「はぁ…やっとまともに休憩できるぜ…」
「うん…そうだね…ヤマイ君…」
「う~ん!ベッドフカフカ~!こんな安っぽいところのベッドとは思えない!」
「おいおい…アイドルがそんなこと言っていいのかよ…」
「オフだからいーの!」
俺達は宿でようやく休息を取ることができた。
ベッドに寝転がると今までの疲れが出たのかなんだか眠くなってきた。
「ケント!遊ぶです!やっと休憩できたんだからマリナちゃんと一緒に楽しいことするです!」
ゆさゆさとマリナが俺の体を揺さぶる。
まるで休日に父親にかまってもらいたがっている子供のようだ。
「俺疲れてんだしまた今度な…」
「いーやーでーす―!マリナ暇なんです!マリナちゃんと遊ぶですー!」
そんなに駄々をこねられても…
「ヤマイ君…行ってきたらいいと…思うんだ…」
「そうそう。こうしてぼぉっとしてるより羽を伸ばしてきたら?」
それを寝ころびながらだるそうに言われても…
「うぅ…お願いです…マリナと遊ぶです…?」
そんな捨てられた子犬のような目で見るな…!
「はぁ…分かったよ…でも俺も疲れてるんだしちょっとだけだからな」
「やったです!ケントとデートです!」
そのまま外に出てきて市場に出る。
市場の賑わいは予想以上でして…
そこかしこから笑い声が絶えない。
「ケント~どこ行くです?何か食べるです?」
「う~ん…どこでもいいや…マリナが好きな所に行けば?」
「うぅ…なんだか最近ケント冷たいです…」
「え!?そ、そうか…?」
俺自身あんまりそう思ってなかったんだけど…
「そうです…ケントってばず~っと他の子にかまったりで…マリナちゃんとあんまり遊んでくれないです…もうマリナちゃんのことキライになったです…?」
嫌いになったわけじゃない…
けど確かに最近マリナにあまりかまってやれなかったと思う。
腕が飛んだりナイトたちがいなくなったり新しい奴らが入ってきたりで…
立て続けに起こるイベントに振り回されていたからな。
「ゴメンな…俺別にマリナのことキライになったわけじゃないんだ…最近忙しくて…」
「ほんと…です…?嘘じゃ…ないです…?」
上目づかいでそう言ってくるマリナ。
俺はこくりと頷いた。
「じゃあ…マリナちゃんと…仲直りのキスです…マリナのことキライ嫌いじゃなかったら…きす…できるです?」
「あぁ…もちろんだよ、マリナ…」
俺はマリナの顔に自分の顔を近づける。
ふんわりとマリナのいい匂いが漂ってきた。
これは…シャンプーの匂いか…?
とにかくいい匂いで頭がふわふわする。
頬を染めたマリナの幼い顔が近づく。
距離が近くなるごとに俺の心臓はドクンドクンと大きな音を立てていく。
もしかするとマリナに音が聞かれているかもしれない。
けどそれでもいい…
マリナに俺の思いが伝わってくれるならどんな形でもいい。
とにかく…俺は…俺は…
「マリナ…大好きだ…愛してるぞ…」
「マリナちゃんもです…マリナちゃんもケントのこと大好きです…愛してるです…」
そして俺たちはそのまま口づけを交わした。
ふんわりとしてほのかに甘い唇が俺の唇と重なる。
ただ唇を合わせる行為だというのに胸が熱くなる。
幸せな気持ちが俺たちを包み込んでいく。
「ちゅっ…ケント…好きです…」
どれぐらいかわからない口づけが終わる。
俺達はぼぉっとお互いを見つめ合いながら口を離した。
唇にほのかにマリナの感触が残っている。
「マリナ…」
「ケント…」
ピンク色の頬をしたマリナがやけに可愛い。
このまま無茶苦茶にしてやりたいぐらいだ…
「おい…あれ見ろよ…」
「うわぁ…昼間っからよくやるわぁ…」
「あの女の子の方…まだ子供だよね…もしかしてあの男の子ロリコン…?」
だんだんとクールダウンしてくると周りの声がまるでフェードインするように入ってくる。
そう言えば…俺たち街中で…
途端にさっきとは違う恥ずかしさが俺の胸にあふれてくる。
それはマリナも同じなようで…
真っ赤になってフルフルと震えている。
「え、え~と…マリナ…逃げるぞ!」
「あ!待つです!ケント!」
俺はマリナの手を掴み走る。
マリナの小さな手、それはとても温かで心地よいものだった。
「ねぇケント!」
走りながらマリナが俺を呼ぶ。
「なんだ?」
俺も走りながら答えた。
「こういうデートも楽しいです!ケントはどう思うです?」
俺はにっと笑って
「俺も楽しいぜ!やっぱりマリナといるからかな!」
そう答えてやった。
「フフ…ケント!大好きです!ずっとずっと大好きです!」
このまま俺たちは日が暮れるまで走り回ったのだった…