終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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崩れ落ちる平穏

「あの年増めっ!厄介ごとだけ残して去りやがって…!いつか覚えてろよ!」

キョウヤは教室の一番後ろの窓際の席で外を眺めながらつぶやいた。

あの後質問攻めをされたというのは言うまでもない。

「ケントの記憶がないからって俺に聞かれても俺もその時の記憶は覚えてねぇって」

そう愚痴るキョウヤ。

このクラスは明らかに異常だ。どう異常かって聞かれたら全部が異常だと答えるしかないほどだ。

まず年齢からして異常だ。明らかに場違いな子供からもう大人だろと思う奴ら。

それにクラスのまとまりがない。

すごく馴れ馴れしい奴もいれば誰ともつるむ気がない奴もいる。

それは普通のクラスでもあり得ることだろうがこのクラスでは少し違う。

だれともかかわらない奴の人口が多すぎる。見たところ4人ほど興味なさそうにそっぽを向いてる奴や寝ている奴もいる。

5人といえば少し御幣を生むので訂正しよう。

24人中(キョウヤ含め)4人だ。約2割だ。

 

「おーい、話聞いてる!?いい加減返事ぐらいしてよ!」

そして最大の異常はこいつだ。

確か名前は月野 宇佐美(ツキノ ウサミ)っていったな。みんなからはウサギと呼ばれているらしい。

見た目は子供なのにその小さな体に不釣合いの大きな胸が特徴的だ。

それに制服の上にウサミミパーカーを着ている。

そして体中から溢れんばかりのバカオーラを出している。

バカだからなのかそれともほかの何かなのかはわからないがずっとキョウヤに付き纏っている。

「早くデーモンを倒して実力見せてって言ってるの!」

ずっとこんな調子でついてくるものだからキョウヤの精神はもう限界寸前であった。

「あぁ、もう!うるさいなお前は!言っただろ、俺もあんまり覚えてないって。なのに嘘だとか言ってずっと付き纏うなよ」

キョウヤはついに爆発した。思いっきり怒りをぶつけたがウサギは平然そうにこう言ったのだ。

「そんなに付き纏ってないじゃない!バカだからわからないのかなぁ?」

キョウヤはその言葉を聞き今すぐ殴りたくなったが必死に抑え込んだ。

「あのなぁ、教室と廊下だけならまだいいがトイレにもついてこなくていいだろう?」

そう、実はキョウヤはトイレにまで付き纏われていた。

「あんたいま私のことをバカにしたでしょ!?トイレにまでついてくる淫乱ビッチだって思ったんでしょ!」

「少なくとも俺はそう思ってなかったが、お前がそう思ったならそうかもな」

そう嘲るように言ったキョウヤ。

どうやらその一言で相当ウサギは怒ったらしい。

「あぁそうやってバカにして!すっごく頭に来たよ!これでもくらって逝っちゃいな!」

そう言いウサギは勢いよく羽織っていたパーカーの内ポケットから銃を抜きキョウヤに突き付けた。

その流れるような動作にキョウヤは息をのんだ。

「さぁ、早くどうやってデーモンを倒したのか言って。それにさっきの言葉も訂正してもらうから!でないと頭が吹き飛んじゃうよ?」

「おいおい、そんな物騒なモノ出すなよ…」

キョウヤはなだめるように言ったがウサギの耳には届いていない様だった。

 

