「そ、それじゃ入るよ…センパイ…」
「お、おう…」
ドキドキと心臓が高鳴っているのが分かる。
今にも爆発してしまいそうだ。
結局あの後ろくな収穫もないまま帰ってきて夜が更けて…
そしてこのお風呂の時間が始まってしまった。
2位になったキラと一緒にお風呂…
露天風呂で結構な広さがあるので密着するっていうイベントは発生しないはず…!
ガラガラと浴場へと続く扉が開いた。
そこからバスタオル一枚を纏ったキラが姿を見せた。
真っ白な素肌がやけに眩しい。
「うぅ…そんなに見ないでよ…恥ずかしい…」
「ご、ゴメン…!」
俺は顔を背ける。
顔を背けても脳裏にはしっかりとあの光景が焼き付いてしまったようで…
どうしてもキラの肌が俺の目をかすめていく。
健康そうな肢体にすべすべしてそうな肌…
そしてプリッと突き出たお尻に案外大きなおっぱい…
女の子らしい丸みを帯びた体に俺は釘付けになっていた。
後ろからざぱぁと水の音が聞こえる。
どうやらキラがお湯につかったようだ。
俺は今キラと一緒のお湯につかっている…?
そう考えただけでドキドキが止まらない。
お風呂の熱気以外で顔が火照っていくのが自分でもわかった。
「ねぇ…センパイ…?」
ぴとり、と俺の背にほのかに温かい何かが…!
「うわぁ!?」
「せ、センパイ!私ですよ!私!」
「あ、あぁ…キラか…」
ってキラ!?
さっきのってキラの体…?
密着イベント発生ktkr!?
いや、落ち着け俺…こう言う場合こそ落ち着かねば…
「センパイ…もうちょっと近づいても…いい?」
「お、おう…」
自分でも声が上ずっているのが分かった。
全く落ちつけてねぇじゃん…
ぴったりとキラの身体が俺に密着してくる。
そうすれば嫌でもキラの身体が目に入ってくるわけでして…
濡れてより色気を出している髪の毛、すべすべの肌にまるで朝露のように張り付いているお湯の玉…
そしてつつぅと胸元の谷間に吸い込まれていく水滴…
「むぅ…センパイ…おっぱいばっかり見ちゃダメ…!」
どうやら俺の視線に気づいたようだ。
バッと胸元を隠してしまう。
「その…センパイってさ…そんなにおっぱい好きなの…?ウサギのおっぱいをエッチな目でみたりしてるし…」
え?俺ウサギのおっぱいえっちな目で見てたの…?
全く以って自覚がなかった…
「センパイが好きならさ…私のおっぱい…見ていいよ…?」
そう言ってバスタオルをはだけさせようとするキラ。
「よ、よせ!そんなに簡単に人に、それも男におっぱいを見せるものじゃありません!」
「うぅ…好きな男の子にしかみせようとなんか思わないもん…センパイのバカ…」
キラが何か言った気がしたがあまりにも小さな声だったので聞こえなかった。
ただそう言った時のキラは頬をピンクに染めてたし…
いや、あまり詮索するのはやめておこう…
お互い無言のまま時が流れていく。
隣にキラが密着しているというだけで俺の鼓動は最高潮に達していた。
いつ倒れてもおかしくないほどにだ。
「センパイ…あのね…」
と、沈黙を破ったのはキラだった。
「センパイはさ…私たちのことどう思ってる?」
「私たち…?」
「そう、私とイツキのこと」
「どう思ってるって言われても…大事な友達、とかそういう事か…?」
「う~ん…それもあるけど…」
キラは一呼吸おいて次のような言葉を吐いた。
「私とイツキのこと…好き?」
その瞬間ドクンと心臓が大きく脈打った。
「私もイツキもね…センパイの事が大好きなんだ…初めて私たちが双子だってことがばれて…そこからお話ししていくうちにさ…もうどうしようもないぐらいに好きになっちゃってて…だからこうしてお風呂に入れてとても幸せなんだ…」
え?どういうことだ…?
