終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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突撃準備

「お、おいキョウヤ…お前その顔のアザ…どした?昨日までなかったのに…」

その後俺たちは一度ロビーに集まったのだが…

ケントがさっきつけられた俺のアザの事を気にしだした。

「あ、ほんとです。キョウヤのほっぺにおっきなアザです!もしかして…女の子のお風呂を覗いたです?」

「何!?の、覗いた!?おい!誰を覗いたんだ!?俺にも教えろ!」

「不潔です…ヤマイセンパイ…」

「です!ケントキモいです!死ぬです?死ぬです?」

ハルカとマリナから侮蔑の視線を受けているケント。

だがなぜか嬉しそうだ…

ケントは朝から平常運転らしい…

「で…明星センパイ…それ…気になる…教えてほしい…」

「あ、あぁ…これは…」

俺はかいつまんでハルカたちに説明した。

アイツらが変な勘違いをして…それで殴られて気絶させられたことを…

「へぇ…そんなことが…ボク納得…明星センパイ…変態…」

「え!?」

ハルカがさっきのケントにしていたみたいな白い眼で俺を見る。

いや、俺はアイツらの勘違いだってことを伝えたんだけど…

「だな…確かにキョウヤは変態だ!」

「ま、マジ…?」

てかケントに変態扱いされるって相当屈辱だ。

あの変態の代名詞のケントに変態って…

「だって考えても見ろよ…まず昨日の夜の時点で裸ってことに気付けよ。さすがの俺だって自分が服着てるか着てないかぐらいは気付くぜ?」

「あ…」

確かにケントの言うとおりだ。

何故昨夜の俺は裸だって気付かなかったんだ…!?

昨日の自分を思いっきりぶん殴ってやりたい気分に陥る。

「ほんとキョウヤってどこか抜けてるです…」

マリナにも呆れられてしまったし…

「ご、ゴメン…」

俺は三人の呆れにも似た視線を受けて謝るしかなかった…

 

「さて…今日は突撃をかけたいと思うんだが…」

ロビーに全員が集まったところで一度俺たちの部屋へ。

さすがにロビーで戦いの話などできないだろ。

「まずどこまで情報が集まってるか知りたい。持ち寄った情報を共有しあおう」

「はいっす!」

まず一番に手を挙げたのはリュウセイだった。

ピンと背筋まで伸ばして…まるで小学生が発表するときみたいでなぜか笑えてしまった。

「自分のリサーチによればまずここに落とすべきポイントはない事っす!要するにここに相手の将はいないってことっす!」

「あ、それなら私からも。街の人たちに聞いたんだけどここは首都って名前がついてるけど政治は別の場所で行われてるみたい。どうやらこの街は商業の中心地で人が多く集まるから首都って命名されてるみたい」

ネムもリュウセイの言葉に付け加えた。

確かにこの国の首都はおかしいな…

俺たちの国の首都にはデカい王宮があってそこに国王が座っているのだが…この国にはまずその王宮に当たる場所が見当たらないのだ。

街を歩いてみて回ったのだがここにある建物はすべて小さなものでどれも店舗だった。

じゃあ首都はどこに…?

「ほかに情報はないか…?」

「ではわたくしから…」

「マヨか…どうした?」

「いえ、これは情報といえるかどうかなのですけど…この国最強の兵士の話です」

「最強の…兵士…?」

皆一様にそれが気になる様で首を傾げたり話を催促していたり。

「どこまでがホントかわかりませんけど…最強の兵士、それはドラゴンと人間のハーフ…龍人と呼ばれてるみたいですわ…その龍人はこの国が建国されてからずっと国を守護しているらしいのです…」

「まっさかー!そんなことあるわけないじゃん!ウサギちゃんでもそれは嘘だってわかるよ!」

「だよね~。私のアイドルの勘も嘘って言ってるよ!」

その話を信じられないと皆一様に笑い飛ばしている。

確かにそんな人間がいたら化物じみた力を持っているに違いないけど…さすがになぁ…?

「ですが…それは侮れないと思いますわよ…?」

「え?」

と、イリヤが重い口調で口を開いた。

彼女のその姿がいつもの様子と違うことに皆一様に黙る。

「私が黒にいた時にもそんな話を聞いたことがありますの…青を攻める際には龍人には気をつけろと…もしかするとその話、本当かもしれませんわね…」

沈黙の中にごくりと喉を鳴らす音が聞こえる。

俺たちの誰もが黙るしかなかった…

 

