終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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第31章「アピールタイム」
久しぶりのデート


「お兄様とデートお兄様とデート♪嬉しいですわ~」

「おいおい、そんなにはしゃぐと転ぶぞ?」

「大丈夫ですわよ~」

今にもスキップをしだすんじゃないかと思うほどに上機嫌のイリヤ。

俺とイリヤは二人で街に出てきていた。

理由は簡単だ。

それは数分前の事である。

結局トランプは飽きたということで公平にじゃんけんで決めた。

そしてその景品がこうだ。

1位は俺と一緒のベッドで眠れる、2位は俺と一緒にお風呂、3位は俺と一緒に買い物券諜報活動、4位は俺からのデコピンということになった。

ちなみに4位になったウサギには出かける前に思う存分デコピンを食らわしておいた。

「お兄様!こっち!こっちにおいしそうなモノがありますの!」

と、こんなことを考えてる余裕なんてなかったな。

今はあのお嬢様が満足できるまで付き合ってあげないと…

「お兄様!早く早くですわ!」

「はいはい…」

遠くで手を振るイリヤの元に急ぎ足で向かう。

「もぅ…お兄様遅いですわ!」

少し頬を膨らませてぷりぷりと怒るイリヤが可愛くてにやけてしまう。

いやいや、にやけちゃダメだろ…ここは兄の威厳をしっかり見せてだなぁ…

「ん?お兄様?何変な顔してますの?変顔の練習ですの?」

「え!?い、いやぁ…これは…あはは…」

どうやら顔のにやけを抑えようとしたらおかしくなってしまったようだ。

イリヤがドン引きしてるし…俺相当変な顔してたのかな…?

「それはそうと…お兄様!わたくしこれが食べたいですわ!」

そうしてイリヤは一つの屋台を指差した。

「あの店って…」

そこからはミルクのような甘い香りが漂ってきている。

とてもおいしそうなにおいで自然とお腹が空いてきてしまう。

「クレープか…いいぞ、食べようか」

「やった!ありがとうですわ!お兄様大好きですわ!」

う~ん…クレープおごるだけで大好きって言われるとなんだか複雑だ…

とても現金に聞こえるのは俺だけではないだろう…

「そうだなぁ…俺はチョコバナナかな。イリヤは?…イリヤ?」

屋台の前に立ち食べたいものを選んだのだがイリヤの反応が全くない。

心配になってみてみるとキラキラと目を輝かせながらメニューに魅入っていた。

口からちょっとよだれ垂れてるし…

そんなにおいしそうか…?

普通のクレープだと思うんだけど…

ふと俺はイリヤが黒の国の料理はおいしそうな見た目じゃないと言っていたことを思い出した。

多分イリヤにしてみればこのクレープさえおいしそうなまるでごちそうのように見えてるんじゃないだろうか…

「わ、わたくしは…このイチゴと生クリームがいっぱい入ったのを…」

「かしこまりました」

笑顔で受け答えする店員。

慣れた手つきで目の前でクレープが作られていく。

「うわぁ…ごくり…」

イリヤはその光景を食い入るように見ていた。

時折感嘆の息を漏らしたりして…

それは見ていてなんだか和むモノだった。

同時にここまで喜んでくれたということに俺自身喜びを感じていた。

「2つで500円になります」

俺はポケットから財布を取り出す。

一応国を出るときに必要経費として少量のお金が支給されていたのだ。

こういうところは結構優しかったりするオシリスである。

俺はお金を払いクレープを受け取る。

「う~ん…ちょっと移動しようか…どこか座れるところは…」

「そこの広場ならベンチがたくさんありますよ」

「お、ありがとう。じゃあそこに行ってみるよ」

俺の独り言に店員は親切そうにそう答えてくれた。

というわけで広場に移動する。

がやがやとにぎわっていてとても戦争中の国じゃないみたいだ。

ってその中でクレープを食べる俺たちってのも戦争する気配なんて全くないか…

「よっこいしょっと…」

ベンチに座る際に年寄り臭い声が出てしまった。

ずっと歩きっぱなしだったからかな…?

