終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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お兄様の記憶 part.9

「お兄様!こっちですわ!こっち!」

「待てよイリヤ…そんなに走ると怪我するぞ?」

「大丈夫ですわよ!そんなことよりお兄様?疲れすぎじゃありませんの?もう高齢者ですの?」

「誰が年寄りだよ…俺はまだ若いって」

「若いなら若いなりに頑張ってもらわないとですわ!ほら早く来ますのよ!」

「はいはい…まったく…元気だけは有り余ってるんだから…」

「女の子はスイーツのためなら元気になりますのよ」

「そういうモノか…?」

「そういうモノですわ…あ、わたくしお金が底をついたみたいなのでお兄様のおごりでお願いしますわ」

「…ったく…ワガママな妹なんだから…」

初めて戦いに出てから数年たった。

わたくしたち兄妹はとても仲良くなっていた。

生まれた時から一緒だったように…

今もこうして買い物を楽しんでいる最中なのだ。

「次はどんなスイーツが食べれるんでしょう…楽しみですわ」

「そんなに食ったら太るぞ?いいのか?」

ニヤニヤと意地悪く聞いてくるお兄様にむっとなってしまう。

お兄様はこういうところデリカシーが無いなと思ってしまう。

でもそんなところもいつものきりっとした感じとギャップがあって可愛いなと思ってしまうが…

「そうですよお嬢様、太ってしまいます!」

鞄からひょっこりと出てきたセバスチャン。

こういう時だけ出てくるのはどうにかしてほしい。

「いいんですの!わたくし食べた分だけ運動してますもの」

わたくしは鬱陶しい人形をカバンに押し込みながらそう言った。

運動というのはやはり日課の訓練だ。

そう、わたくしたちはまだ日課の訓練を欠かさない。

今まで一度だって怠ったことがない程だ。

そのせいか今では国で上位に入るほどの強さを獲得してしまいましたが…

いや、国外でもその実力は知れ渡っている。

人形遣いのイリヤと暗黒騎士ハデス、この名を知らないモノは最早いないだろうとさえ言われているほどだ。

まぁそんなわたくしたちを良しとしない人間も国内にはいるのだが…

「おっ、今日も兄妹仲良くお出かけとは…お前ら飽きないよなぁ…」

飄々とした喋り方でわたくしたちの前に現れた男。

真っ白な長髪に細身の身体、真っ赤な瞳、まるで死神を連想させる男、アインだ。

この男、わたくしたちの事をよく思ってない人間の一人だ。

「なんですの?冷やかしにきたなら即刻帰ってもらえると助かりますの」

わたくしは目で邪魔だと訴えかける。

お兄様もわたくしと同じように邪魔だという視線を向けた。

こいつはどうも好かない、というか気に入らない。

見た目とかわたくしたちへの接し方もその要因だがその最たるものがある。

それは殺しをたのしんでいることだ。

こいつは戦場に自分が楽しむために立っているのだ。

『俺は人間の最後の断末魔をきくのが大好きなんだ…やっぱりゾクゾクするだろ?それに消えていく魂のあのもがきようったら…はは!笑えてくるだろ?あれを聴いてるときだけでも俺は生きてるって感じるんだよ』

過去にアインがそんな話をした時からわたくしはこいつが絶対に許せない相手となった。

早く死ねとさえ思ってしまうほどにキライだ。

だがこいつは高い戦闘スキルを持ち合わせてるので全くしなない、ほとんど必ずといっていいほど戦場から無傷で戻ってくるほどだ。

「はぁ…その目…やっぱり俺は嫌われてるのか…とっておきの話を持ってきてやったっていうのに…」

アインは大げさに残念だといった風に肩を落とす。

本心ではこんな事思ってもないくせに…

「話…?おい、教えろよ」

お兄様の威圧するような声が響く。

そこから相当苛立っているのだということが分かった。

なにせ妹と楽しく買い物してる最中に邪魔されたのだから。

シスコンのお兄様なら怒るに決まっている。

「それが人に物を頼む態度かなぁ?んん?」

「ちっ…お願いします…教えてください…」

あぁ…こいつ許せない…

お兄様をバカにして…

いつか八つ裂きにしてやりますの…

「あんまり誠意がこもってないけど…まぁ許してやるよ。なんたって俺は心が広いからなぁ!」

「…ウザいですわね…死ねばいいんですわ…」

アインに聞こえないようにぼそりとそうつぶやく。

こうしないとどうしても気持が抑えられなかったからだ。

「来週オシリスに戦いを挑む。その第1選抜部隊にお前ら二人が選ばれた。戦力の最大の要だとよ…作戦もお前らを主軸にして立ててあるんだとさ」

わざわざそんなことを言うためにわたくしたちの休日を潰したのかと思うと居てもたってもいられなくなる。

だがそんなことより目前に迫った大きな戦いの事を気にしなくては…

オシリスはこの国と距離が離れているため戦争になることが少なかったのだが…

ついに侵攻することになったか…

「お、オシリスに…戦争…?おい…冗談だろ…?」

震える声でお兄様がアインにそう言った。

顔を真っ青に染めてさっきまでとまるで別人のように様子が違う。

苦しげに呻いているようなそんな顔だ。

「冗談なんか言うかよ…うえに連絡取ってみろよ、ちゃんとあるっていうぜ?…っと俺はそろそろ行くぜ。お前らのアホ面をこれ以上みてたらアホがうつっちまうからなぁ!あはは!」

ゲスな笑いを浮かべながらアインはこの場を去った。

その背中に殺意をおぼえるも必死にこらえる。

「ちっ…最悪ですわ…ねぇ、お兄様…ん?…お兄様?」

それにしてもさっきからお兄様の様子が変だ…

ぼぅっと突っ立ってまるで生気がないように思える。

「オシリスに…戦いなんて…無理だ…」

小さく口が動きこぼれ落ちた弱々しい言葉。

わたくしはそのときどうすることもできなかった。

 

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