「おっと、味方を撃つようなまねをする気かい?」

その時、ウサギの後ろから男の声が聞こえたかと思うと、ウサギが宙に持ちあがった。

「ごめんよ、編入生君。こいつバカだから俺があっちに回収しておくね。」

見事にウサギのパーカー部分を持ちひっぱりあげている。

ウサギがまるで首筋を持って持ち上げられた猫のようだ。

「離せよ、バカナイト!あんたも頭吹っ飛ばされたいの!?」

そう言い暴れるウサギ。まるで子供のようだなとキョウヤは思った。

「だから味方を撃とうとするなよ。あぁ、あとお望み通り離してやるからしっかり着地しろよ?」

今言った意味が分からないといった顔のウサギだったが瞬間その目を驚きの色に変えた。

ナイトと呼ばれた男がウサギのパーカーを話して床に落としたのだから。

着地に失敗したらしく頭を打ってうつむくウサギをしり目に男はキョウヤに手を差し伸べてきた。

「おっと、自己紹介が遅れたな。俺は焔(ホムラ)ナイト。ヨロシクな、え~と…キョウヤだっけ?」

焔ナイト、身長は180を悠に超えるであろう長身。男の髪なのにさらっとしていて美しい黒髪を少し長めにしている。

そして瞳の色はうっすらと赤い。

細見だがウサギを軽々と持ち上げられる力があるのだから不思議だ。

そして何よりもイケメンだ。それもただのイケメンではない、群を抜いたイケメンだ。

こんなイケメン相当いないだろうなぁとキョウヤは思っていた。

「あぁ、ヨロシクな」

キョウヤはそこで握手をしようと手を差し伸べた。

「実はさ俺、お前に興味あるんだよね」

そう聞いた瞬間キョウヤは差し伸べようとしていた手を引いた。

「ま、まさかお前ホモか…?」

恐る恐る尋ねるキョウヤ。

ホモ、それは男を狙う男。つまりは同性愛だ。それと同時に恐怖の象徴である。

「ホモじゃねーよ!」

さっきまでのクールな一面はどこへ行ったと思うほどに荒れた感じでないとは言った。

そこはかとない威圧感が漂う中ウサギが言った。

「犯罪者が自分は犯罪者じゃないというのと同じで、ホモも自分はホモだと認めてないんだよ」

瞬間その場が凍りついた。一瞬の無音、その後にナイトが口を開く。

「ウサギちゃん、こっちにおいで。今からおいしく料理してあげるからね」

ナイトは優しい声でそう言った。しかし目は笑っていない。

「ひぃ!?ちょっと何本気にしてるのバカナイトはぁ。そんなの嘘に決まってるじゃない…」

そう慌てて言うウサギ。しかしその言葉が届いているのかどうかわからないがナイトは着々とウサギとの距離を詰めていった。

「キョウヤ、助けて!助けてくれたらどんなことでもするから!」

「本当か?」

キョウヤはそこでウサギをからかってみたくなった。

さっきまでのお返しもかねてとんでもないことを言ってやろうと思った。

「じゃあバニーのコスプレをしてくれたら助けてやるよ」

「うん、いいよ!だから早く…!」

「いや、ちょっと待てよ。バニーだけだと物足りないから人参もつけよう」

「人参もね!分かったからはや…」

「語尾にぴょんを付けてもらおう」

「はぁ!?何言って…ってそんな場合じゃないんだ、うん、ぴょん付けるから早く!」

「今からつけてくれないとヤダなぁ」

「う…!早く助けてくれぴょん!ホントに助けてくれぴょん!」

「あとは~…」

キョウヤはノリノリだった。さっきまでの鬱憤を少しぶつけてやめにするつもりがついついウサギのいじめてオーラを受けてしまっていた。

キョウヤが考えていた瞬間、ウサギの方に怪物の手が置かれた。

「ひぃ…だぴょん!」

「あ、こんな状況でもちゃんとぴょん付けるんだ」

キョウヤはからかいがちにそういった。

「あ、当たり前だ…ぴょん!ぴょんを付けなくて助けてくれなくなったら困るぴょん!っていつまで待たせるつもりだぴょん!」

そういう間にも怪物は近付いてくる。その怪物の顔はまるで仏のような優しい顔だった。

「い、いやだぴょん・・・まだ死にたくない…ぴょん!」

キョウヤがそろそろ本気で助けてやろうかとしたその時

「はぁ、ナイト、そのぐらいにしてあげたら?それにキョウヤも。早く助けてあげなよ」

そう言いながらユキがやってきた。ついでにケントも。

 