キラとイツキが俺のことを好き…?
好きという言葉が頭の中を渦巻く。
「でもね…」
しかしそれもキラの少しトーンの落ちた真面目な声でどこかに吹き飛んでしまった。
ここからは本気の話だ。
「私だけこんな幸せ味わってていいのかなって…イツキがいないのに私だけこんなにいいことしてていいのかなって思うんだ…」
そうか、キラは双子のもう一方を心配して…
「けどね…イツキがいないことがうれしいって感じてる自分もいるの…」
「え…?それってどういう…?」
「センパイってばほんとに鈍感…普通気付くじゃん…さっきの話聞いてるとさ…」
さっきの話とあわせて考えてみる…
すると答えは一つしか出てこなかった。
「恋敵(こいがたき)が減って嬉しい…ってことか?」
「うん、正解…私もイツキも本当にどうしようもないぐらいセンパイが好きになっちゃってるの…もう誰にも譲りたくないぐらい…もちろんイツキにもね…だからライバルが消えてうれしいって思っちゃう…こうしてセンパイとの幸せを独り占めしちゃ得る…そんな自分がイヤなの…」
その時キラの頬につつぅと一筋の涙がこぼれ落ちた。
それは頬を伝い湯船にポチャリと落ちる。
こいつはこんなになるほどに悩んでたんだ…
今も生きているかどうかわからない双子の姉を思って…
「でもさ…それって普通の事なんじゃないか?」
「え?」
「好きな人が出来たらそれを誰にも渡したくないって思うのが普通じゃん?もちろん身内にもさ…だからキラのその感情って普通なんだと思う。何も特別な事じゃないさ」
「けど…!」
「うん、わかってる…いなくなったイツキに罪悪感を感じてるんだろ…?でもな…そんなことじゃイツキに悪いと思うんだ。イツキはお前に幸せになってもらいたいって思ってる、お前がイツキに思ってるのと同じぐらいにな。で、例えばイツキがお前のために遠慮とかしてたらどう思う?」
「それは…とってもいや…私の為にイツキが我慢するなんて…」
「だろ?それと同じさ。今のキラはイツキのためにガマンしちゃってる。それをイツキは喜ばない。イツキが帰ってきた時に自分はここまで進んだって自慢できるぐらいにワガママになってもいいんじゃないか?」
話し終って自分の言ったことを思い出してみる。
俺…なんてこと言ったんだっけ…?
夢中すぎて思い出せないや…
「センパイ…そう…だよね…私が我慢してちゃイツキが帰ってきた時に怒られちゃう…うん…私ワガママになる!」
キラはそう言って俺に笑顔を向けた。
まだ涙に染まっていたがキラらしい元気で可愛らしい笑顔だった。
「でさ…センパイは誰が好きなの?私はセンパイが好きって言ったしセンパイも誰が好きなのか教えてくれなきゃ…不公平だよ!」
いきなりがつがつきやがった…
どうやら俺は自分に不利になる助言をしてしまったらしい…
「え、え~と…誰が好き…か…」
やっぱり俺はそこら辺をはっきりさせておかないといけないのか…
そうだよな…この戦争の時代なんだ…
いついなくなったり死んじゃったりするかわからないもんな…
「もしセンパイが誰が好きか決まってないならさ…私を選んでよ…私、センパイが大好きだから…センパイが選んでくれたらもっと大好きになる…だから…」
「お、俺が好きなのは…」
その瞬間目の前がくらくらと揺らぐ。
「あれ…?」
そう言えば俺風呂に1時間近く入ってた気が…
そりゃのぼせるよな…
それに布一枚纏ったキラが隣にいるっていう状況が余計に俺の動機を速めて…
気が付けば俺の意識は真っ暗な闇へと消え去っていた…