ご愛読頂いてる方がおりましたら、ここでお礼申し上げます。
初めての方は、如何か最後までご拝謁及びご拝読していってください。
「今回もダメだったか……。」
「空気を送る間隔が速すぎましたかね?」
「かもな…またパターンの練り直しだな~。」
この世界に生まれて漸くたたら製鉄の再現に乗り出した俺達は、聞いての通り苦戦している。
生前から興味があり、それ関係の書籍や文献などを読み漁り知識としては円熟していたが如何せん、肝心の経験が無かった為に匙加減が分からず基本的な工法以外は手探りな状況が続いていた。
「其れよりもだ、俺達の移動手段に検討中のあれの進捗はどうだ?」
「ん?あ~ぁ、そっちは無問題です。順調に進んでいますよ。」
先輩の言うあれとは、現在試作中の仮称魔導バイクの事だ。
さっきも言ったが、基本的には知識と経験が両立して初めて物事が成り立つのである。
この場合は、俺の生前の職業がエンジニアであった事で、設計と組み立ての経験と知識が十全に揃っていた事で作成が上手く運んでいた。
「そうか、しかしよく考えるよ魔導演算機を移動手段の乗り物に転用しようだなんて…。」
「ははは。それ言うなら、何で今まで誰も考案しなかったって話になりますよ。」
「そりゃお前、魔導演算機って言うのは幻晶騎士に取って無くては為らないパーツの一つだ、それだけ高価でもある訳だからおいそれと手は出せんだろう。」
「それでも、出力機としてはこれ以上に無い程優秀な部品でしょうよ。」
「まぁ~な…。」
この世界に置ける幻晶騎士とは前世の世界に於いての戦車や戦闘機などの軍事兵器である国土防衛の要である、実際幻晶騎士を超える戦闘能力を有する兵器も無く、そのパーツもこの世界の文明レベルで言えばオーバーテクノロジーじみた部分が有るとも言えた。
特に魔力転換炉と魔導演算機は、幻晶騎士の心臓と脳味噌の様な役割を果たす重要なパーツでもある、その為その入手も簡単では無く今回は、兄貴の武術の師匠が根回しして如何にか三機分を用意してくれた。
領主さまや先代たる先生だけでなく、嘗ての勇将たる兄貴の師匠までもが、ここ迄俺達に協力的なのかさっぱり分からない、分からないが貰えると言うなら貰っておいて損はない。
それにあの人たちと直に会ったが、後から難癖付けてくるタイプでもないと感じている。
そう言えば、最近先生から一度帰って来たら如何だと催促されていたなぁ~。
「あぁ、そう言えば……。」
先輩が何かを思い出したらしく、呟き欠ける。
「如何したんですか?」
「いやな、大した事じゃ無いんだが。最近、鍛冶師科の一年坊に幻晶甲冑って言う新機軸の兵器の開発に加わって欲しいって頼まれてさ、如何したもんかって悩んでたんだ。」
「幻晶甲冑って言うと、エルネスティの…。」
「あぁ、今の所は断ってるんだが、どうも最近エルネスティ本人が出張って来そうな気配が有ってな…。」
「…分かりました。先輩は暫く、ここに留まっていて下さい。」
「そうさせて貰うよ…はぁ、面倒な事になったな。」
最近エルネスティを中心にして始動した新型幻晶騎士開発のプロジェクトも中々難航しているらしく、鍛冶師科の先輩方が上手くいかないとぼやいていたのを何度か目撃した。
彼奴も彼奴なりに暗中模索の中なのだろう、だがこっちも二つのプロジェクトを立ち上げて人員がカツカツなのである、中核である先輩を取られる訳にはいかない。
それに奴の周りできな臭い行動を取る生徒を何度か目撃している、何方かのプロジェクトをいち早く一定の成果を出して切り上げ、其方の調査に移る必要が出て来たのである。
その為にも、前世からの経験の蓄積がある魔導バイクに力を入れ早めに仕上げたいのは先輩もよく理解してくれていた。
