終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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とある冬の日に-5

同日夜更けすぎー

空には夜の帳が降り漆黒のカーテンに星屑のデコレーションが輝いていた。

私達はそれを地上から思いをはせるように眺めていた。

「今日は星がきれいに見えるね…」

「気温が低いから余計じゃないかな?」

「こんなきれいな星空初めて…」

彼女たちは思い思いの感想をつぶやきながら星空を眺めていた。

キラキラと瞬く星が彼女たちの瞳に反射して映る。

それはとても綺麗で儚い輝きのようだった。

「そう言えばユキっていつも星の髪飾りつけてるよね。星、好きなの?」

「これのこと?これはお兄ちゃんに貰ったものだからずっとつけてるの…貰った時からずっと…寝るときとお風呂の時以外は外したことないかも」

お兄ちゃんの髪飾りをぎゅっと握りしめて私はそう言った。

これはお兄ちゃんに貰った大事なモノ。

命よりも大事、といえば大げさに聞こえるかもしれないがあながち間違いでもない。

それほどまでに私にとっては大切なモノなのだ。

「ふ~ん。ユキってずっとお兄ちゃんお兄ちゃんって言ってるけどブラコンなの?」

「ぶ、ブラコンって…」

確かに私はブラコンかもしれない。

けどお兄ちゃんはそれ以上にシスコンだった。

私が指をちょっと切っただけで手を使うな、俺が食べさせてやるとか言っちゃうぐらいに過保護でシスコンで…

あぁ…お兄ちゃんにあいたいなぁ…

今どうしてるのかな…?

生きているのか、それとも…

いや、やめよう、そんな最悪な事、考えたくもない。

と、私の思考を邪魔するように何か茂みの奥で音が聞こえる。

「しっ…静かに…」

私はみんなを黙らせてその音に耳を傾ける。

ざっざっという土を踏みしめる音…

それが重複していることから多人数であることが分かる。

「敵かもしれない…みんな、構えて…」

全員さっきまでとは打って変わり真剣な、それでいてどこか不安そうな表情で状況を見守る。

何かが…来る…!

私がそう思った瞬間にはもう事は始まっていた。

茂みの奥で何か小さな光が輝いた。

その一瞬の後に大きな破裂音…いや、これは、銃声。

静寂な星空に唐突に響いた銃声にびくりとしてしまう。

「みんな!いくよ!」

これは敵だ!早く闘わないと…!

私は武器を手に取りその場を離れる。

いや、離れようとした。

その瞬間に私の隣にいた女の子がばたりと倒れたのだ。

「え…?」

月に照らされた少女のその頭部には撃ちぬかれたような穴があけられておりそこから血がドクドクと垂れ落ちていた。

今さっきの銃弾、それが彼女を一発で仕留めたのだ。

その少女は何が起こったのかわからないという風な表情を浮かべて…絶命していた。

さっきまで話していた子が、次の瞬間にはいなくなっていた…

私の、友達が、死んだ…私の、希望が、いなくなってしまった…

心にまた黒い靄がかかり始める。

黒い霧は理性をむしばみ怒りの感情だけで私の身体を突き動かした。

「うらぁ!」

獣のような速度で地をかけて茂みの奥へともぐりこむ。

視認できるだけで5人…!

脚力を爆発させて一人目の懐に潜り込み…そしてナイフで体を貫いた。

二人目…今度は呼び出した氷の槍で貫く…!

そのまま三人目も貫通させた。

氷の槍で突かれたモノは体の内部から凍っていきじきに絶命するだろう…

あと二人…!

「これで…終わりだよ!」

懐に隠していたナイフを二本敵に向かって投げる。

しゅんと風を切りながら飛んだそれはそれぞれの首元を切り裂いて木に突き刺さった。

その瞬間赤が散った。

首元から止めどなくあふれ出る命…

だが罪悪感は感じなかった。

私の心には友の仇を討った達成感と、敵を殺した時の快楽しかなかった…

 

「おい、とまりな。こいつがどうなっても知らないぞ」

と、突然に私の後ろから男の低い声が聞こえてきた。

まさか…討ち漏らしか!

私は即座に後ろを向いた。

そこには…

「ユ、ユキ…ゴメン…捕まっちゃった…」

首元にナイフを突きつけられたノノの姿だった。

長身の男がノノをとらえてこちらに銃を向けている。

「まずは武器を捨てろ…あと変な事もするなよ。じゃないと殺すぞ」

ここは相手を逆なでしないためにも従った方がいい…

私は武器を地に捨てた。

だけど…

「なめないでよね!」

少女が剣を握りしめてやつに迫っていく。

その子の瞳には焦りと戸惑いと、そして怒りの色が見て取れた。

少女は男に斬りかかれる一歩手前まで来ていた。

だが…

バン!