「お、お兄様…?もう…もう食べてよろしいですの?…わたくしもう我慢できませんの…」

そこにはずっとまてをされてご飯をお預けにされた犬のようなイリヤが。

眼はずっとクレープに釘付けだしよだれ垂れちゃってるしなんだか息荒いし…

そんなに食べたかったのかよ…

「そうだな。それじゃ食べようか」

「えぇ!じゃあ…いただきますですわ!」

周りの人達がびっくりするほどの大きな声を出すイリヤ。

隣にいる俺にも視線が注がれてなんだか恥ずかしくなる。

「あ~む…」

大きく口を開けてクレープを頬張る少女。

パクリという擬音が聞こえてきそうなほどに豪快な食べっぷりである。

そしてもきゅもきゅと咀嚼。

だんだんとイリヤの瞳から涙がこぼれ落ちてくる。

「え!?も、もしかして…おいしくなかった…?」

「違いますの…これ、とってもおいしいですわ…!わたくしこんなに甘くてかわいくっておいしいものなんて初めてですわ!」

ふぅと俺は安堵の息を。

どうやらイリヤはまずくって泣いてたんじゃなくておいしくって泣いてたんだ…

って泣くほどに美味いって…

俺も一口クレープにかぶりつく。

甘ったるいのかと思っていたが全然そうじゃなくて…

男の俺でもパクパクといけてしまいそうな感じだ。

とてもおいしい。

「うん!おいしいな!」

「…」

「ん?なんだイリヤ?俺をずっと見て…」

さっきから俺が食べてるところばっかりずっと見てるけどどうしたんだろう…?

「お兄様のクレープ…食べてみたいですわ…」

「なんだそんなことか…はい…言っておくけどお前のも一口くれよ」

「もちろんですわ!」

「それじゃ…」

俺が手渡そうとするとイリヤは大口を開けて待っていた。

もしかして…あ~んとかそういうノリか!?

ここは人が多いし恥ずかしいな…

って人が少なくても恥ずかしくて出来そうもないんだけど…

「あ~ん!」

痺れを切らしたようにイリヤは声を上げた。

えぇい!ままよ!

「あ、あ~ん…」

俺はイリヤの口に自分のクレープを持っていく。

はむっとイリヤは可愛らしくそれを口に含んだ。

「うん!こっちもおいしいですわ!…それじゃお兄様…あ~ん」

「あ~ん…」

口の中にイリヤのクレープが入ってきた。

苺のすっぱい感じと生クリームの甘ったるさが口の中で絶妙にマッチしてとてもおいしい。

「こっちもおいしいな…ありがとイリヤ」

「どういたしましてですわ!」

何だろう…周りからの視線が妙に生暖かい…

居心地が悪くなった俺はそそくさと残りのクレープを口に押し込む。

「ほら、いくぞイリヤ」

「あ!待ってくださいですわ!」

…そう言えば…俺イリヤの食べかけ食べたし…イリヤが口付けた俺のも食べたし…

これって…間接キス!?

イリヤはそれに気付いたのかな…?

ふとイリヤを見るがそんなことを気にしている様子もない。

気にしてるのは俺だけか…

うん!気にしないでおこう!それに兄妹だしノーカウントだよな!

ぎ、義理だけど…ノーカウントだよね!?

「あ!お兄様!ちょっとしゃがんでくださらない?」

「お、おう…」

「ぺロ…」

突然イリヤが俺の頬を舐めてくる。

急なことにどきりとしてしまった。

「クリーム…ついてましたわよ!」

「そ、そうか…ありがとな…」

これじゃ余計に意識しちまう…

結局この後は悶々としながらイリヤと過ごしたのだった…

 

 

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