「こっちの事は俺に任せろ、お前は早く例の物を仕上げてくれ。」
「ありがとうございます。たたら製鉄の方はお任せします。」
「おうよ!」
気迫の籠った返答を貰い、俺もやる気を貰いながら魔導バイクを製作している研究室に向かって歩き出した。
学生寮に偽装されたこの施設は、二つの建物が中庭を挟んで建っている構造になっていて、通り側に面している方を住居棟にして更に、一階部分は普段倉庫として貸し出しているので倉庫街にも見える外見をしたいた。
そして、今俺達が居るのが奥まった所に建っている研究棟である、背の高い木々で隠されていて奥まで来ないと発見できない様になっている、勿論この中庭では隠密行動の訓練場にもなっている為に相当入り組んだ作りになっている。
そうして廊下を進み第二研究室と書かれた部屋のドアを開けて中に入る。
「お疲れ様です皆さん。」
「あ、ウェン兄さん。お疲れ様、たたら製鉄の方は如何だった?」
部屋に入り魔導バイクの開発に協力してくれている全員に挨拶していると、奥で作業をしていたカインが俺に駆け寄って来る。
「いや~、また駄目だ。先輩も頑張ってくれているんだが如何にもな…。」
「そっか…あぁ、こっちは大分仕上がって来てるよ。」
「知ってると言うか、俺も係わってんだから知ってて当然だろ。」
「はは、そうだねウェン兄さん」
俺達は談笑しながら、持ち場に着いた。
「それにして、一つ気になってたんだけど?」
「何だ?」
「ウェン兄さんは、何でそのたたら製鉄って方法に拘ってるの?」
「…カイン、俺達の目指す仕事の用向が何か分かるか?」
「えっ?それは、偵察と情報収集や攪乱工作でしょ、後は…。」
「要人警護とその他の雑事も含むと、多種多様な状況に対応しなければならない、時には暗殺なども熟す必要がある。」
「!……。」
「その時、切れ味が少しでも鋭い刃の方が重宝される。鈍い刃では、絶命するまで何度も刺すなり斬るなりしなければいけない、それは退散する迄の時間を大きく引き伸ばす結果に成りかねない。」
「でも、刃物の切れ味とたたら製鉄に一体何の関係が…?」
「精錬された鉄の純度だ。これが低いと、いざ剣を製作しても切れ味は悪くなる、だからたたら製鉄で精錬した鉄や鋼が必要なんだ、砂鉄や鉄鉱石を粘土製の炉で木炭を燃やして低温で還元する、それで純度の高い鉄の生産を可能にするんだ。」
「…ははは、参ったな。普段飄々としてても冷静なウェン兄さんが、そんな風に熱が篭った説明をしてくれるんなて。」
「ん?そうか?俺的には、何時もと変わらんつもりだが…?」
「うん。かなり情熱的に語ってた。」
「まぁ、それだけ高純度の鉄が、今の俺のには必要なんだよ。」
俺は、そう締めくくり作業を始める。
以前から錬金術科の生徒を仲間にできないかと模索していた俺達は、漸く念願の仲間をこの間に勧誘する事が出来た。
まぁ、向うも何時声を掛けてくれるか待っていた状態だったらしいが…。
兎も角、俺達は錬金術科から生徒を引き入れ魔導バイクを動かす為のマナを貯めて置く為のタンクと駆動系パーツとして検討していた結晶筋肉の技術を得る事が出来た。
俺達の初の機動兵器である、出来る事なら最善を尽くしたいと思うのは当然だと言っておこう。
それから暫く時間が経って、俺達の魔導バイクの完成の目途が立ち少しづつであるが、エルネスティ達の周りをちらつく影の調査に乗り出し始めた。
エルネスティ達は件の新型を一定の戦闘が可能な段階まで完成させたらしい、先輩が引き込まれそうになった幻晶甲冑と言う新機軸も無事完成したそうだ………まぁ、扱い易さは兎も角としてだが…。
