青の番犬
洞窟内がピリリとした空気で震える。
俺の仲間たちと敵の視線が絡み合ってバチバチと火花を浮かべている。
この緊張状態の中、互いが互いの様子をうかがっている。
互いの実力が分からない以上ヘタに踏み込むことができないのだ。
しかしこの状態で最初に動いた存在がいた。
「私の銃をくらえ!」
そう、ウサギだ。
ウサギは腰に下げてあったホルスターからお手製の魔法銃を抜き取り敵に向かって放った。
弾丸は一直線に鋭い軌道を描きながら敵の元まで走る。
が、どれだけの勢いを持っていようと敵の前では無力だった。
弾丸は見えない障壁に遮られたかのように動きを止めてそこでぱっと消滅してしまったのだ。
「ウソ…ウサギちゃんオリジナルバレットが…」
「ウサギも馬鹿です!?魔法銃そのものが異能でできた産物なんです、そこから撃たれた弾丸も異能でできたモノ、だから無効化されるに決まってるです!」
「あ、そうだった!」
ウサギのバカがここで足を引っ張るとは…
アイツは帰ったら勉強のしなおしだ。
「そんなもので俺たちを攻撃しようとするからだ!今度は俺たちの番だぜ!」
ユキの脇に構えていた男二人が剣を抜き一斉にウサギに襲いかかろうとする。
きらりと光った剣がウサギの身体を狙い振り下ろされる。
しかし、それは圧倒的な速さで横薙いだサクヤのサーベルで防がれた。
キンと鈍い音が響き金属が触れ合ったところから火花が散った。
「ウサギ!ボーっとしないで!ここは私が何とかするから後ろに下がってて」
「わかった…けど、死なないでね」
「もちろん!委員長がこんなところで死ねるわけないでしょ!…さて、私の可愛いクラスメートに酷いことをしようとした罪、どう償ってもらおうかな…?」
ギラリとサクヤの目が光る。
そこには怒りの炎が見て取れた。
彼女は闘志をむき出しにして1対2の戦いに漕ぎ出した…
「それじゃ俺の相手はこいつってことか…」
ケントは刀を抜き出してリーダー格の軍服の男に向けてかまえた。
その瞳にはもう軍服の男しか映っていなかった。
「ケント!そいつは今までのやつと雰囲気が違う、気をつけろよ!」
俺の言葉に返事をする代わりに腕を掲げて親指をピンと立てて応答を示した。
「さぁ…戦いを始めようか…」
そう呟いたケントは爆発的な瞬発力で軍服めがけて走っていった。
刀の切っ先が軌跡を描きながら振り下ろされる。
が、それは男の剣によって防がれる。
そしてそこからは必死の攻防戦だった。
ケントが打ちこめば男が防ぎ、そのまた逆も然り。
それはほぼ互角に見えた。
だが少しずつ押されているのはケントのほうだった。
「ケント!がんばるです!」
「おう…」
「返事する余裕があるのか?遊ばれたものだな…!」
「ぐぁっ…!」
男の一振りでケントは後方に飛ばされる。
刀で防げていたから軽傷で済んだもののもし防いでいなければと思うとぞっとする。
「俺の剣についてくる奴がいるとはな…お前、何者だ?」
吹っ飛ばされたケントは刀を地に刺してそれを支えとしてよろりと立ち上がった。
身体には切り傷が出来てそこから血がぽたぽたと流れ落ちている。
足取りも少しふらついていたが眼だけは死んでいなかった。
その瞳にはまだ闘志の炎が燃えていた。
ケントの瞳はきっと敵を捉える。
「俺はケント…オシリスのクロノス学園特別クラス<ストレンジ・ナイフ>所属ヤマイケントだ!」
「ほぅ…ケントか、覚えておこう…俺は翔(しょう)…特殊作戦部隊<青の番犬>の3将の一人霧雨翔(きりさめしょう)だ!」
「キリサメ…ショウ…」
「あ、青の番犬…!?まさかホントにあったです!?青の国の秘密部隊、マリナ達と同じで極秘任務にあたる部隊…」
マリナは信じられないといった風に驚愕の表情を浮かべる。
「俺達は狙った獲物はのがさない…どんなことがあろうと必ず殺す…だからお前、ケントにも死んでもらう。もし出会う時代が違ったら…俺たちはいい友人になれたかもな…」
「なにがいい友人だよ、俺は敵となれ合うつもりなんてねぇよ」
「手厳しいな、ケントは」
はは、と苦笑いを浮かべて余裕なショウ。
しかし次の瞬間にはその笑みも消えてキッとした眼光でケントをとらえていた。
その瞳は例えるなら得物を見つけたタカのそれだった。
彼はケントだけを見据えて今狩ろうとしていた…