あぁ…ユキ…俺をおいて行かないでくれ…!
俺はお前がいないと…何にもできないんだ…
だから…ユキ…頼む…
俺から離れておいてそんなこと言えないと思うけど…もう一回俺と一緒に…!
俺に背を向けて歩き出すユキに俺は必死にそう叫ぶ。
だが彼女は俺のほうを振り向かずにそのまま歩く。
まるで俺の声が聞こえていないとでもいう風に…
まるで俺という存在すらないとでも言うように…
ユキ…!ユキ…!
俺は必死に手を伸ばす。
だがそれでも彼女には届かない。
余計に彼女との距離を離すだけだった…
ユキ…!
知らぬ間に俺の頬が濡れていた。
俺は…妹と…離れたくない…!
ユキ…!
「ユキ…!はぁはぁ…あれ…?ここは…」
俺はゆっくりと辺りを見渡す。
そこにはユキはいない、代わりにあるのはうっそうと生い茂る木々のみだった。
あぁ…そう言えば…俺、寝ちまってたんだっけ…
しかもあんな夢を見るなんてな…
本当に俺はどうしようもないシスコン野郎だな…
「おっ、キョウヤ起きたか?」
「もう…!心配したんだよセンパイ!」
「そうだよ!私もキラも…それにここにいるみんなもセンパイのことずっと待ってたんだからね!」
俺の耳に聞きなれた声が聞こえてくる。
これは…幻聴か…?
いや、確かに近くで聞こえる…
俺はまだ覚醒していない頭を振ってムリヤリおこす。
だんだんと視界がクリアになってきた…
そして視界に映ったのは…
「キョウヤ!」
たゆんたゆんと上下する巨大な肉の塊だった…
しかもそれが迫ってきている…
「もう!心配したんだからね!このウサギちゃんに心配かけるなんて…キョウヤのバカ!大バカ!」
そしてその声とともにおれの顔面に巨大な肉塊が押し付けられる。
ふにふにしててモチモチしててやわらかい…
あぁ…まるで天国にでもるようだ…
「うわぁん!キョウヤぁ!」
頭に手が回されてさらにぎゅっとそのふにふにに顔を押し付ける。
まるでつきたてのお餅が顔中を覆っているような…
でもそれは不快ではなくむしろもっともっとしてほしいもので…
ふにふにモチモチでポカポカしていて…そして小さくとくんとくんと心地よいリズムを奏でているそれ…おっぱい…
俺はそれに身を預け…ようとした。
俺を阻害したモノ、それは…
「むぐぅっ!むぐむぐ!」
呼吸。
そう、息ができないのだ…
このままでは窒息死してしまう。
おっぱいで窒息死できるなら男としては本望なのだろうが…
今の俺にはまだ死ねない理由があった。
「ひゃんっ…!キョウヤってばぁ…そんなに暴れないでよぉ…おっぱいのいろんなところに擦れて…変な気分になっちゃうよぉ…」
必死にもがいて脱出を試みるもどうやら逆効果だったようだ。
「キョウヤのえっちぃ…いくらウサギちゃんにあえたのがうれしいからっていきなりえっちなことするなんてぇ…もう…みんな見てるからダメだよぉ…するなら二人っきりの時に…ね?」
何言ってるこのロリ巨乳は…!?
と、とにかく早く逃げなければ二重の意味でもやばい…!
「キョウヤぁ?助けにきてあげたのにいい度胸ねぇ?」
そ、その声は…サクヤ!?
声は笑っているのに明らかに怒気が含まれている…
「お兄様?お兄様は死にたいのですか?それならそうと早くおっしゃっていただきたいものですわね…」
イリヤもいるのか…!?
