とある冬の日に-3
同日正午過ぎ―
寒空の下に集められた学生兵たちがそこにいた。
皆一様に武装しているがその顔からはどこか気の抜けた様子を感じ取ることができた。
今は戦乱の時代だというのに平和ボケした連中はどうせこの戦いもすぐに終わるだろうとたかをくくっているのか。
そんな間抜け面を見ていると腹立たしさを通り越してあきれさえ覚えてしまう。
この中の何人が生き残るかもわからないというのに…
私ははぁとため息をついた。
ため息が真っ白な吐息となって寒空に吸い込まれていった。
「うぅ…寒いねぇ…こんな日に出撃なんて最悪だよぉ…」
隣にはノノが寒そうに背中を丸めて立っていた。
ガタガタと震えていてとても見てられない…
「はぁ…そんなに厚着してもまだ寒いって…」
「仕方ないじゃん。私は寒がりなんですー!」
ノノはぷくぅと膨らませてそう言った。
まぁそれだけ怒る気力があれば大丈夫だろう…
「それにしても…班で出撃なんて…しかも私たちの班は最初の方…ついてないなぁ…」
確かについてない…
主に班行動というところに。
私は今まで友達を作ってこなかったからこういう時の連携に劣る。
もしほかの子が足を引っ張ったら…
うんざりとした気持ちを吐き出すようにまたため息をついた。
私の班はノノ含め5人、それでどうしろというのか…
しかし嘆いていてもしょうがない、出撃の時は刻一刻と近づいているのだから…
「はぁ…やっぱり連携なんて私には無理!」
戦場の真ん中で私はそう叫んだ。
私が攻撃しているとそのすれすれを味方の弾丸が通り過ぎる。
何かドジを踏んだ子がいると私がフォローに回る。
それに私の異能の有効範囲まで平気で近付いてくる子もいるし…
こんな戦いにくい事なんて初めてだ…
やっぱり平和ボケした連中とはあわないんだ。
「ちょっと…ヤダ…こっちこないで…!」
また仲間の一人が敵に囲まれてしまった。
その子は泣き顔でその場に崩れ落ちてしまった。
「私が助ける!だから待ってて!」
真っ先にかけていったのはノノだった。
片手に短剣を握りしめて敵の塊へと向かっていく様はもはや無謀としか言えなかった。
あの数を短剣で、しかもノノの身体能力だけで処理するなんてどう考えても無理だ。
はぁ…仕方ないんだから…
「ノノ退いて!邪魔だよ!」
手に氷を集めるイメージをする。
だんだんと冷気が集まってきて塊となっていくのが分かる。
ノノも私が何をするのかわかったようでその場から瞬時に飛び退いた。
「いっけーーー!」
私は手に集まった冷気を一気に放出する。
巨大な氷の塊となったそれは敵の集団めざして飛んでいく。
「そのまま頭伏せててよね!」
パチン、と指を鳴らす。
その瞬間氷の塊は破裂して細かな破片をまるで散弾のように飛び散らせる。
飛び散ったそれは鋭利な刃物同様の威力を持つ…
その破片が敵めざして雨のように降りそそいだ。
ぐさり、ぐさりと敵の身体に鋭利な氷弾が撃ち込まれていく。
絶命まではいかないが致命傷は与えられるほどの威力は持っている…
地を赤に染めながら一人、また一人と戦闘不能に陥っていく。
その中でもまだ立っていられるものが3人…
銃を持っているのが1人に近接武器が2人、か…
それなら…!
「へぇ…ずいぶんしぶといんだ…でも…これは避けられないんじゃないかな!」
今度は槍をイメージする。
氷でできた半透明の槍…
それは私が一番得意とするイメージの形…
「いでよ!氷槍<グングニル>!」
私の呼びかけに応えるように現れた氷槍、それを握りしめて一気に敵の懐までもぐりこんだ。
「まずは一人目!」
氷の槍で一人目の足元を狙い思い切りそこに打ち込んだ。
するとそこから氷が広がり敵の足を絡め取った。
まさに氷の足かせ、移動手段を奪えばこいつはもはや戦うこともできないだろう。
「二人目!」
もう一人も氷の足かせでとらえる。
が、敵は銃を持っている。
それだけでは戦闘不能に追い込むことはできないだろう。
敵が引き金に手をかける。
脳がその瞬間をやけにスローモーションにとらえた。
それがひかれる前に…終わらせる!
私は体の全細胞を加速させて槍をついた。
捉えたのは銃、だんだんと氷漬けになっていくのを確認して私は最後の一人へと向かった。
結局その一人もあっけなく終わらせた。
何だ…この程度…
体中に張りつめていた緊張を解いて私は伸びをした。
私の後ろには氷により動きを封じられた者たち、なんだかすっきりした気がする。
もしかすると日頃のストレスをこいつらにぶつけていたのかもしれない…
「あの…その…あ、ありがと…助けてくれて…」
私が勝利の悦に浸っているとさっき助けた子がこっちに駆け寄ってきていた。
眼に涙を浮かべて足もがくがくと震えているのに…けなげな子だ…
「まぁ別に…この程度どうってことないよ」
私の悪い癖だ、知らない人には思わずぶっきらぼうな態度を取ってしまう…
気を付けないとと思っていてもつい出てしまう…
が、その少女はキラキラとした瞳で私をみていた。
そして…
「カッコいい…」
そう一言つぶやいたのだった…