ピクニック気分
さて腹ごしらえもそこそこに俺たちは出発することに。
このままここにいても状況は何も変わらないしむしろ悪いほうへ進む予感さえする。
もし俺たちがここにいるということが知れたらすぐに消される可能性もある。
なのでやはり早く行動に移すのが効率的だろうと考えた。
「お前ら準備は整ったか?」
最低限の荷物を詰めた小さなカバンを肩に下げながら俺は皆に確認を取る。
全員用意できているようでこくりと小さくうなずき合った。
全員の目にはこれから来るであろう事象に抗うように鋭い光が宿っていた。
「さて…出発だ!」
そうしてオレたちは海岸を後にし森へと向かう。
途中皆一様に名残惜しそうに海岸を見つめていた。
オシリスでは珍しい海ということもあるし俺たちが最後に体感する平穏の場所になるかもしれないからだろう。
ここで遊んだあの時間が永遠に続けばよかったのに…
全員がそう思っているだろう。
だがそれでも俺たちはやらなければいけないのだ。
俺達の平穏を取り戻すために闘わなければならない。
「ねぇセンパイ?またみんなで海、来ようね?」
「あぁ…そうだな」
俺はキラのその言葉に力強くうなずいたのだった。
そして現在は森の中。
ケント曰く森を通り抜ければすぐに首都があるらしい。
ざくりざくりと一歩一歩を強く踏みしめて俺たちは歩く。
だがいくら歩いても周りは木々だらけ。
いつまでたっても森から出れる気配はなかった。
「ねぇお兄ちゃん、こうしてみんなで森を歩いてたらピクニックみたいだよね!」
「ピクニックってなぁ…」
ユキのほのぼのとした言葉に俺は頬を緩める。
周りの皆もピリピリとしていたムードが晴れていく。
「そうです!ピクニックだと思わないとやってけないです!」
「だよなぁ…マリナの言うとおりだと思うぞ。俺もピクニックだと思うことにするよ」
「ケントが真似したからマリナピクニック気分やめるです!」
「なんで!?」
この二人はいつでもテンション高いよなぁ…
俺が感心して見ていると突然キラが鋭い声を出した。
「みんな、止まって…声も出しちゃダメ」
どうしたことかと周りに緊張が走る。
ごくりと誰かが唾を飲む音がやけに大きく聞こえた。
「その奥に…誰かいる…」
キラはある茂み、その奥の少し開けた場所を指差してそう言った。
俺は目を凝らしてみるも木々がじゃまであまりよく見えない。
気配を殺しながら移動しなんとかそこを見ることができた。
そこにはキラの言うとおり人が居た。
それも3人。
そいつらは全員銃を手に持ち小さな剣を腰にさげている。
さらに全員同じきっちりとした服装を着ていることから軍隊ということもわかった。
何故軍人がこんなところに?
俺が疑問に思っていると横からキラが耳打ちを。
「アイツらがいる原因は多分…見て、そこ」
キラが指差す先、そこには小さな馬がよろよろと危なっかしくたっていた。
いや、馬というと語弊があるな。
馬は馬だが背に真っ白な翼がある。
それに小さいながらもどこか神々しい雰囲気も醸し出している。
「あれは…ペガサス?」
「うん…多分あれの毛皮を取ってる最中じゃないかな?」
ペガサスの毛皮は最高級の素材として高値で取引される。
その毛皮で作った服なんてセレブでも手を出すのを戸惑うほどのお値段なのだ。
でもおかしいぞ?
確かペガサスの狩猟は制限されていたはずだ。
それはこの大陸全土に適用されているはず。
ペガサスの狩猟が承認されるのはランダムに決められた数日間のみ。
狩猟解禁の1週間前には必ずニュースなどで取り上げられ街がお祭り騒ぎになる。
それにペガサスの狩猟は4人1チームで行わなければならないという原則もある。
だがアイツらは3人。
これは明らかに密猟者だろう。
さらにその根拠をあげるとしたらペガサスの狩猟の際には麻酔銃のみを使うとなっている。
無駄に傷つけないためだ。
だがあのペガサスはよろよろになっている。
よくみてみると足から血を流していた。
「あいつら…!」
俺は耐えかねず茂みから出ようとする。
が、それはキラに取り押さえられた。
「センパイ…今私たちが言っても無駄な混乱を生むだけ…悔しいけど放っておくしか…」
「それならわたくしに考えがありますわ、お兄様方?」
と、イリヤがニヤリと口元を歪めた。
「マリナの解説コーナーの時間です!今日はペガサスの狩猟について解説するです!」
「ペガサスについてか…なんか今日は楽しそうだな」
「ケントはペガサスがどんな動物かわかってるです?」
「おう!馬に羽が生えた奴だよな!真っ白で凛としててカッコいいよなぁ」
「じゃあケントはそれを狩猟するのに許可がいるのは知ってるです?」
「あぁ、もちろんだ!ペガサスの狩猟には国が認めた特別なライセンスが必要でそれを以っているのも各国数十人ぐらいって噂だ」
「ちっ…正解です…」
「正解したのになんか不機嫌!?」
「むぅ…マリナちゃんがびしっと説明したかったです…じゃあじゃあこれは知ってるです?ペガサスの狩猟のルール!」
「え、え~と…知らないな…(ホントは知ってるけどさ)」
「ケント…嘘ついてるです!その顔は嘘ついてるときの顔です!」
「え!?俺顔に出てた…?」
「やっぱり嘘ついてたです!マリナちゃんに嘘つくなんてケントは最低です!」
「ゴメンよマリナぁ…」
「許さないです!罰としてあとはケント一人でするです!」
「そんなぁ…なぁ許してくれよマリナ…」
「知らないです!」
「…仕方ない、なら俺一人で…え~と…ペガサスの狩猟のルール、一つ目は4人でチームを組まないといけないこと。これはお互いが見張り合って行き過ぎた狩猟をしないためにやってることだ。次に残忍な武器を使用してはいけないということ。使用する武器は必ず麻酔銃だ、捕まえたペガサスは自然に返さないといけないから傷をつけちゃいけないんだ。…っとこれぐらいかな」
「むぅ…ウザいぐらい完璧なのです…ケントなんてこれを触ってればいいのです!」
「いや、唐突に毛皮を渡されても…ってこれは!?この手触り!モフモフ感!フカフカ感!それにほんのり温かい!まさかマリナ…」
「ペガサスの毛皮です」
「やっぱり!これってヘタしたら数百万だよな…」
「はいです…ちなみにそれは希少な品種のペガサスの毛皮です。一般人は触ることすら許されないです」
「え…?そんなの俺が触っていいのか…?」
「いいわけないです!ということで弁償です!お買い上げです!500万よこすです!」
「り、理不尽だ…」