「せぇんぱい?そんな幼女に手を出しちゃ犯罪だよぉ?」
「そうだよ?そんな犯罪者なセンパイは…罰を受けても仕方ないよねぇ?」
あ、やば…イツキとキラも怒らせちまってる…
それに呼吸ももう限界だ…
これは…死ぬ…
死因はおっぱいでの窒息死か…それとも女の子たちにフルボッコにされて死ぬか…
死ぬならできれば前者でよろしくお願いします…
「はぁ…こんなことしてる場合じゃないです?みんなわかってるです?特にウサギです!ウサギは早く離れるのです!」
その声とともにおれの視界からおっぱいが離れていく。
これで呼吸が楽になった…けれどこの名残惜しい感じは一体…
それにしても…
「なんでお前らがここに…」
「もちろんお前を助けるためだ」
ケントが俺の疑問に一瞬の間をおかずに応える。
「でも俺はお前らから…」
「そんなことは関係ないよ」
今度はサクヤがそう答えた。
「確かに…あんなの見せられたら誰だって逃げちゃいたくなるけど…でも今はそれは抜き。今一番に考えることはみんなで生きてここを脱出すること。それにはキョウヤ、キミも連れて帰る必要があるんだ。もちろんこのクラスの委員長としての責任もあるけど…でもそれ以上にキョウヤは大切な仲間だから…」
目尻にじわりと熱いものがこみあげてくる。
俺は仲間をおいて逃げたのに…それでも俺を仲間だって…
まだ俺を仲間だって認めてくれている人たちがいる…
その事実に俺の心は熱くなった。
「そうだよ、センパイは私たちの仲間」
「仲間をおいて見捨てるほど私たちは薄情じゃないよ?」
「お兄様をおいていくなんて妹失格ですわ」
「まぁ逃げた罰はあとでた~っぷり受けてもらうです?」
…ったく…どいつもこいつも…
俺は改めて仲間を見る。
そして…
「ゴメンな…それと…ありがとう…」
そう呟いたのだった。
「それにしても…ユキはいないのか?」
俺は仲間の姿を見渡す。
ケント、マリナ、ウサギ、イツキ、キラ、イリヤ、サクヤ…
どこを探してもユキがいない…
ユキの事だから真っ先に俺を心配して探しに来てくれるはずじゃ…
「その…ユキは…」
ウサギが言いにくそうに口ごもる。
いつものバカっぽい雰囲気はどこへやら、今はとてもまじめそうに見えた。
「どこか行っちゃったの…お兄ちゃんに嫌われたってね」
サクヤがウサギの言葉に続いた。
「え?ユキが…?」
「ねぇ?なんであんなこと言ったの?ああいったらユキが傷つくことぐらいわかってたよね?」
「ゴメン…けど…!」
俺の次の言葉をサクヤは刺すような言葉で遮った。
「私たちみんな異常者なんだよ?」
「え?」
俺はその言葉の意味が一瞬理解できなかった。
こいつらがみんな…異常者?
「思い出してみてよ…私たちのクラスを…」
ストレンジ・ナイフ…特別クラスと呼ばれるここに集まるのは…問題児たち…
まさか…
「どうやらわかったみたいね。そう、ここにいるのは何かが欠落したモノたちだけ。もちろんそれはユキだって例外じゃない」
「もしかしてお兄様は…ユキだけは違う、とか思っていらっしゃったのですか?」
ぐさりと胸にその言葉が突き刺さった。
確かに…俺はユキの表の部分しか見ていなかったのかもしれない…
ユキの隠された裏の部分を…見ようとしていなかった。
これで何がユキの兄だ…笑わせる…
「このクラスの異常者の度合いは違う…ウサギみたいに逃げ出すヘタレもいたら…私みたいな異端者だっている…」
「サクヤ…?」
「あぁ、ごめん!今のは忘れて!聞かなかったことにしておいて!」
「あ、あぁ…」
「それで…ユキも異常者なの…それも他人に分かることができないほど凄惨な過去を背負ったね…」
「教えてくれ…ユキに、何があったのかを…」
口から自然とその言葉が漏れ出ていた。
「ほんとにいいの?」
「あぁ…俺はユキの兄として…大事な仲間としてそれを知っておかなくちゃならない…」
「わかった…じゃあ…話すよ…」
そしてサクヤはポツリポツリとユキの過去を話し出した…