「助かったぴょん!少しちびったかもしれないぴょん…。ユキはマジで神様だぴょん!」

そう言いユキに泣きつくウサギ。

「ウサギって語尾にぴょんを付けてるの!?マジかわい・・・グヘェ!?」

ケントは真っ赤な顔をしたウサギから鳩尾を殴られその場に崩れ落ちた。

「キョ、キョウヤ!何バカなことさせるんですか!?今思うとすっごく恥ずかしいんだけど!」

真っ赤な顔で睨みつけてくるウサギ。

こいつ黙っていれば可愛いんだけどなぁと思うキョウヤだったが口に出すことはやめておいた。

「で、キョウヤ達は何をしてたの?」

ユキがそう尋ねる。

「あぁ、実はナイトってホ…」

そう言いかけてキョウヤは止まった。なぜならとてつもない重圧を感じたからだ。

「い、いや…何でもないぞ、うん。なんでもない」

そうきょどるキョウヤ。最後の一言は自分へ言い聞かせるようにつぶやいた。

「何でもないわけないじゃん。じゃないとウサギがこんなにならないしさ。私には言えないことなのかなぁ?」

下から顔を覗き込むようにしてそう言ってくるユキ。

(くそっ…そんな顔するな!そんな顔で見つめられたらいいたくなるだろ!)

キョウヤはそう思ったが必死に自分を落ち着かせた。

「いや、そういう事じゃないんだけどね…なんていうかさ…」

「ナイトは実はホモなのよ!」

キョウヤが必死になって言わないようにしていたことをウサギはあっさりと言ってのけたのだ。

「えっ!?そうだったの…!?」

驚くユキをしり目に

「ウサギちゃん、今度はどうなるかわかるよね?」

ナイトはまたも仏の顔をしてユキを狙った。

さっきよりも比べ物にならないぐらいの速度だ。

きっとこの場にいる奴ら全員ナイトにやられるんだと覚悟を決めたキョウヤ。

「生まれた時は違う場所だけど、死ぬときは一緒だよ!」

そう意味の分からないことを言うウサギ。

「え?何、どういうこと…?」

いまだに状況を理解できていないユキ。

そして床に突っ伏して気絶しているケント。

誰ひとりこの状況を変えることができるわけがなくナイトの魔の手がせまる。

 

「おい、少しは落ち着け。騒がしいぞ、ナイト」

少し低めの声音でそう言った男がこちらに歩み寄ってきた。

身長はこちらも優に180センチは超えている。短めにした金髪に彫りの深い顔。

そして幅の広い体格をしたいかにも筋肉質な男だ。

「あ、あぁ。ユラか。すまんな、うるさくしちまって」

ユラという青年に声をかけられた瞬間ナイトは憑き物が落ちたように元に戻ったのである。

「えっと…あなたは…?」

遠慮がちにその仏に名を訪ねてみるキョウヤ。

「宵裂 遊雷(ヨイザキ ユラ)だ」

淡々と自分の名を告げた青年は気怠そうに自分の席へと戻っていく。

「あー、なんだ。ユラはスゲェあがり症だからさ。悪い奴じゃないから仲良くしてやっ…」

そこまで言ったナイトは宙を飛んだ。突然のことで頭がついて行かない。

しかしただ一つ言えるのはユラがナイトを背後から思い切り蹴とばしたということである。

「オレはあがり症じゃねぇ。バカにするのもいい加減にしろナイト」

そう言い残しユラは去っていった。

「ま、まぁアイツはあんな奴だから…取り扱いにだけは気をつけろ…」

そう言い残してナイトは倒れた。

後には無情にも授業の終わりを告げる鐘が鳴るばかりである。

 

その鐘を聞きながら自分の席に着いたキョウヤは窓の外を見上げた。

「やっぱり面倒なことになったな…」

口ではいやそうに言ったものの唇の端は少しにやけていた。

 

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