伝説の剣
「ユキー!返事してくれ!ユキー!」
森の中を当てもなく彷徨いながらユキの名を呼び続ける。
が、どこからも返事が無く声は周りの木々に反響して帰ってくる。
雨脚はだんだんと勢いを強め俺たちの体を冷やす。
服が体に張り付き熱を奪っていく。
けどこんなのどうってことない。
ユキも同じ思いをしているんだ、兄の俺が我慢しないとユキも我慢できないだろう?
俺は兄として、男としてユキの辛さを受け止めなければならないんだ。
「ユキ…どこなんだ…どこにいるんだよ…!」
焦る心が自然と語気を荒めていた。
今ユキはどうしているんだ?
俺がいなくて大丈夫なのか?
俺の心がぎゅっと締め付けられるような痛みに襲われた。
「おーい!みんなこっち来てみろよ!」
と、不意に森の奥からケントの声が聞こえてきた。
何かを見つけたふうだったが…もしかしてユキか!?
はやる心を抑えながら俺は一気にそこまで走っていった。
(ユキ…!ユキ…!)
がさりと木々をかき分けると大きく開いた場所に出た。
そこの中心にケントが立っている。
俺は愛しい彼女の姿を探すが、どこにもない。
「おいケント!ユキは?ユキはどこにいるんだ!?」
「え?もしかしてユキがいると思ってきたのか?」
「あぁ。違うのか?」
「な、なんかごめん…俺が見つけたのはユキじゃなくてこれだ」
と、ケントは自分の隣にあるものを指差した。
(ユキじゃなかったのか…)
落ち込む心を抑えつけて俺はそれを見た。
それは、地面に突き刺さった剣だった。
ずっとそこに刺さっていたとでも言わんようにそれには蔦(つた)などが絡みついていた。
「何か面白いモノ見つけたです?」
「これは…剣、ですわね…でもなぜこんなところに…?」
続々と仲間もそこに集まってきてそれを不思議そうに眺める。
「ケントセンパイ、ここに何か書いてあるよ?けど…読めないね、この国の言葉なのかも」
イツキが指差すそこには大理石のようなものがあった。
そこには碑文のように文字が刻まれていたが俺には読めなかった。
「これ、古代語じゃない…私よめるよ」
そう言って名乗りを上げたのはサクヤだった。
「古代語って…?」
「数千年前の言葉ってこと。私のお父さんがそう言うのに詳しくてね、小さいころから教えてもらってたんだ」
数分の後、碑文とにらめっこをしていたサクヤがこちらを振り返った。
どうやら読み解けたらしい。
「どうやらこれはこの国の初代王さまが持っていた剣らしいの。この剣を携えて暴れまわる龍たちを従えていっていたらしいわ。そして死ぬ間際にここに封印した」
この剣が数千年前の人に、しかも初代王さまが使っていたとは…
しかしそれにしては綺麗すぎる。
普通なら風化してなくなっていてもおかしくないはずだ。
まるでつい数時間前に刺されたと言われても納得してしまうほどにきれいなモノだった。
「この剣、魔術がかかってるです…たぶん封印と一緒に時間制御の魔法もかけたです」
「ど、どういうことだ?」
「うぅ…ウサギちゃんは頭がこんがらがってきたよぉ…」
「この剣は封印されたと一緒に時も止まったってことです!時を止められたから今でもこんなに綺麗ってことです!」
なるほどな…この剣だけ時間が止まっている、だからこんなに綺麗なのか…
俺は剣を握って引き抜いてみようとする。
が、どれだけ力を入れても全く抜ける気配がない。
「センパイ、封印されてるんだから抜けるはずないって」
「そう、だよな」
キラに指摘されて俺は苦笑いを浮かべる。
「キラ、こういうのは抜けないってわかってても抜こうとするのが男の性ってもんよ」
「そ、そう…」
「俺もチャレンジしてみるか…よっと!」
キン!と鎖が外れるような音がしたと同時にケントは素っ頓狂な声をあげる。
「あ、あれ…?」
ケントだけではなく周りのみんなも驚きで声が出ないようだった。
「え…?ぬ、抜けた…?」
ケントの手に握られたそれ、封印された剣。
それは地面を離れて今ケントの手にしっかりと収まっていた。
「ケント…マジです…?」
後には皆の苦笑いしか残らなかった…