お兄様の記憶 part.1
わたくしがお兄様と出会ったのはうだるほどの夏の日でしたわ。
わたくしはその日お母様が帰ってくるのをずっと楽しみにしていました。
両親はともに軍人で重大な位置についていたので家にはほとんど帰ってこれなかったのだ。
なので幼い私は寂しさを紛らわすためにずっと人形で遊んでいた、まぁこれがわたくしの能力の起源というやつですわ。
いや、それはさておき、その日は久しぶりの母との再会に期待に胸を膨らませていた。
いつ帰ってくるかドキドキしながらわたくしは部屋を掃除していく。
やはり母には綺麗な部屋に帰ってきてもらいたい。
私は精一杯頑張って掃除をした。
と、ガチャリと玄関のドアが開く音と同時、私は駆け出した。
玄関には大好きな母の姿…それともう一つ知らない人影が。
それは男の子だった。
わたくしより年上そうな身長に細身の腕、そして何より気になったのがその子の瞳だった。
全く覇気が感じられない。
まるで大切なモノでも失ったような…そんなイメージを与えた。
「お母様…この子は?」
わたくしは恐る恐る母に訊いた。
対する母は
「今日からこの子がイリのお兄ちゃんになるのよ。キョウヤっていうの、仲よくしてあげてね」
と、満面の笑みでそう言い放った。
「きゅ、急にそんな…!」
「えぇ!?イリこの前お兄ちゃんが欲しいって言ってたよね?だからお土産にお兄ちゃんもってきたんだけど…」
お土産にお兄ちゃんを持ってくるって…
幼いわたくしでもそれはなんだか危ない事じゃないかとわかってしまう。
けど…それでもいいかなと思う自分がいた。
やっぱりわたくしはお兄ちゃんを欲していたんだと思いますわ。
「じゃあ二人とも仲良くするのよ~」
これがわたくしとお兄様の最初の出会いですわ。
「おい、ちょっと待てイリヤ」
「なんですのお兄様?」
俺はイリヤの話を途中で遮る。
どうしても訊いておかねばならぬことがあったからだ。
「じゃあイリヤは…俺の義妹?」
「えぇ、血の繋がりはありませんわ。しかし心ならそこのエセ妹よりずっとず~っと強く繋がっていますのよ!」
「え、エセ妹はそっちでしょ!私はお兄ちゃんとちゃ~んと血が繋がってるんだから!」
「血の繋がりが無ければ結婚できますのよ?私はお兄様とも~っと仲良くなれる関係にいますのよ?」
「う、うぅ…血が繋がってても結婚するもん!私はお兄ちゃんのお嫁さんになるの!なるったらなるもん!」
「ま、まぁ落ち着けって…それより続きを」
話の雲行きがおかしくなってきたので慌てて静止させる。
これ以上の論争は俺の精神衛生上アウトである。
「そうですわね…では続きを…」