「それで…今までの情報をまとめると…攻める場所はここじゃないってことか…」

数分が立ち情報がすべてで終えてまとめに入ったのだが…

やっぱり情報が少なすぎる。

まずオシリスの情報サポートが少なすぎるのに学生の俺たちにどれだけの情報が集められるってんだよ…

「で、これからの事だけど…どうする?もう詰みだと思うんだけど…」

「いや…お兄ちゃん、詰むにはまだ早いと思うよ…」

「え?何かいい考えが…?」

「うん…まずお兄ちゃんはカレーを作ってほしいの」

「は?カレー…?なんで?」

「いいから!それでイリヤは人形の準備!お兄ちゃんのカレーが出来たら作戦スタートだからね!」

「お、おう…」

結局作戦の全容が伝えられないままで終わってしまったけど…

その場にいる皆はぽかんと口を開けている。

俺も馬鹿みたいに口を開けていたと思うが…とりあえずカレー作ろ…

 

「あのさユキ…何で俺達はカレーなんか持って森の中に…?」

現在は森の中、昨日通ってきた森だ。

「いいからいいから」

と、ユキは嬉しそうに先導する。

ここに何が…?

「ここでストップ!」

と、ユキはある地点で俺たちを止めた。

確かここって…

うっそうとする茂みの奥、そこには…

「うぅ…腹減ったぁ…」

「ちょっと黙れよ…余計に腹減るだろ…」

「あぁ…ラーメン…ハンバーグ…エビフライ…」

「だから黙れって言ってるだろ!」

昨日捕まえた青の国の兵士らしきやつらが頬をやつれさせながらバカな会話をしていた。

昨日から木にくくりつけで何も喰ってないからそうなっているんだろうな…

「いるいる…じゃあイリヤ、ここで人形を出して。さっき打ち合わせたとおりに頼むよ」

「オッケーですわ!わたくしに任せなさいですの!」

「それじゃお兄ちゃんはカレーをこの器に盛って」

「お、おう…」

俺は何が何だかわからないままカレーを持った。

森の中にカレーのいい匂いが漂う。

「すんすん…この匂い…カレーだ!カレーだよ!」

「そうか…俺たち死ぬんだな…森の中でカレーなんてあるはずが…」

「お、おい…カレーが歩いてきたんだけど…」

「幻覚だ…腹が減りすぎてヤバくなってるんだ…」

「幻覚だと思いますの?」

「か、カレーが喋った!?」

もちろんカレーが喋るわけがない。

イリヤの人形にカレーを運んでもらっているだけだ。

しかし…これでどうする気なんだ…?

「あなた方はおなかが空いている。だからカレーが食べたい。そうですわね?」

「あ、あぁ…そうだ…じゅるり…」

一人がよだれを垂らしながらそう言った。

「ではわたくしと取引いたしません?あなた方の持っている情報の一つ、それと引き換えにカレーを差し上げますわ」

「その情報ってのはなんだ…?」

「あなた方の国の王、それはどこにいるんですの?」

「その質問…貴様何者だ?それを知ってどうする?征服でもするのか?」

「ただの人形ですわ…それにタダの人形が征服なんてできるとでもお思いですの?」

「確かに…」

「どうです?安い取引じゃありませんの?あなた方はこのおいしそ~うなカレーが食べれるんですよ、ちょっと場所を喋るだけで…どうしますの?」

そこで考える兵士たち。

いや、考えるのもどうかと思うけど…

人間って食欲の前にはやっぱり無力なんだなと感じてしまった。

「…分かった。教える。だが縄も解いてもらうぞ。でないと食えないからな」

「えぇ!?ホントに教えるんですか!?」

「教えたところでこいつに何ができるんだ?あの鉄壁の要塞を崩せるはずがない…」

「確かに…」

「交渉成立、ですわね…ではあなた方がもっている情報を開示していただきますわ」

「王はこの森を北西に抜けた先、その先の要塞に住んでいる。もちろん要塞は鉄壁の防御だからそう簡単には攻め落とせないぜ。人形風情ならなおさらだな」

「そうですの…ありがとうですわ…」

「ほら、いったぞ。縄をほどいてもらおうか」

「えぇ…ですが…その前にあなた方にはいったんおねんねしてもらわないと、ですわね…」

「!?」

「えい!」

人形は目にも止まらぬ速さで兵士たちを沈めていく。

「こうしないとあなた方がわたくしたちより先に王にあうかもしれませんの…ちゃんと約束通りカレーは置いていきますの…仲良く食べるんですわよ」

そして人形はぺたぺたとした足取りで俺たちの元に戻ってきた。

「お兄様!どうですか?私の名演技!よかったですわよね!?」

「あぁ、お疲れイリヤ」

「えへへ…お兄様になでなで~…幸せですわ~」

「あ、私も!作戦考えたの私だからなでなでしてよ!」

「あぁ、ユキもお疲れ様。よくやったな」

「ふにゅぅ…お兄ちゃんのためだもん…そりゃがんばるに決まってるじゃん…」

「それじゃ目的地も決まったところで…出発だ!」

『おう!』

 

 

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