と、死の音が響いたと同時、その場に倒れ伏してしまった。

銃口からは真っ黒な煙、そしてその少女の胸元からはごぼごぼとあふれ出る血。

血液が彼女の倒れた場所から広がっていき深紅の池を作っていく。

私はその間声が出せなかった。

言葉は失われ代わりに漏れるのははぁはぁという荒い息だけ。

これじゃあ…みんな死んでしまう…

「ど、どうしようユキちゃん…みんな…みんな死んじゃった…!」

涙で顔をボロボロにしながら私に縋り付いてきたのはあの時助けた少女。

彼女は体をがたがたと振るわせて顔を真っ青に染めていた。

「さて…お前らはどうしようか?国に持ち帰って見せしめのように殺すか…それとも富豪の家に売り払って一生そこに使えるか…それとも…そのかわいらしい体を使って男どもを悦ばせる道具にでもするか?」

くひひといやらしい笑みを漏らした男に吐き気をおぼえざるを得なかった。

こいつ…どこまでも腐ってやがる…

「さぁ、おとなしくこっちへ来い。それとも痛い目みたいか?」

私はどうすることも出来ずにその場に固まるしかできなかった。

この場を切り抜けるには…どうしたら…

思考を懸命に動かすが何もいい考えが思いつかない。

どう動いても私たちの首元を狙った死神の鎌はどうすることもできないのだ。

「早く来いって言ってるだろ!」

バン!とまた男が銃を放つ。

銃弾は私の頬をかすめて後方へと消えていった。

「今度は当てるぞ」

男はさらに低い声でそう言ってきた。

腹の底まで響くその声に私は震えていた。

恐怖を覚えていたのだ…

「ユキちゃん…私が何とかするから…だから…だから…生き延びて」

「え…?」

唐突に彼女はそう言ってきた。

私は拍子抜け多様な声を上げる。

ざくり、と彼女が一歩前に出る。

「だ、ダメ!殺されちゃう!だから…!」

「ほんとなら私あの時死んでたんだよ?けどユキちゃんが助けてくれたんだ。だから…今度は私がユキちゃんを助ける番」

精一杯強がっているが彼女の声は震えていた。

心がどっと熱くなり彼女をはなしたくないと足掻いてしまう。

「ダメだよ…そんなのまた今度でもいいから…」

「また今度ってもう来ないと思うの…私の今度は今。それに…ユキちゃんはお兄ちゃんと会わなくちゃいけないんでしょ?もしお兄ちゃんが生きて帰って来た時ユキちゃんがいなくなってたら悲しむと思うの…だから、だから…グスっ…これでお別れ…短い間だったけど…ユキちゃんの友達になれてよかった…バイバイ」

その言葉を最後に彼女は帰ってこなかった。

少女は男を目指して駆ける。

だがすぐに銃弾で撃たれてしまう。

肩から血が噴き出す、だが彼女は止まらなかった。

私という友のために…

「やめて!もう…止めてよぉ!」

私の願いも虚しく彼女の身体に無数の弾丸が撃ちこまれていく。

普通なら死んでいてもおかしくない、だが彼女は止まらない。

こんなバカな私のために…彼女は死を超えて…戦ってくれているのだ。

バン!バン!カチャリ…

男の銃が軽快な音を立てた、どうやら弾切れのようだ。

全ての弾を彼女に撃ち放ったのだ。

男が舌打ちと同時に銃を捨てた、それを見送った瞬間彼女は安堵したようにその場に崩れた。

「うわぁぁぁぁぁ!」

私はただ泣き叫ぶしかできなかった。

希望の光がまた一つ消えてしまった…

友達という希望の光が…

私はその場にガクリと崩れ落ちた。

だけど私はまだあきらめない…

足元に落ちていたそれ、彼女が残してくれた最後の武器。

機関銃、それを拾い上げて男に向き直る。

これでアイツを貫けば…

でも…もしノノに当たれば…

機関銃は正確な照準を合わせるのが難しい、あまり銃器を扱ったことのない私には奇蹟でも起きない限りノノを助けることができないだろう。

今アイツには銃はない…今がチャンスだ…

でも…

「ねぇユキ…私ごと撃って…」

迷っていた私にノノがそんなことをつぶやいた。

「ダメ…そんなのできないよ…だって…ノノが死んじゃう…!」

「いいよ、私のことは…今はユキが生き残ることだけを考えて」

彼女はそう言って涙交じりに笑ってみせた、私を安心させるために…

その笑顔に私の胸がきゅっと締め付けられる。

「早く!私、ユキになら殺されてもいい…だから…だから早く私を撃って!」

「そんなのできない!」

いつの間にか私の声も涙でぬれていた。

こんな絶望、私にはどうすることもできないじゃないか…!

「このままじゃみんな死んじゃう…みんな何のために死んだのかわからなくなっちゃう…」

「え…?」

「みんなで話し合ってユキだけは絶対に助けようって決めたの…ユキは絶対に生きてお兄ちゃんにあわないといけない。そのためなら私たちの命だって捨てるって…みんなで約束したんだ…だから、ユキ…早く撃って!」

彼女の悲痛な叫び声が私の心を締め付ける。

みんな…ゴメン…私は…私は…!

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

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