだ解明されてない不審な点があるそれは、戦いの途中で起きた謎の爆発である。

あれが討伐の大きな要因であるが故に綿密な調査が行われたが、今だその原因が何であるか解明されていない。フレメヴィーラ王国目録 陸皇の章後編より

 




ご拝読頂きありがとうございました。
またのご拝謁お待ちしております。
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