背面武装と火器管制システムって言ったか?彼奴が、新しく提唱した是までに無い全く新しい兵器種の呼び名だと聞いている、成る程なこの世界じゃあ見るのも聞くのも初めてで若干ゲテ物の匂いすらして来る代物だ、だが彼方の世界で生きていた俺ならば解る話でもある。
向うのロボット物じゃよく見る手法だったもんな、ブースター関係は大概背面に付くしちょっと特殊な物だと腕が複数付いてたり足が無かったり、そう言う意味ではロボットは人体に近いだけの別物と捉えていても可笑しくない。
「そう考えたら、やっぱり彼奴は俺と同じ…っ!あれか…。」
今が尾行の最中である事は察して貰えるだろうか?ライヒアラに在籍している鍛冶師科の生徒の一人が夜も更け始めた頃一人で行動している事を調査している内に掴み、件の生徒の動向を探っている。
大通りから外れた裏の通りの一つに入っていた人影を追いかける、普段なら殆どの生徒が食事の為に外に出る為さして珍しい事でもない事から気に留めないが、今日は訳が違った。
「新型の動作試験の後って事は、反省会も終わった頃だろう。普通は疲れが回って外出なんかしたがらない、だがもし外側の人間、特に諸侯か国外の組織だった場合は定期報告で外に出る…睨んだ通り動きやがった。」
裏路地に入ってからはインビジブルローブを被っているから、気付かれる事はないだろう。
暫く後を着けて対象の生徒がとある店に入って行くのを確認すると、俺はローブを脱いでその店に入った。
「いらっしゃいって、お前さんか…。」
店の主人が俺の顔を見て、如何言う用向きなのか察した用である。
俺達は、ここの店以外にもめぼしい店には声を掛け、時に脅迫じみた事もしながら協力を取り付けていた。
「対象は?」
「あっちの席だよ…随分用心深く警戒してる。」
「逆に有難いな、俺はミルクでも貰おうか。」
「はいはい…。」
俺はバーカウンターの近くに腰を落とし、集音マイクをオンにした。
「例の新型は…まだ少し係りそうです。」
「何か問題でもあったのか?」
「戦闘能力は高いんですが、マナをドカ食いするようで…。」
「…見れる形に成るには後どれ位係る?」
「存外そこまで係らないかと…完成が近くなったらその時に纏めて報告します。」
「よろしく頼む…。」
その後一頻り飲んだ後、生徒は店を出た。
しかし、俺は話していた相手が何者なのかを確認する為この場に残った。
「学生の作った新型…どんなもんですかね『団長』?」
「まぁ、あまり期待せずに待とうじゃないかい。」
『団長?奴さんは何処かの騎士団か?それにあの訛り方…この国の人間じゃ無いな…。』
言葉の所々で、この国のものではない喋り方が出て来たのを確認していると視線を感じる。
『流石に、この時間に俺みたいな奴がいるのは怪しいか…頃合いだなずらかるとしますか。』
俺は静かに席を立ちミルク代だけおいて店を出た。
その日の夜風はこの時期にしては…穏やかだった。
ライヒアラ騎操士学園記録
鍛冶師科の生徒の誰かが書いた新型幻晶騎士レポート①
この日、我々ライヒアラ騎操士学園鍛冶師科の生徒は未知との遭遇を果たした。
エルネスティ・エチェバルリアによって考案された、それまでの常識に囚われない全く新しい技術の数々が私達の下にもたらされた。
だが何故だろう、悪寒の様なものがしてならないのは、あの技術の一つ一つが魅力的に映る反面とても厄介なものに見えてくのは如何言う訳だろうか?
兎に角、ここからは気分を入れ替えて新型開発に邁進しよう。
この後のレポートは、精神衛生上とても見れた物では無かった…。
今後はエルネスティ達原作の登場人物との絡みが多くなります。