森の中は魔物の宝庫
俺達はひたすらに森の中を歩いていた。
生い茂る緑を分け入りずんずん遠くへと向かう。
「どこまで行くんだよ…そろそろ休みたいって…」
「そうだよぉ…もう真っ暗で何も見えないよぉ…」
ウサギの言うとおりもう視界は真っ暗だ。
かろうじて月の光が照らしているだけで、先はほとんど見えていなかった。
「休みたいのはやまやまだが…ここは敵の本拠地なんだぜ?」
そう、忘れてはいけないのがここが敵の要塞の中ってことだ。
下手をすれば簡単に見つかって殺されてしまう。
なのでできるだけ奥へもぐりこんで身を隠す必要があったのだ。
「待って…何か…音がしない?」
と、そこでネムが急に声を出した。
耳を凝らすネムにならって俺も耳に意識を集中させる。
どしん、どしんという地を震わす重たい音が耳に響いた。
「これって…アイツが使ってたゴーレムじゃないかな?」
「確かにその可能性があるな…」
「もう追ってきたってこと…?」
俺達はじっと身を潜めてその足音が去るのを待った。
しかしそれはだんだんと俺たちのほうへと向かってきていた。
多分見つかってはいないだろう、しかしそれは一歩、また一歩と距離を詰めてきている。
「おいおい…どうするキョウヤ?戦うか?」
「いや、ここで戦うのはあまり…」
もしここで戦ってもみろ。
戦闘の音を感じ取ってすぐに敵が飛んでくるのは間違いない。
しかし…逃げればその音を辿られて見つかってしまう…
俺たちの行動は詰んでいた。
「ねぇお兄ちゃん。今は見つかってないんだから一斉に攻撃したらどうかな?」
確かにそれはいい考えかもしれない。
不意打ちなら一発で仕留めることも可能かもしれない。
それなら…
「よし、なら一発だ。一発で決めろよ…」
「オッケーお兄ちゃん!それじゃ…マリナ!いくよ!」
「もちろんです!まかせろです!」
そうして二人は一歩前に出る。
ふたりの掌にだんだんと氷が宿っていく。
真っ白な冷気が二人を包み込みまるで氷の衣装をまとっているようにも見えた。
「それじゃ…発射!」
十分に集まった冷気を一気に放出する。
それは弾丸のような速度で飛んでいき足音の主へとぶち当たる。
あとには氷が通った奇蹟からキラキラとした輝きが残っただけだった。
「ふぅ…」
「やったです!仕留めたです!」
「お疲れ様、二人とも」
俺達は安堵するもつかの間、次の瞬間には内臓までも震わせるほどの咆哮が耳をつんざいた。
「えっ!?ちょ、ちょっと…!」
俺たちがその方向を見る、そこには闇の中に光る金色の点が2つ…
いや…4つ、6つ、8つ…増えている…!?
だんだんとその点は数を増してこちらを睨んできている。
「これはヤバい予感しかしないんだけど…」
ぐぉぉぉぉぉ!
まるで世界全体が震えているような錯覚を与える咆哮。
その次の瞬間には数多の足音が俺たちのほうへ向かってきていた。
バリバリと木を無造作にへし折りながら近づいてくるそれがついに青白い月の光の下姿を現した。
「あれは…ドラゴン!?それにモンスター共も…!ちっ…あれはゴーレムなんかじゃなかったのか…」
姿を現したのは3匹のドラゴンと無数のモンスター。
俺たちだけでは到底手におえない数だ。
しかし戦わなければならない。
多分もう逃げることなんてできない…
「みんな…いくぞ!」
「うゆぅ…ドラゴン…怖いよぉ…ふみゅぅ…」
しかしウサギはその言葉の後にばたりと地面に倒れ込んでしまった。
しまった…こいつドラゴンが苦手なんだった…
「おい!起きろ!起きろよウサギ!…ちっ…背負うしかないか…」
俺はウサギを背負う。
予想以上に軽いその体を支えながら後方を振り向いた。
今にも襲い掛からんとする獣どもにきっと鋭くにらみを入れる。
「みんな…死ぬなよ…!」
「もちろんだよお兄ちゃん!」
「そうそう、私達を誰だと思ってるのセンパイ?」
「お兄様は心配しすぎですの…もっとわたくしたちの実力を信じてみたらどうですの?」
皆一様に武器を取り出し獣を睨んだ。
月明かりの夜、ついに戦闘が始まった…