ネム達が戦っているのを横目に俺たちは3匹のドラゴンの前に立っていた。
それぞれが殺気に満ちた瞳で俺たちを見ている。
油断すれば確実にやられる…そう感じさせる瞳だった。
「まずは一匹だ!」
俺のその声とともに戦闘が動いた。
まずはケントが前に出て一匹の身体を斬りつける。
「くっ…硬い…!」
が、剣は表面の皮を少し削っただけで致命傷には至らなかった。
ひるんだケントにもう一匹のドラゴンが突進を仕掛ける。
「させないよ!」
キラがそう叫んだのと同時ドラゴンの進路上に光の壁が立ちふさがった。
それにぶち当たったそれは悲痛な悲鳴を上げる。
「私はこっちの足止めをしたらいいんだね!…まずは…足を凍らせる!」
ユキは今にも攻撃を仕掛けんとしていた残りの一匹の足に氷を纏わせる。
地面にしっかりと固定された氷のおかげでそいつは動けなくなっているようだ。
「これあんまり長く持たないから…早くしてね!」
「おう…!」
2匹の妨害はできた。
後はケントが一匹倒してくれればいいんだが…
「くっ…やっぱり硬い…!これどうしたら…!」
「それならわたくしが…!」
イリヤが人形の一つを操る。
それがだんだんとドラゴンに近づいていく。
「爆破ですの!」
イリヤのその掛け声とともにそれはボン!と爆音をあげて爆発した。
どうやら爆発で強靭な外殻を打ち破るらしい。
しかし…それでも外殻は壊れない。
少し皮が剥がれただけだった。
「なんでですの!?」
「なら俺が…!」
確かウサギの銃は結構な威力のはずだ…
あの外殻にヒビだけでも入れることができれば…!
「イッケー!」
俺は照準を定めてそれを撃ちこむ。
ぎゅん!と風を切りながら弾丸がドラゴンへ向かって飛んでいった。
ぐぇぇという力のない叫びとともに外殻の一部が剥がれ堕ちたのが分かった。
「さすがウサギだな…銃の改造だけは一人前だ」
まだ気を失っているウサギに俺はそう声をかけてやった。
どうせ聞こえているはずがないと思うがそれでもウサギは嬉しそうに笑った気がした。
「満足するのはまだ早いです!もっと削ってやるのです!」
今度はマリナの番だ。
マリナによって練成された氷の魔法が傷口を抉った。
「ナイスマリナ!肉がみえたぜ!」
「感謝はあとでた~んともらうです!今はそいつを倒すことに集中です!」
「そうだったな…!」
ケントは剣を構えて傷口に差し込んだ。
どうやら肉を抉ったらしく血が噴き出していた。
「まだまだ…もっとだ…!」
「ケント!そこを退いていただけますわ!」
「お、おう…」
ケントが後方に退くのと同時イリヤが彼の作った傷口に鎌を突き立てていた。
そしてごりゅっ…と奥の方まで刃をとおす。
ドラゴンの悲痛な叫び声が辺りに響き渡る。
「やったか…!」
しかし…ドラゴンは暴れまわりイリヤを吹き飛ばした。
「きゃんっ…!」
「イリヤ!」
飛ばされたイリヤをケントが何とか受け止めて大事に至らなくて済んだが…
どうやらドラゴンは手の付けられないぐらいに暴れ出したようだった。
「お、お兄ちゃん!こっちももう限界…これ以上の足止めは…!」
「せんぱぁい…私のほうも無理…もう破られちゃう…」
「なっ…」
万事休すだ…
このままだと俺たちは…
「お兄ちゃん…もう、無理…」
「私も…」
ぱりんと二匹のドラゴンは拘束から逃れた。
そして恐ろしい勢いでこちらに向かってきている。
俺の背にはウサギ、どう考えても対処できるはずなかった。
最後の救いであるマリナのほうを見てみるも忙しそうに魔法を練成しているだけだった。
これじゃ間に合わない…
俺はせめてウサギだけは死なせまいと彼女を地面に降ろした。
そして彼女の盾になる様に剣を構えた。
刺し違えてでも…守って見せる…!
「おいおい…死ぬなって言ってたやつが真っ先に死ににいくんじゃねぇよ」
「え?」
その時俺の耳に飄々とした調子でしゃべる声が聞こえた。
久しぶりに聴いた声のような気がする…でも今その声の主は…
どうやら俺の脳は幻聴まで聞こえるようになったらしい。
「リーダーがまず死ぬなんておかしなことしないの!でも…その仲間をしなせたくないっていう思いは感服よ!」
はは…また居もしない人の声だ。
今度は女の子、それもアイツの…
「こいつ…幻聴をきいてるって顔してるぞ?そろそろ出ていってやったらどうだ?」
「はは、確かにそうだ!それに…いつまでもちんたらしてられないしな…大切な仲間が死んじまうからな!」
幻聴なのに会話してる…?
「お、お兄ちゃん…私さっきから変な声が聞こえるんだけど…やっぱり死んじゃう予兆?」
「お、俺も聞こえるんだけど…はぁ…短い人生だった…」
「奇遇です…マリナも聞こえちゃうです…」
「センパイ…私も…」
同時に幻聴が聞こえる…?
そんなの有り得ない…!
これは…幻聴じゃない…!
俺はふと上を向いた。
空には真ん丸い月が一つ浮かんでいた。
しかしその月から何かが降ってくるように見えたのだ。
それはまるで炎を纏った鳥のような…
それはまるで雷を纏った猛獣のような…
それはまるで桜を纏った乙女のような…
月から降ってくる3つのありえない存在。
それが俺の頭をぐらつかせる。
(なんだ…この嬉しい気持ちは…何故かワカンネぇけど…胸のあたりがポカポカする…)
心臓が歓喜に打ち震えてドクンと大きく脈打った。
「お前ら!待たせたな!帰ってきたぜぇぇ!」
そしてそのうちの一つ、炎の鳥が俺の目の前に向かっているドラゴンの前に落ちた。
残りの二つもそれぞれのドラゴンの前に落ちる。
それにまとわりついていた炎がだんだんと剥がれ落ちていく。
そしてかすかな月の光の下現れたのは俺たちの待ち望んでいた存在だった。
懐かしくて、ずっと逢いたくて…そして死んでしまったかもしれないと思っていた存在…
「な、ナイト…!」
「よっ!久しぶりだなキョウヤ!」
「それに…ユラ!サクヤ!」
「よかったぁ…元気なキョウヤが見れて!ずっと心配してたんだからね!」
「それより…ナイト、サクヤ!こいつらを何とかするのが先だろう?」
「もちろんだとも!」
「ユラに言われなくてもわかってるわよ!」
まるで夢のようだった。
周りの連中も夢の中にいるような顔をしている。
俺達はその信じられないような光景をただ見ているしかできなかった…