洞窟の奥へと
俺達が飛び込んだ横穴、その中は真っ暗でじめじめとしていた。
ところどころに電灯がついていたのでかろうじて視界を確保することができたが…
やはり奥の方までは見渡せない。
「うぅ…お兄ちゃぁん…怖いよぉ…」
ユキはすがりつくように俺の腕に抱きついてきた。
まったく、怖がりなんだから…
俺は大丈夫だとでも言うように頭をなでてやる。
「もう…先輩たちってばこんなところでもイチャイチャして…」
「もっと…気を引き締めて…」
キラとハルカに注意されてしまった…
てか別にイチャイチャしてる気もねぇよ。
そこから適当に洞窟内を歩いてみるが…
やはり何も見つからない。
それどころか迷路のようなそこは下手をすれば一生出られないんじゃないかという錯覚まで覚えさせた。
進んでは行き止まり、また別の道を探す。
このルーチンワークを数時間も続けたころだ。
俺の中にある不安が募ってきていた。
「なぁ…これって…罠、なんじゃないか?」
「罠…?」
ケントが首をかしげて尋ねてくる。
周りのみんなも何を言っているという風な顔だ。
「あぁ、俺達は運悪くそれに引っかかっちまったってことだ」
「いや、だから何が罠なんだよ?」
「よく考えてみろよ、何でこんなに簡単に侵入できた?相手が本気を出せばあの砲台で俺たち全員を木っ端みじんにすることも可能だったはずだ」
そう、まず不可解なのはそこからだ。
いくらキラやユキの異能で防げたといってもあの砲台が一気に火を噴けば俺たちなんてすぐに死んでいたはずだ。
それに見張りの兵士もだ。
ここは敵にとって最重要なエリアなのに見張りは二人。
これはどう考えてもおかしなことだった。
仲間たちもそれがどれだけ歪な事か理解したようで顔を不安げに染めていた。
辺りに重苦しい静寂が響く。
「じゃあさ…罠だとして、何で俺たちをここに…?」
「それは…」
「それはあなたたちをなぶり殺しにするために決まってるでしょ?」
「!?」
突如洞窟内に響いた女の声。
鋭く冷たく、まるで女王のような威厳に満ちた声。
俺達は周囲を見渡すがこの闇が相手の姿を隠して探ることができない。
「久しぶりにやってきた来訪者…それを簡単に殺してしまっては面白くないモノね…」
その声が聞こえた瞬間、俺の耳に風を切るひゅんという音が聞こえた。
その後にはマヨが左腕を抑えてうずくまっていた。
見るとそこから血がだらだらと垂れていた。
「くっ…やられましたわね…敵の攻撃…でも…これぐらいどうってこと…!」
マヨは懐から手ぬぐいほどの長さの布を取り出して止血作業をする。
真っ白だった布が一気に赤く染まった。
「大丈夫…まだ浅いですのよ…それより、気を付けた方がよろしくてよ…?いつ敵が攻撃してくるか…」
マヨのその言葉と同時、今度はケントが声をあげた。
「くっ…足をやられた…だけど…」
ケントは暗闇の一点を指差す。
「アソコだ!攻撃はあそこから出てきた!」
「オッケー!ナイスケント!それじゃ…氷弾発射!」
指差したそこにユキは氷の弾丸を無数に放っていく。
キラキラと輝くそれがまるで嵐のように暗闇の奥へと消えていく。
「ちっ…なかなかやるじゃない…それなら私も本気を出さなきゃね…」
カツカツと洞窟内に足音が響く。
暗闇の奥からゆっくりとその主が姿を現した。
「私を怒らせるなんて…やるじゃない、侵入者共…!」
180センチもの身長にモデルのような洗礼された体型、それにベストマッチしている凛とした顔。
長くのばされた金色の髪の毛が彼女の凛々しさを際立たせていた。
軍服に身を包み手には鞭、どうやらあの鞭で攻撃してきたらしい…
まるで軍人を育成する立場の人間かと思ってしまうほどだった。
「さぁ…観念しろよゴミども…!このヒルダが嬲り殺してくれる!」
自分のことをヒルダと呼んだその女性は鋭い声と殺意を俺たちに向けたのだった。