「ヤバ…分断された…!」
ネムがそう気づいたときにはもう遅かった。
周りは敵だらけで到底マヨ達が助けに入ってこれる余地はなかった。
まぁあっちも戦っているから元々助けてくれる余裕なんて少ないと思うが…
今はそんなことを考えている暇はないなとネムは頭(かぶり)を振った。
いま彼女がするのはそんなことではない、どうやってこの現状を打破するかである。
「この量じゃまとめてやっちゃうのも難しいし…」
彼女の攻撃方法は歌。
歌声が届く範囲、要するにネムの周辺にいるものには効果は絶大なのだが遠くのほうの敵には歌声が届かずに無効化されてしまう。
(私の能力ってこういう時ってホント使いづらい…)
自分の能力の無能さを呪うも現状が変わるわけがない。
仕方ないと一言、彼女は敵と向き合った。
「じゃあまずは…これでどう!」
ネムは手に持っていた拡声器を口元に持ってきて思いっきりそれに向かって叫んだ。
音波が拡散されて周囲の敵の身体がその音波と共鳴して内部から爆ぜた。
これがネムの戦闘スタイルだ。
彼女の武器、その拡声器は声をパワーアップさせてくれる。
それで増幅された音波を敵に浴びせて身体で共鳴をおこす。
それに耐えられなくなった体は自然と破裂していくのだ。
相手を破裂させるなんてアイドルの戦い方としてどうかと思うが…
そんなこと言ってる場合もない。
「くっ…やっぱりきりがない…!」
どれだけ音波を浴びせて敵を潰していっても数は減らない。
だんだんとネムの喉に限界が訪れてくるのが彼女自身分かった。
「声…もう…」
一瞬のすきをついたモンスターの一匹が彼女に襲いかかってくる。
「でも…まだ負けない!」
喉を絞り音を出すネム。
だが敵は爆ぜることなくネムに向かってきていた。
「な、何で…きゃっ…!」
モンスターの爪が腕をかすめる。
少し裂けてそこから血がたらりと流れていた。
「痛っ…」
(なんで…何でアイツには効かないの…!?もしかして…)
そして彼女は一つの結論に至った。
(あいつは音が聞こえないんだ…)
ネムの能力の欠点、それは聞こえなければ意味がないというものだ。
耳が無い、もしくは何らかの理由で音が聞こえない敵などには通用しないということだ。
そんなことを考えている間にも敵はじりじりとその距離を詰めてきていた。
「もしかして…私ってここで終わり…?」
自然と身体ががくがくと震える。
背筋に冷や汗が走り歯もカタカタとなっている。
「いや…まだ死にたくない…助けて…助けてよ…ヨウ…」
彼女の悲痛の泣き声を掛け声としたのか敵が一直線に飛びついてきた。
「キャッ!…あ、あれ…?」
死んだ、と思っていたネムだったがまだ自分の意識がしっかりしていることに疑問を抱いた。
ネムは疑問を解消するために思い切って前を向いた。
そしてそこで彼女は言葉をなくした。
何か喋ろうと口をパクパクさせるも声が出ない。
「はぁ…久しぶりだってのになんて顔してるんだよ、姉さん…」
「…よ、ヨウ…?」
「そうだよ、僕だよ姉さん!」
そこには両手に小さな刃を持ったヨウがいた。
その刃に血がついている、たぶんあの敵を倒したのはこの子なんだとネムは直感的にそう感じた。
「もう…!どこいってたのヨウ!私…寂しかったじゃない…!」
「ごめんね姉さん…」
「うぅ…ほんと…逢いたかった…」
「姉さん、感動の再開はまだもうちょっと先になるかもね…まずはこいつらを片付けないと…姉さん、まだ戦える?」
「も、もちろん…!お姉ちゃんまだがんばれるもん!」
ヨウと会ったことによってさっきまでののどの痛みが引いた気がした。
多分気のせいだとは思う、けど…今は何でもできる気がした。
「じゃあ姉さん、いこうか?」
ヨウはにやりと姉に微笑みかける。
ネムも弟に応えるようににやりと笑いかけた…