「うぅ…お兄ちゃんのバカ…ひぐっ…」
どこまで走ったのだろうか。
それもわからないぐらいに私は走っていた。
お兄ちゃんを失った悲しみから逃げるために…
「池…?」
と、ふと顔をあげると目の前に大きな池がみえる。
ごぉごぉと音を立てる滝も見える。
いったんここで休もうか、足も疲れちゃったし…
私はそのまま池のふちの少し大きめの石に腰を下ろした。
そしてそのまま水面へ顔を近づける。
と、水面に映った顔を見てぎょっとした。
何故って…私の顔が私じゃないみたいだったからだ。
目の周りを真っ赤にはらして頬は涙でぐちゃぐちゃで…
いつもの顔ではない自分の顔に驚くも何故だか苦笑いがこみあげてきてしまった。
(こんな顔じゃお兄ちゃんにあえないや…)
お兄ちゃんの事が頭をよぎる、だがそれも一瞬だった。
次の瞬間には私の心を黒い雲が覆いだした。
「もう…お兄ちゃんには会えないよね…会えたとしても…前みたいには…」
あの時のお兄ちゃんの目が今も脳裏にちらついている。
あの優しそうなお兄ちゃんの顔が思い出せないぐらいにそれは私の記憶の中のお兄ちゃんを蹂躙していた。
私の胸がちくりと痛む。
悲しくて残酷な現実に心が打ち砕かれそうになる。
「グス…お兄ちゃん…逢いたいよぉ…」
あぁ…まただ…お兄ちゃんのことを考えると涙が止まらなくなってしまった。
まるで昔のようだ…
昔の私…そう、お兄ちゃんと離れ離れになっちゃったときの私。
あの時の自分もずっと泣いてて心を閉ざしてたっけ…
「ダメダメ!ちゃんとしっかりしないと!」
嫌な考えで思考が埋まる前に思いっきり頭を振ってそれを打ち払った。
そして池の水で顔を洗う。
なんだか心もちょっとだけだけどすっきりした気がする…
「ふぅ…」
私は一息ついてその場に寝転がった。
地面は芝生だったので天然のお布団みたいで少し気持ちよかった。
空を見上げると黒い雲がだんだんと太陽を隠してしまっていた。
まるで…私の心みたい…
お兄ちゃんという太陽を真っ黒な絶望が隠してしまっていっている…
…って私ったらまたお兄ちゃんの事考えてる…
そろそろお兄ちゃん離れしないといけない歳なのにね…
ホント私ったら…どれだけブラコンなんだ…
「はぁ…」
私はもう一つため息をついた。
お兄ちゃんにあいたい…
あってちゃんとごめんなさいって言いたい。
それで私のことも全部話すんだ…お兄ちゃんが私の過去を気持ち悪がってしまってもいい…
もう隠しごとは無しにしたかった。
「あいたいよお兄ちゃん…私の大好きなお兄ちゃん…」
あぁ…なんだか瞼が重くなってきた…
最近いろんなことがあったからなぁ…
ゆっくりできる時間なんてほとんどなかったっけ…
あぁ…早く帰ってお兄ちゃんとゆっくり過ごしたいなぁ…
そんなことを思いながら私の意識は完全の闇へと落ちていった。